ニュース50号 2002/05発行

  ■「準会員」にNO! 外国人市民施策の推進を!
   川崎市長の「準会員」発言に対して21団体で申し入れ


  ■1952年4月28日 国籍剥奪から50年をむかえて

  ■二重の差別の中から当事者の叫び
   在日外国人「障害者」無年金訴訟と在日外国人高齢者、障害者の無年金問題集会報告


  ■NGOかながわ国際協力会議提言骨子

  ■入居差別事件の今後

  ■もしも在日外国人が税の仕事をしたら・・・

  ■定かではないですが、ちょっとした情報

  ■書評! 在日コリアン権利宣言


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■「準会員」にNO! 外国人市民施策の推進を!
  川崎市長の「準会員」発言に対して21団体で申し入れ

 阿部川崎市長が外国人市民について「会員と準会員とは違う」という発言をした問題で、市内の21団体が市外国人市民施策の推進を求めた要望書を5月9日に市に提出しました。

 申し入れをしたのは、在日大韓基督教会川崎教会、日本基督教団川崎戸手教会、戸手地域活動センター、日本基督教団元住吉教会、日本基督教団神奈川教区社会委員会、同多民族共生をめざす小委員会、部落解放同盟神奈川県連合会川崎支部、部落解放川崎地区共闘会議、民族差別撤廃・外登法の改正をめざす神奈川県連絡会議、川崎地方自治研究センター、日本婦人会議川崎市本部、市民連合かわさき、神奈川ネットワーク運動川崎市議団、日本労働組合総連合会神奈川県連合会川崎地域連合、神奈川県高等学校教職員組合、全水道川崎水道労働組合、川崎交通労働組合、川崎市教職員組合、自治労川崎市職員労働組合、神奈川人権センターと、かながわみんとうれんの21団体でした。

 阿部市長は、多文化共生をふまえた地域社会づくりの推進の重要性を示しながらも、市長当選後の「正論」インタビューならびに「地方新時代市町村シンポジウム」でのパネルディスカッションにおける発言で,「近代における国家というのは戦争をするときの単位なんですね」「日本国民と,国籍を持たない外国人とでは,その権利義務において区別があるのはむしろ当然のことなんです」「分かりやすくいえば,会員と準会員は違うということです」と述べています。

 私たちは,これまで市が推進してきた人権施策,特に外国人市民施策について,首長が交代しても、推進されていくことと思っていました。また,市長の公約の「住民投票条例」や「区民会議」においても外国人市民が参画できると確信していました。しかし、この市長発言で大変な危惧を抱くようになりました。はたして市長の進めようとしている「市民本位の市政」の「市民」に,「住民投票条例」の「住民」に,「区民会議」の「区民」に外国人市民が入っているのでしょうか。市長が一方で表明された「地方自治は国籍に関係なく同じ住民」,「多文化共生社会を推進」は本当に行われていくのでしょうか。それとも,市長が他方表明するように「権利や義務に区別があるのは当然」と言わんばかり施策が今後展開されるのでしょうか。私たちは、ただ単に言葉を問題にしているのではありません。望むのは地域における日々生活する外国人市民と日本人市民の共生社会の実現であり、そのための外国人市民施策のさらなる推進です。そこで幅広い層の市民の声を市長に届けようと今回の申し入れを行ったのです。

 申し入れ内容は、問題発言に対する見解、そして外国人市民施策の充実です。特に外国人市民代表会議の機能拡充,市職員の182職務の任用制限の見直しと消防職採用の開放,そして外国人市民施策の総合的指針の作成,住民投票条例と区民会議の参加資格の保障を要求しました。そして5月末までに文章での回答を要望しています。

 申し入れは東山助役以下、総務局長、市民局長、総合企画局長、人権男女共同参画室長、人権男女共同参画室担当職員らが対応してくれました。東山助役は「このことは市長に報告し、今後真摯に検討し回答する」と約束してくれました。また、「引き続き、地道に取り組んでいく」と今後の決意表明を述べていました。そして申し入れ終了後、担当にむかって「今日のやりとりもおこし、市長に報告するように」と指示をしていました。
 申し入れ終了後、記者会見を行い、翌日の読売、神奈川、毎日、朝日新聞に掲載をされました。

 今回の申し入れの特徴は21団体共同の行動であり、特に地域連合、市民連合、神奈川ネットとははじめての共同行動です。このネットワークが今後も市内の人権ネットワークとして機能できればと思っています。
 さて、市側ですが、どのような答えをだすのでしょうか。この回答いかんによっては、市長との直接対話、議会陳情など、取り組みを強化していかなければなりません。ちなみに市長ですが、その真偽は定かではありませんが、聞こえてくる「こぼれ話」によれば「真意が伝わらず心外」と言っているようです。未だ大きな勘違いをしているようです。なのでなおさら、システムとしての外国人市民施策の指針の策定が早急に望まれます。(S)

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■1952年4月28日 国籍剥奪から50年をむかえて

 2002年4月28日は、サンフランシスコ平和条約発効50周年にあたる。在日する旧植民地出身者が、「国籍選択権」を認められず、一律に国籍を剥奪されて50年ということになる。この日を胸に刻みながら、集会が行われた。主催は「外国籍住民の地方参政権を求める連絡会」。連休の中日でありながらも、100人近い人々が集まった。

 田中宏氏の問題提起の後、6人の人々が話しをする。「リレートーク」というスタイルをとって、自分から発する意見を述べてくれた。鷺沢萌(さぎざわ・めぐむ)さん、宋連玉(ソン・ヨノギ)さん、金富子(キン・プジャ)さん、金静伊(キム・ジョンイ)さん、鄭瑛恵(チョン・ヨンヘ)さん、趙健治(チョウ・ケンジ)さんであった。

 6人中5人が女性である。国籍や世代、パーソナリテイーの違いによって、個性的な意見が飛び出してくる。「右傾化している現代だからこそ、外国籍であることをもっとアピールしていいのではないか」。「在日問題を在日だけで語るのではなく、日本人と共に国際的観点で語り合いたい」。「アジア的レベルで、自らのアイデンテテイーをとらえたい」。「52年は国籍剥奪だけでなく、在日の権利を剥奪した。今回の国籍法案はその延長にすぎない」。「在日も在日の実態が把握できてない。日本人の頑張りが、在日に跳ね返ってくる良い面がある」などなど、様々な視点からの提言であった。

 地方参政権法案、国籍取得法案、今後、国会で議論されるであろう法案とは別に、それぞれの立場から、それぞれの生き方から、議論が深まっていくことが大切なのだと思う。在日も一人一人違う。日本人も一人一人違う。民族によって、決まりきった意見を言う時代はとうに過ぎた。一人一人が「自分の意見」を、明らかにしていく時が来たと思うのは私だけだろうか?(ち)

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■二重の差別の中から当事者の叫び
 在日外国人「障害者」無年金訴訟と在日外国人高齢者、障害者の無年金問題集会報告

 5月12日、京都ハートピア京都で「在日外国人無年金問題の早期解決を!全国集会IN京都」(以下、全国集会)が行われました。前日に「年金制度の国籍条項を完全撤廃させる全国連絡会」(以下、全国連)の会議がもたれたので両方に参加してきました。  全国集会は、160人が参加し、とても熱気のあるものでした。内容はパネルディスカッションで、田中宏龍谷大教授が日本の戦後処理と在日の権利保障からの年金問題を、金永子四国学院大教授がハンセン病の在日の年金問題を、池上哲朗京都年金訴訟弁護士が年金訴訟の訴訟内容を、李幸宏全国連代表が全国連の取り組みを話してくれました。

 しかし、なっといっても、集会冒頭の原告団6人の紹介と、その発言に胸が熱くならずにはいられませんでした。障害者として、また在日外国人として、2重の差別に遭い、その中での心の叫びとしての提訴の思いは私の感性を響かすには十分過ぎました。そして、その熱気ある会場の雰囲気が相乗し、元気をいただきました。
 前日に行われた全国連の会議では、全国の福祉給付金の状況、特に滋賀県、兵庫県の自治体が、地元団体の働きかけにより、障害者で5万円から5万6千円、6万円に、高齢者で2万円から2万2千円、2万5千円に増額されたことが報告されました。特に兵庫県阪神間の自治体では介護保険料の段階が自動的に1段階(生活保護、老齢福祉年金受給者の保険料)になる様に交渉をし勝ち取ったとの報告もされました。これらの取り組みは、当事者が年金を受給できるということを考えれば不充分ですが、困窮した無年金者にはありがたい補完的措置でしょう。神奈川でもがんばらねばと思いを強くしました。

 京都訴訟は、証人尋問にはいるようで、原告の証人申請を国がことごとく突っぱねており、厳しい訴訟進行とのことです。証人尋問が終われば、最終意見陳述、結審となり、ここが正念場らしいです。この訴訟の最大の争点は、憲法論から年金の国籍条項の可否という塩見訴訟(帰化した塩見さんの障害年金支給訴訟:最高裁敗訴)とは違い、国際人権規約論からの無年金問題の審理です。これまで、国は最高裁判例から「社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、〜その政治判断によってこれを決することできる」とし、国際人権法は憲法より下級法と、原告の主張を突っぱねています。今回の集会をバネに運動が高揚し、裁判でいい判決を出ることを期待します。

 さて今後、全国連絡会では、坂口厚労大臣が「今年中に無年金問題を解決したい」との発言を受け、夏に大阪集会、秋に国会院内集会を開催し、具体的な立法案も提示し、議員懇談会を作り、法案化したいと考えています。私たちもこの運動に積極的に参加しましょう。(S)

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■NGOかながわ国際協力会議提言骨子

 5月18日にNGOかながわ会議公聴会にいってきました。そこで配られた会議の提言骨子(内容は省略。詳細は県国際課)は以下の様なものです。

1 国際協力部会
  (1)平和施策
     骨子1 平和施策協議会の設置
     骨子2 東アジアの平和促進・交流事業
  (2)国際協力促進施策
     骨子3 国際協力における企業とNGOの協働促進事業
     骨子4 国際協力NGOサポーター事業
     骨子5 緊急援助協議機関の設置・常設化

2 多文化共生部会
  (1)ライフステージ全般
     骨子6 情報格差解消のための検討機関の設置
     骨子7 各市町村における外国籍住民の地方行政参加システムの構築
  (2)乳幼児期
     骨子8 子育て支援のための外国籍住民担当スタッフの配置
  (3)学齢期
     骨子9 外国籍児童・生徒の教育環境の整備
  (4)青年期
     骨子10 かながわ外国籍青少年プランの策定
  (5)熟年期・高齢期
     骨子11 定住化に伴う外国籍県民のための保健・福祉施策の充実

3 両部会に共通する課題
     骨子12 NGO・NPOの拠点支援事業

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■入居差別事件の今後

 この間、動きがなかった入居差別事件ですが、役所の定期異動、業者の繁忙期、当事者の個人的な都合等を考えて見合わせていましたが、話し合いが以下のように決まりつつあります。平和開発及びルームグリーンとの全体の話し合いについてぜひご参加下さい。

1 平和開発との全体での話し合い:6月5日(水)or7日(金)

2 ルームグリーンとの全体の話し合い:6月24日(月)or7月1日(月)

 両方とも夜7時からです。あくまでも予定ですので、最終確認、及び場所は金秀一まで確認して下さい。ルームグリーンとの話し合い前に事前折衝を少人数で行う予定です。これは、チェックシート確認と、もう少しお互いスムーズにコミニュケーションできるようにするためです。

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■もしも在日外国人が税の仕事をしたら・・・   金明夫

 私が10年前に市役所で仕事をするようになってから、随分と社会情勢は変化した。当時は、旧自治省曰く「公権力の行使、公の意思形成への参画する仕事に外国人は携わってはならない。」とし、「地方公共団体の一般行政職へ外国人を採用するのは適当でない。」としていた。その後、一般行政職の国籍条項撤廃が進み、現在、神奈川県下においては政令指定都市において「任用制限」が残っているのみである(一部消防職を除く)。

 私は「国籍条項が撤廃されていても、実際に外国人が採用されていなければ、国籍条項があるのと同じである。」と考えている。私が働いている逗子市においては、管理職への登用や、職種において何ら制限はないとしているが、私は、実際に任用制限にあたる職種には就いていなかった。私自身の個人的な興味からも税の仕事をしてみたかったので、異動希望を出したことろ、たまたま運良く「固定資産税」の仕事に就くことが出来た。

 固定資産税の仕事は、市役所で扱っている他の税(市民税、軽自動車税、法人市民税等)よりも行政側の決定権が大きい。市民税が申告に基づいて課税するのとは異なり、固定資産税は、市の職員が調査し、税額の決定を行うからである。私は、固定資産税のうち、土地を担当している。現地調査の時には、人の家の敷地内に入らなければならない。調査対象の土地に住んでいる人が在宅であれば、「市役所ですが、お庭を拝見させて下さい。」と一声かけて調査するが、不在の時は、「市役所ですが、調査させてもらいます。」と、大きな声で、誰に向けてでもなく声を発した後に、他人の敷地に無断で入っていく。

 固定資産税の仕事に就いて4年目を迎えた。市役所の仕事は、他の市町村と連絡調整を取らなければならないことが多い。私が異動前にいた電算室よりも、税の仕事は、その機会が多いと感じる。横須賀三浦地区、湘南地区、鎌倉税務署管内、隣接する市町村との調整等。当初は電話で話すときに「キム」と名乗ると、「?」という反応が多かったが、最近は近隣の市町村の人も慣れてきたのか、名前を聞き返される場面が非常に少なくなった。

 逗子市では、この5月1日に固定資産税の納税通知書を発送した。今は、それに対する問い合わせの電話や窓口対応で一日が終わる。「土地の評価額が下がっているのに、税額が上がっている。」「家を壊したら、土地の税額が3倍になった。」等々。国の法令で決まっていることなので、どうしようもない事が多いが、丁寧に説明をする。一人の市民のための窓口対応で朝から夕方までかかることもある。窓口対応等で市民の方々と話した時に思う。「納税者にとって、私が外国人であるかどうかは全く関係が無い」と。

 ある時、「税金が高い」という事で長時間の窓口対応をした。固定資産税の税制を説明したが、納税者は納得してくれない。制度は理解できても、市民感情として納得出来ないという場合も多々あるのだ。長時間話していたので、お互い半ば疲れ果てていた。市民の方が帰り際に私の名前を聞く。名札を指し「金(キム)です。」と答える。「最近の役所は、サービスが良いねぇ。税金だからキンさんか?」とオヤジギャグをとばして、その人は笑いながら帰っていった。

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■定かではないですが、ちょっとした情報

●外国人登録証をなくすと、警察署に紛失届を提出し、その受理書を役所に持っていき、外登証の再発行となりますが、その紛失届受理書を警察で印鑑がないと指紋を要求されるようです。ともすれば押捺をしないと、紛失届受理書を出さないといわれるそうで…、外登証の指紋制度がなくなりましたが、警察は外国人の指紋をとりたいのでしょうか。

●病院によりますが、日本語が不自由な外国人が手術を伴う医療を受けるとき、まあ入院するとき、遠回しに治療費が払えるかとの打診があり、ちょっと分割なんてと言うと、これも遠回しに公立病院を進められる。病院は医療でなく、商売なのかね。ちなみに保険に入っていない患者は自由診療扱いになり、点数単価が5割増しから2倍になるのが通例で、この制度自体もおかしい。だれもが入れる医療保険制度が必要ですね。

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■書評! 岩波ブックレットNO566 在日コリアン権利宣言

 この本の著書は、おなじみの田中宏氏だが、これは「在日韓国・朝鮮人をはじめ外国籍住民の地方参政権を求める連絡会」が2001年に発表した「在日NGO提言」をRAIKの佐藤信行氏が再構成をし、田中宏氏が加筆したものです。このNGO提言の作業にはみんとうれんの小椋千鶴子、金秀一も加わりました。

この本は、現在国会上程されたままになっている「永住外国人地方参政権付与法案」の成立が高まる中、代案として「特別永住者の国籍取得特例法案」が政府与党によって、その骨子が策定されるという経緯の中で、今までの在日の人権運動の到達点と今後の課題を整理し、オルタナティブとして未来の創造を示したものです。ある意味で言えば、在日コリアンの総合的な人権法としての提案です。国籍取得議論が高まる一方、外国人への排外思想が高まり、国民国家の枠組みが弛緩し同質な国家像が再構築されようとする中で、この本はある種の抵抗の証でしょう。民闘連で扱っています。欲しい方は事務局まで 

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