ニュース52号 2002/07発行

  ■「かながわみんとうれん 第15回総会報告

  ■「外国人市民の市政参加の仕組みを考える市民集会」報告

  ■入居差別問題で2社と話し合い

  ■7.24国籍条項学習会報告


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■かながわみんとうれん 第15回総会報告

 7月12日(金)川崎の市労連会館にて、第15回総会が行われました。前半、総会事務では2001年度活動報告、2002年度活動方針が提案されました。活動報告では、対策部に当てはまらない課題が多く、課題ごとに歴史教科書、参政権、国保、無年金、戦後補償、川崎市長「準会員」発言問題、行政交渉の取り組みが行われました。また、昨年も残念ながらアルバイト差別事件、入居差別事件が起こり、取り組みが行われています。

 新年度活動方針では、外国人市民の人権ネットワークのと外国人市民の共生システムの確立をめざしながら、地域から社会、世界を変えてゆくために様々な課題に取り組んで行くことが確認され、報告と共に承認されました。続いて2001年度決算報告が行われ、2002年度の予算案と共に承認されました。役員の改選では、李仁夏顧問より「現在、代表と事務局を兼務して活動を行っている部分があり、若い在日に代表になってもらえないか」との意見がありました。そのことについて鈴木、内田両幹事より、「幹事会でも具体的に何回も話しをしましたが、結論にいたりませんでした。真摯に受け止め、引き続き考えていきたい。」と回答がありました。その後、新役員について承認がなされました。
 後半は、昨年度発生した入居差別事件の当事者ぺェ平瞬さん、友人の相澤さん、足立さん、司会の金久高さんによって、特別報告及びパネルディスカッションが行われました。

 「はじめての一人暮らしでドキドキ、ワクワクして部屋探しをしていた」ペェさんは外国人であることを理由に入居を断られました。「とっても悔しいし、悲しいし、頭にくるし、色々な感情が一度にやってきました。でも友人達が『おかしいよね、信じられないよね』と言ってくれて、『面倒くさいけれど、やっぱりおかしい事はおかしいと言い続けなければ』と思い、業者と話し合いを始めました。」とペェさん。足立さんは「私も1年前に一人暮らしを始めたのでペェさんもトントン拍子に運ぶとばかり思っていた。物件をみて気に入って楽しみにしていたペェさんを見ていたのでとても『怒り』を覚えました」。相澤さんは「差別は学校で教わったことはあるけど、まさか実際にこんなに身近に差別が起こるとは思わなかった。差別をする側は何を考えているのだろう」と語りました。数回に渡る話し合いにペェさんは「なぜ、話がこんなにも相手に通じないのか。とても消耗するが、差別をしたのは日本人だけれど(もちろん在日の友人も支えてくれるが)一緒に怒って闘おうと言ってくれる日本人がいることを認識しました。」と語りました。

 わくわくドキドキした楽しい心を、悔しさや悲しい怒りに変えてしまう差別が現在も数多く存在します。在日のこども達のことを考え、粘り強く業者と話し合いを続けるペェさんと友人たちの差別への素直な怒りに、みんとうれん運動の原点を感じ、ぜひ支援したいと感じるディスカッションでした。(な)

【会計報告】 一般会計

収入の部 2001予算 2001決算 差し引き 備考   2002予算(案)
個人会費 400,000 330,000 ▲70,000 33人 個人会費 350,000
サポート会費 90,000 150,000 60,000 30人 サポート会費 100,000
団体会費 100,000 140,000 40,000 7団体 団体会費 140,000
法人会費 330,000 330,000 0 11口 法人会費 330,000
寄付金 280,000 331,676 51,676 カンパ等 寄付金 280,000
雑収入 0 45,068 45,068 総会祝金等 雑収入 0
繰越金 0 99,868 0   繰越金 79,487
収入合計 1,200,000 1,426,612 126,744   収入合計 1,279,487


支出の部 2001予算 2001決算 差し引き 備考   2002予算(案)
印刷費 90,000 32,863 57,137   印刷費 90,000
通信費 300,000 252,760 47,240   通信費 300,000
会場費 40,000 0 40,000   会場費 40,000
会議費 50,000 91,848 ▲41,848   会議費 100,000
講師謝礼 50,000 30,000 20,000   講師謝礼 50,000
事務用品費 50,000 161,754 ▲111,754 印刷機購入 事務用品費 50,000
資料購入費 20,000 18,080 1,920   資料購入費 20,000
交通費 210,000 158,820 51,180   交通費 210,000
団体協力費 200,000 205,000 ▲5,000   団体協力費 200,000
分担金 190,000 196,000 ▲6,000   分担金 196,000
特別基金 0 200,000   特別基金へ 特別基金 23,487
繰越金 0 79,487   2002年予算へ 繰越金 0
支出合計 1,200,000 1,426,612 ▲226,612   支出合計 1,279,487


【役員体制】
   共同代表:大石文雄、金秀一
   幹  事:内田清、小椋千鶴子、金久高、金明夫、高博、笹尾裕一、南重行
   会  計:鈴木市朗、鈴木恵子
   会計監査:金栄子

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■「外国人市民の市政参加の仕組みを考える市民集会」報告

 去る、7月22日に川崎のいさご会館で、市民集会が持たれた。阿部川崎市長の「準会員」発言に対して、5月9日に21団体が共同で申し入れ書を提出し、5月31日に回答がでた。その内容は「準会員」発言には、何も触れず人権施策の推進を主張するのみであった(ニュース51号に掲載)。

 今回の集会は21団体が共同主催し、阿部市長発言に対してだけでなく、外国人市民の市政及び政治参加をどう考えるか、と言う趣旨のものであり、 134人の参加者を得た。
 リレートーク式で外国人市民、日本人市民の6人の方々が発言された。中村ノーマンさん、朴海淑(パク・ヘスク)さん、孫裕久(ソン・ユグ)さん、川崎市自治研究センターの野坂さん、市会議員の飯塚さん、同じく市会議員の渡辺さんである。

 外国人市民としての意見は「川崎市に勤めて5年以上になるが、今でも非常勤である。いわゆるニューカマーの人々の50%は、日本語が判るが、生活における相談を気軽にできる場が少ない。また、外国人のことを日本人が決めているが、もっと外国人が意見を言えて、決定権を持てることが大切なのではないかと思っている」。また、「例えば在日に参政権がないことを、日本人は知らない。在日が生きて行くうえで、朝鮮人だから権利が無くとも仕方が無い、と言うのが第一の自覚である。川崎に住んで人権意識が持てるようになったのに、今回の準会員発言は信じられないし、怒りを覚える」等々だった。

 また、市会議員の方々からは「伊藤市長の指紋押捺拒否者への非告発、高橋市長の公務員の国籍条項撤廃川崎方式など、歴代の市長の英断に比べて、今回の阿部市長の発言にはびっくりしている。外国人市民施策を推進していると言いながら、3月の市議会では、正会員は日本国籍者であって、外国人は準会員であると言う発言を撤回していない」。また、「地域の中で、多文化共生のまちづくりを実践していき、草の根的の市民運動を作っていく必要がある。議会の役割としては、自治基本条例を策定し、将来的に外国人基本条例等も策定して行く必要があると思っている」と、発言された。

 全体の雰囲気は、阿部市長発言への怒りで満ちていたが、“何故、先進自治体の川崎市でこんなことが起こるの”と言う、落胆の方が大きかった。個人的な意見だが、定住外国人の地方参政権法案が浮上してから、このような問題は全国各地で暗にあるのではないかと思う。それは、“市民とは誰か”と言う問題である。阿部市長のように、市民は日本国籍を有する者であると言う概念であれば、外国人は準会員市民であると言う定義はくつがえせない。“定住外国人は市民である”このことを法律的に保障しなければ、このような事は何度でも起こりうるであろう。自治基本条例にきちんと定住外国人を位置付け、策定に向けて、地方参政権運動と共に盛り上げて行く必要があると思う。(ち)

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■入居差別問題で2社と話し合い

 入居差別事件に関する取り組みで、6月28日に平和開発(第1回目)との、7月15日にルームグリーン(第4回目)との、話し合いが行われました。簡単にその報告をします。

 平和開発との話し合いは、事前に、1.顧客マニュアルで外国人に関することを明らかにすること。2.今回の問題をどうとらえているのか。3.今後どのように改善していくのか。との質問をしていたので、その回答から話し合いははじまりました。

 回答は1。2000年台帳作成時に外国人可・不可のチェック項目がありました。謝罪します。2.過去、外国人を理解していないスタッフもいたし、教育ができていませんでした。業務を取り行う中、外国人の入居は難しいと深く感じています。しかし現在数が減っていると思います。3.オーナーさんに真剣に考えてもらうため、外国人でも断らない姿勢を見せています。オーナーさんによっては、習慣の違いを不安がる声もありますが、当社の管理物件のオーナーさんには了解をしてもらっています。との回答でした。

 マニュアルに関しては明確にはなりませんでしたが、平和開発が申し込み時に(本当は契約時)住民票、外登証をとっていたことがわかりました。そして、平和開発は現在、川崎市のパンフをもってオーナーさんに理解を得る努力をしているといい、過去8年間外国人を断ったことはないと豪語していました。が、別件で平和開発が他業者に外国人を理由に断ったことを提示すると、自社物件と他社物件は違うといい、差別を黙認していること、当事者にとっては実際に断っていることが明らかになりました。最後に「何故入居差別をしてはいけないのか」との問いに黙り込んでしまいました。次回ここから話し合いが継続します。

 7月15日のルームグリーンとの第4回目の話し合いは、以前よりS部長の対応の堅さもぬけスムーズな話し合いが行われました。
 7月5日にペェチュンドさんが問題点の整理のためにルームグリーンS部長と話し合ってもらったのが効をそうしたようです。
 Sさんは最初に、「在日のことを全く理解していなかった。国籍で入居を断ることは問題があり日本人と同じように対応していく。」そして、「これはオーナーの希望を重視してきたためでこの話し合いで再認識していき、会社の体制も変えていきたい」と述べました。

 その後話し合いはSさんの外国人に対する認識へと進み、Sさんは「業界の体質として何となく外国人を区別するところがあり、外国人の犯罪をニュースなどで見聞きすると外国人は危ない。また外国人は生活習慣がわからない。だからそういう人は紹介できない。外国人をひと括りにし金銭的なトラブルが多いと『偏見』でみていた」と正直に認めました。そして今まで区別と思っていたが、差別であり、認識を直さなければならないとしました。(S)

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■7.24国籍条項学習会報告

 7月24日横浜の市民活動支援センターで弁護士の新美隆さんを講師に国籍条項学習会が行われました。これは鄭香均さんの都庁任用差別裁判の最高裁判決がいつ出されてもおかしくない状況の中で、再度、高裁判決の意義と問題点を学習しながら最高裁判決に備えるため、横浜市国籍条項撤廃連絡会が主催したものです。以下、講演の要旨をまとめ報告します。

 東京地裁判決は間接的な統治作用に関わる公務員は憲法上(外国人には)「保障されない」としたが、高裁判決では国民主権の原理にてらして「できるもの」と「できないもの」があるとし、憲法14条や22条(職業選択の自由)が及ぶとの判断を示した。(外国人の公務就任に)「憲法の人権条項を適用したのは画期的」なことである。

 次に、「当然の法理」の整理。1953年に出された高辻回答、その原型である兼子回答(1948)だが、当時の国際関係を相当意識して作られたものだ。48年といえばGHQの日本における労働政策が急転回した時で、公務員労働組合の争議権を一律に規定した時だ。マッカーサー元帥書簡がポッダム勅令・政令 201として争議権を奪い続けていく根拠となるが、公務労働と私的企業と峻別し公務員には無定量の忠誠義務がもとめられるなど公務員労働運動の力を削ぐ占領政策が取られた。

 こうした状況下でマッカーサー書簡に依拠しながら「当然の法理」の原型が作られたのではないか。兼子回答には48年当時の逼迫した状況認識があった。ところが「当然の法理」は「国家」公務員から「地方」公務員へと、さらには「現在」の公務員から「将来、予想される」公務員へとコントロールを失い肥大化していった。「当然の法理」はその都度変わってきている。だからこそ憲法上の位置づけが今どうしても必要になってきている。マッカーサーなどの占領初期にみられた外国人に対する平等規定が結局は葬り去られてしまった。それを示す政府見解(金森答弁)は次のようなものだ。「なぜ憲法上の権利として明示できないのか」の問いに「根本規定より一般日本人にあてはまるものを外国人にも当てはまるようにしたほうが便利ではないか。将来予想できない万一の時のために憲法は狭くしておく方がいい」というものであった。民主主義によって作られる法律は多数の主権者の意思を表明するものだ。従って外国人法制などでは差別的なものが出来やすい。植民地時代の意識、反面恐怖感がその基礎にあったのではないか。だからそのこと自体が植民地支配の延長であるともいえる。民主的に生じた差別の中では実効性のある制度を作らないと少数者の人権は守れない。だから高裁判決で憲法の人権条項に位置づけようとしたことの意義は大きい。(外国人が)公務員を就職の場とすることは、経済的なこともあるが、あらゆる可能性の場で自己実現をしていくことに大きな意義がある。だからそれが閉ざされたときはどんなに屈辱的な事なのか。

 国民主権論は曖昧性を免れない。仮に最高裁で確定したら国民主権論を人権保障の中で押さえ込むそうした基準を作る必要があるだろう。これまで「当然の法理」でやられてきた訳だが、これが人権問題であることがハッキリすれば、国民主権論でなく日本に生きる当たり前の外国人の人権として位置づけることが出来る。

 判決は年内には出るだろう。判決は直ちに行政庁を拘束する。一部での反発も予想されるが、これを在日の人権保障にどう使っていくか、各自治体にどう影響を広げていくかは各地の運動体の取り組みにかかっている。

学習会では講演の後、最高裁判決が出された後の緊急取り組みとして、1.総務省への申し入れ行動2.全国自治体調査の実施3.東京での全国集会の実施などが話し合われました。(お)

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