9月5日(木)、在日韓国人に対して入居差別をしたルームグリーンとの第5回の話し合いが、午後7時から市労連会館で約40名の参加をもって行われました。
前回までに、ルームグリーン側の偏見・差別意識はある程度明らかになりました。差別に対する認識がある程度深まってきたように思えましたが、前回終了間際に「お互いの立場の違いや関係を理解していない」、「自分たちが行った差別に対して、本当に理解しているのか」との意見が、当事者や会場から出されました。それを受けて、今回は、前回の話し合いの内容(何が問題であったのか)と、今後の会社の対応をルームグリーンがまとめてくるということで話し合いを持ちました。
今回の話し合いは、冒頭にルームグリーンから「規定(物件の条件等を列記したひな形書類)から外国人可・不可の項目を外した」との報告がありました。続いて、差別については「無知であった。知らなかったではいけないという事に気付いた。」、「自分では区別だと思っていたが、人を傷つける差別であった。」等と今回の差別事件の認識について語られました。
また、今後の業務においては「外国人だからという判断はやめ、本人の内容そのもので審査する」、「物件のオーナーに理解してもらうように、今後すすめていく」との方針が語られました。但し、物件のオーナーに理解してもらうとは言ったが、実際にオーナーが納得しない場合には、「説得を続ける」ものの、「現実的には、物件はそのまま扱う」という答えに、みんとうれん側から「オーナーが外国人を入居させないというのは、差別であるという地平に立てるのか?」と質問が出され、ルームグリーン側の回答を整理するため、小休止をとりました。
再開後、ルームグリーンの差別に対する認識、話し合いの中で自らの意識が変わっていったこと等、「二度とこのようなことがないように、会社内へ伝える。ルームグリーンを変えていくため努力したい」と回答が出されました。当事者、当事者の家族からは「会社だけではなく、自分の近くにいる人を変えることから取り組んで欲しい」、「ようやく受け止めてくれるようになった感じがする。不安だが信じたい」、「外国人がどういう思いで暮らしているかを分かって欲しい」、「入居で困っている人がいたら、ルームグリーンに行ってみなと、私たちが言えるぐらいの関係になりたい」等と、率直な思いが語られました。
みんとうれんからは、「仲間として一緒に人権のことを考えられる、語り合える会社に生まれ変わって欲しい」との意見とともに、最後にもう一度だけ話し合いの機会を持つことと、その話し合いの時に以下の三点を実現するよう要望しました。
1 規定(物件の条件等を列記したひな形書類)を提示すること。
2 社長が話し合いに出席し、謝罪すること。
3 確認書を取り交わすこと。
次回でルームグリーンとの話し合いは、終結する可能性が出てきましたが、もう一方の当事者である平和開発との話し合いが残っています。また、東京都にも、川崎市と同様な住宅基本条例があるのにも関わらず、今回東京の業者がこのような差別事件を起こしてしまったことから、東京都への働きかけも必要であると考えます。(M)
「過去を変えるな、未来を変えよう2!」〜歴史を刻む、心に刻む、未来に刻む〜と題し、多文化居酒屋フォーラムが行なわれました。9月1日、武蔵小杉の総合自治会館は、この会に集う 250名近い人たちのパワーで熱く盛り上がりました。
会場に入ると、高いステージはありません。まん中の演技スペースを参加者が 360度取り囲んで座っていきました。その参加者と同じフロアーで、メッセージの溢れるマダン劇「GAREKI」が演じられました。
まず、集会実行委員会より趣旨説明がありました。今回の集会は、昨年6月29日に開催した「過去を変えるな、未来を変えよう〜市民集会」の第2弾であること。前回、日本のアジア諸国に対する侵略の歴史を合法的であり発展的であったと正当化する歴史教科書が採択されようとする時代の流れに対し、マダン劇や中高生によるラップ、さまざまな立場からのスピーチで、それらに反対する意志をアピールしました。今回、同じ趣旨のもと、さらに新しいスタイルでフォーラムを実施しようと企画した、とのことでした。
マダン劇のスタートは、2人の若者によるラップでした。平和へのメッセージが、リズムにのって途切れることなく響きます。そして、出演者全員が民族楽器を持って登場。マダンパンをつくります。続いて、うねり、轟音を表現する荒々しいプクチュム。さらに再生を表現する美しいソゴチュムが演じられました。
そして本編のマダンでは、最初に「五賊」が登場。多文化共生の流れに逆行する「右翼的政治家」「教員」「企業戦士」「東洋人」「マスコミ」が、過去を変えようとしている時代の流れを、テレビ番組のリハーサル場面を通じていやらしく表現しました。しかし、会場の参加者からは、すかさず「五賊」に対しヤジや反論が返されます。劇を観るだけでなく、そこに参加し、その場を共有していく中で、参加者の心に暖かい連帯感が生まれていくのを感じました。
次のマダンは、子どもたちが「瓦礫」の歴史をひもといていくという設定でした。そこで、関東大震災の朝鮮人虐殺、ヒロシマ・ナガサキの朝鮮人被爆少女の歴史が、現在の逆行する時代状況への批判を織り込んで紹介されました。さらに、最後には、子どもたちの「大人がちゃんと教えてほしい」という問いかけに答える形で、歴史の証人のメッセージ、受け継ぐ世代のメッセージを、生の声で発してもらいました。
最後には、未来へのメッセージとして、歴史と現代の戦争のスライドをバックに、ラップ、ブレイクダンス、BODY WORSHIP、歌「地雷のない世界」が次々に登場。そして楽器隊とともに出演者・参加者がまざりあってのプンムルノリで終演しました。
このマダンを共有した後、お酒や手づくりおつまみをいただきながら、「教科書」が書き換えられようとしている現状、新たな戦争が準備されている現状に対して、出演者とともに参加者からも思いを語り合いました。
昨年、県下では、懸念していた教科書採択は回避されました。しかし今年、愛媛県ではその教科書が中高一貫校で採択。また「ひのきみ」の学校行事での強制、首相の靖国神社公式参拝、自衛隊によるアメリカ報復戦争支援など、ここ1年で時代に逆行する動きが激しくなっています。そんな動きに負けないようにいこう、と様々なメッセージが交換されました。
今回のフォーラムは、評価の高かった前回を上回る、充実した集会となりました。このような新しい取り組みに学び、厳しい状況をものともせず、ひとりひとりが手をつなぎあえる運動をひろげていきたいですね。(さ)
この夏休みに韓国の富川市の高校生との交流に参加した、日本の高校生の感想文を読む機会があった。チャンゴに興味を持ち、川崎市のふれあい館のチャンゴ教室に自ら通い、アリラン祭にも参加している高校生である。その一部を紹介したい。
(前略)次に統一展望台。あそこから、見えた景色が「他の国」って思えなかった。日本には国境がないからって言えばそうなのだが、なんだかショックで…「イムジン河」の悲しさが、やっとわかった。『誰が祖国を分けてしまったの?!』誰なんだろう・・・。(中略)
「分断」は当時を知らない私たちの年代にまで様々な問題を残していった。そして解決できるのは、多分私たちなのだろう。(中略)
彼女は、朝鮮半島の分断の歴史と現実を目前にし、その不条理を実感する。そして、この旅の中で異なる国に暮らす同世代との出会いによって確かに感じた「何か」が、彼女に「解決できるのは、多分私たちなのだろう。」と言わせたのではないだろうか。
私たちは、生活の中で彼女が感じた「何か」を確かなものとして感じることは少ない。複雑な社会、厳しい現実、多様な歴史観などが「望むべき未来」を阻む。そして、私たちは、「望むべき未来」への道すじが、徐々に細く見失いがちになる日々がある。
彼女はつづける。
(前略)ステキな出会いが出来て本当よかった。言葉が通じなくても、お互いが分かるなんて、こんなステキで凄いことだとは知らなかった。「ツライな…」と思ったのは、はじめだけだった。もっと勉強しようって思えた。(中略)冬までには、私ももう少し話せるようにして、思っている事をそのまま伝えられるようにしたい。
彼女が感じた「何か」は、新鮮な出会いによって生み出された。そして、大きな可能性を確かに残した。
私たちも、「ステキな出会い」を作り出していくことが求められている。かながわみんとうれんの取り組みに、こんな出会いを生み出すことを期待し、取り組んでいきたい。(す)
「多文化共生社会にむけて、豊かで確かな教育実践を交流しよう」をテーマに、第23回全国在日朝鮮人(外国人)教育研究集会が8月23日〜25日、三重県津市で開催されました。当日は全国各地から1000名を越える参加者が集まり、熱のこもった報告や討論が行われました。
24日午後の全体会では、開会行事に引き続き、地元三重からの特別報告がありました。津市分部町の唐人行列・唐人踊り、四日市朝鮮初中級生徒による舞踊がオープニングを飾り、その後は三重における在日外国人教育の歩みへと話が進みました。1970年代末の韓国籍教員採用に向けてのとりくみ、80年代に入っての指紋押捺拒否運動、そして90年代以降の新渡日者の増大など、当事者の思いをメインにすえた報告が行われました。そしてフィナーレには在日ペルー人による民族音楽の演奏がありました。
翌25日は8つの分科会に分かれての実践報告、討論がありました。第3分科会「学校をひらく」のB分散会では、三重・大阪・愛知から3本の報告が行われました。三重からは朝鮮奨学会を基盤とする在日朝鮮人高校生交流会のとりくみ、大阪からは高槻六中の在日韓国・朝鮮人子ども会の活動とコリアをテーマとする総合学習のとりくみ、愛知からはアボジ・オモニ会のとりくみが話されました。「上履きを子ども会室の中に隠す」という在日韓国・朝鮮人の子どもたちが置かれている状況をどう変えていくのか、常に原点に返るとりくみの必要性を強く感じました。
分科会終了後、閉会行事が行われ、60名の高校生が壇上に立ちました。感性豊かで、思いが前面に出る彼らの姿を見て、逆に力づけられる思いがしました。つながりは人を変え、力を生み出します。今こそ、全国規模での実践交流の場の重要性を改めて痛感する集会でした。(み)