2007年07月29日号: ◎子どもの心を蝕む点数至上主義−−都教員が語る「学校教育のいま!」=0707291001  
執筆者: jp
発行日付: 2007/7/23
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 近年、「学力低下」論など教育問題への関心の高まりとともに、子どもたちを取り巻く状況が目まぐるしく変化している。政府は「教育改革」を声高に叫び、関連法案の成立や学習指導要領の見直しなどを押し進めてきた。しかし、最もこの「変化」の影響を受けるのは、教育の受け手である子どもたちということを忘れてはならない。今、教育の現場で何が行われ、子どもたちはどのような状況にさらされているのだろうか。

 「日の丸・君が代」の強制など、教育に関しての締め付けがもっとも厳しく行われている東京都。その公立学校に勤務する教員が現場の状況を語るパネルディスカッション「学校教育のいま!−いじめ・不登校から学力テスト・学校間格差まで」(日本キリスト教団東京教区北支区教育部、同社会部、同信濃町教会社会委員会主催)が7月13日、東京・新宿区の同教会で開催された。パネリストは長谷川和男(前小学校教員、前杉並区教職員組合委員長)、片桐健司(小学校教員、障害児を普通学校へ・全国連絡会運営委員)、岡田明(都立高校教員、「日の丸・君が代」強制反対・予防訴訟原告)の3氏。司会は飯島信氏(中学校特別支援学級教員、日基教団・池袋台湾教会伝道師)。


 足立区の中学校に勤務する飯島氏は、昨年4月に同区で実施された学力テストで不正が行われていた問題に触れ、「今回の問題は、学力テストの成績によって各学校への予算配分に差をつける、教育の体制に問題があると思う。近年、教育が大きく変わってきているのを感じる」と問題提起をした。
 今年3月で定年退職し、現在は中学校の不登校学級などに勤務する長谷川氏は、37年間の小学校教諭の経験から、子どもたちを取り巻く環境の変化を次のように語る。「最近では、『優秀』と言われている子が『荒れている』クラスの中心にいる。昔では考えられないことです。私は、競争主義が子どもの心を蝕んでいると感じています」。学区ではなく自分で行きたい学校を選べる学校選択制や学力テストが導入され、子どもたちが分けられる状況が起こっているという。


 しかし問題は、それらが子どもたちのためにではなく、教育委員会が学校を管理するために行われている点にあると片桐氏は指摘する。「校長は、入学者の数が自分の成績になると考える。自分の学校にいかに子どもを集めるか、ということに必死になってしまう」
 岡田氏は、教員の間の意識の分断が進んでいると指摘する。「統括校長、副校長、主幹などが新たに導入されて階層化されることにより、教員の団結の場をなくしていくことが都教委のねらいの一つ。教員が競争の場にさらされ、なぜ先生を目指したかという『志』の部分を押し殺していかないと生きていけなくなってきている」
 片桐氏は「教員は書類によって管理され、教育活動で本当に必要な時間、子どもといっしょに過ごす時間が取れなくなっている」と言う。
 そうした中では、点数至上主義になりつつある今の教育に対抗していくには、教員だけの力では難しい。長谷川氏は「昔なら『過度の競争はいけない』と、保護者・世論が声をあげていたが、今はいっしょになって子どもを競争の中に投げ込んでしまっている。子ども自身に目を向けずに、『どのような評価を受けるか』ということが教育を動かす原理になりつつある。教員、保護者、地域の人と結びついて団結していかなければ対抗していけない」と語る。
 片桐氏は「学力が高いのがいいことで、低いことは悪いこと、というのが学力低下論の問題。学力が低くてはいけないのか? 学力が低くてもその子は一生懸命生きていて、私たちはそこに目をつけなければいけない。いろんな子が助け合って育っていくのが子どもたちの能力であり、生きる力ではないかと思います」と、今の教育の問題点を訴えた。

 
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