PAC3で北朝鮮ミサイルを迎撃? 破片が落ちて被害が出たら賠償請求できる?
さらに4月12日、小野寺五典防衛相が、北朝鮮による今後のミサイル発射に備えるため、沖縄県内の自衛隊基地にPAC3を常時配備するという考えを示した。これによって、北朝鮮からミサイルが発射されることがあれば、PAC3による迎撃も現実味を帯びてきた。
仮に、PAC3が北朝鮮ミサイルの迎撃に成功した場合でも、その破片が国土に落ちる恐れがある。そのような破片によって、一般の家屋や住民に被害が出たとしたら、被害者は国に対して損害賠償を求めることはできるのだろうか。近藤公人弁護士に聞いた。
●国家賠償法に基づく損害賠償請求は難しい
まず一般論として、国に対して損害賠償を請求する場合には、どのような訴訟を起こすことになるのだろうか。
「国に対して損害賠償を請求する場合、国家賠償法に基づく請求(国賠法1条)となりますが、基本は、民法と同じ不法行為責任です」
このように近藤弁護士は指摘したうえで、次のように説明する。
「国家賠償法により損害賠償請求が認められるためは、『公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に損害を加えたとき』に該当する必要があります」
では、PAC3でミサイルを迎撃した際の被害はどうなのだろうか。
「今回は、政府から自衛隊に対して正式に『破壊措置命令』が出されていますので、迎撃行為は、違法と評価されないでしょう。仮に違法と評価されても、他の生命財産を守る正当防衛行為の場合、賠償責任を負いません」
このように近藤弁護士は、国家賠償法による賠償の対象にならないと話す。
●憲法に基づいて損失補償を請求する可能性
では、国賠法による損害賠償請求が難しいとしても、他に請求する方法はまったくないのだろうか。
近藤弁護士は、国民の財産権の保障を定めた「憲法29条3項」を根拠にして、損失補償を請求することが考えられると指摘する。
「憲法第29条3項は『私有財産は、正当な保障の下に、これを公共のために用いることができる』として、財産権を保障しています。
したがって、迎撃行為によってミサイルの破片が地上に落ち、財産が侵害されたときは、自分の財産は、『公共のために用いた』ものと解釈し、損失補償を請求できる可能性があります」
つまり、国家賠償法ではなく憲法に基づいて、損失補償を国に直接請求できる余地があるといえる。
もっとも、その可能性について、近藤弁護士は「今までに認められた事例はありません。国による損失補償が認められるハードルは高い、といわざるをえません」と述べている。
結局、国に損害の賠償や補償を請求しても、認められる見込みは低いといえそうだ。被害が出ないことを祈るしかないのは何ともやりきれないが、国は国民の生命、身体、財産を守るため最善を尽くして欲しいものだ。
近藤公人(こんどう・きみひと)弁護士…モットーは「依頼者の立場と利益を第一に」。滋賀県内では大きな法律事務所に所属し、中小企業の法務や、労働事件、家事事件など、多種多様な事件をこなしている。
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