ジャーナリスト上杉隆が描く、政治家とゴルフ

ゴルフのプレイスタイルはその人物の性格を表すという。
歴代の大統領のほとんどが「ゴルファー」である米国では、その政治スタイルをゴルフプレイに比することで分析することも少なくない。

たとえば、ニューヨーク・タイムズ記者のドン・ヴァン・ナッタJr.による『大統領とゴルフ』という本の中では、マリガン(打ち直し)を繰り返すビル・クリントンを揶揄して、ビリガン≠ニし、スコアと同様、政治姿勢もごまかしの連続だったと断じている。

ジョン・F・ケネディはゴルフ熱が昂じて、ホワイトハウスの中庭にアプローチ練習場を造ってしまった。現在のバラク・オバマもまた、そのケネディを凌駕するゴルフ好きとして知られる。昨年の大統領予備選中、休暇先のハワイでラウンドをしていたのは有名だが、実は駐留米軍兵士の慰問のために訪れた中東のクウェートでも秘かにクラブを振っていたのだ。

国家リーダーのゴルフ好きは万国共通のようだ。日本でも鳩山一郎のゴルフ好きは有名で、単身、スコットランドのセント・アンドリューズやアメリカ西海岸のぺブルビーチを訪れて、クラブを振っている。当時、鳩山は文部大臣、国会をサボってのゴルフ漫遊にさすがに批判の声もあったという。鳩山一郎元秘書の石橋義夫が語る。

「あまりに頻繁なので、首相からは、『なんだ、鳩山はまた棒振りか』と呆れられていた。それでも飽き足りず、軽井沢の別荘にコースを造ったりもしていた」

鳩山の次に有名なところでは田中角栄だろう。軽井沢ゴルフ倶楽部で白洲次郎に怒鳴られたという逸話も残っているが、そのプレイスタイルは確かに独特だったようだ。田中角栄元秘書の早坂茂三が、生前、筆者にこう語ったことがある。

「早いのなんのって。構えてさっと打ち、ダーっとボールのところまで駆け寄ると、もう球を打っている。あまりにもなんで、『オヤジさん、そんなに急ぐと身体に悪いぜ』と忠告したら、『バカ、1日で3ラウンドするんだ。健康のために急いでいるんだ』と怒鳴られたよ」

田中派に所属したこともある細川護煕もゴルフ好きだ。上智大学ゴルフ部出身だけあってフォームは美しい。だが、そのスタイルはやはり独特だった。
10年ほど前、箱根湖畔GCでラウンドする機会があった。細川はボールを打つと、静かに歩き出す。そしてボールのところに来ると、次のショットを考えて、また打つ。一見、優雅なゴルフに見えるがそうではない。同伴者の動きは見ておらず、ほとんど無視、そう、ひとり我道を行く殿様ゴルフ≠ネのだ。だから同伴者はみな、細川のいない方向に打つように気を遣わなくてはならなかった。

小泉純一郎は能天気である。山梨県の富士ゴルフコース、首相を辞めたばかりの小泉のすぐ後ろの組でラウンドする機会があった。
「いやぁー、いい天気だね〜」
ティーグラウンドでニコニコしながらこう語る小泉、だが、雲は厚く、富士山も見えなければ、陽も射していない。
「いやぁ〜、緊張するね〜、久しぶりで」
そう語りながら、小泉がアドレスをすると、なんと雲の切れ間から太陽光が覗く。しかも雲に隠れていた富士山頂までもが見えた。ほとんど神懸りである。
すると、緊張しているはずの小泉が話しながらスウィングしたと思ったら、フェアウェイの右サイドにグッドショットを放った。やはり変人だ。

その際、首相になる前の麻生太郎もいた。さすがにクレー射撃の元オリンピック選手である、アドレスには時間をかける。ボールの後方から見て、ワッグルを繰り返し、アドレス、再び仕切り直しをし、まだ打たない。やっと打ったと思ったら、左の林。そのときの麻生の言葉はこうだ。
「おーっと、左肩が止まっちまったぜ」
その後、麻生は首相に就任。その時点で、決断のできない言訳の多い首相になることを事前に見抜いていたのは、筆者だけだったに違いない。


上杉隆

1968年福岡県生まれ。テレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリスト。
『ジャーナリズム崩壊』など著書多数。最新刊は『民主党政権は日本をどう変えるのか』
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