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プロ棋士 将棋ソフトに団体戦で負け越し
4月20日 19時30分

プロ棋士 将棋ソフトに団体戦で負け越し
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将棋の現役プロ棋士と、コンピューターソフトが対決する電王戦は初めて行われた5対5の団体戦の最終局でもコンピューター側が勝って、プロ棋士側の1勝3敗1引き分けという結果になりました。

先月から始まった将棋の「第2回電王戦」は、現役のプロ棋士5人が世界トップクラスのコンピューター将棋ソフトと対決する、5対5の団体戦です。
ここまでの勝負は現役プロ棋士の1勝2敗1引き分けと、後がありませんでした。
20日の最終局では、三浦弘行八段が東京大学の研究者が中心となって開発した、「GPS将棋」と対決しました。
午前10時に始まった対局は、三浦八段がなかなか有効な攻め方を見つけられないなか、徐々に持ち時間を失います。
追い込まれたところでコンピューターに攻め込まれ、午後6時14分、102手で三浦八段が投了しました。
この結果、コンピューターとの初めての団体戦は、プロ棋士側の1勝3敗1引き分けという結果になりました。
対局のあと、三浦さんは「相手の切れ味が鋭いことは分かっていましたがこういう結果になってしまいました。どこでミスがあったのかはまだ分かりません」と話していました。
一方、GPS将棋の開発者の一人で、東京大学の金子知適准教授は「勝ったという実感はありません。プロ棋士と対局する機会は貴重ですので、できる限り最高の将棋をしたかったです。貴重な対局の機会を頂いたことに感謝しています」と話していました。

ファンも注目の対局

20日に行われた将棋の電王戦はインターネットでも中継されたほか、東京・港区にある会場では、プロ棋士が勝負の行方を解説するイベントも開かれました。
富山市から7時間ほどかけて来たという20代の女性は、「実は将棋のことは詳しく分かりませんが、プロ棋士が真剣に勝負している姿はかっこいいと思いました。最後までお互い全力を出し切ってほしいです」と話していました。
会場には立ち見も出るほどの大勢の将棋ファンが訪れ、大型画面に映し出された対局の中継映像を見守ったり、プロ棋士らが分かりやすく解説する催しを楽しんだりしていました。

ソフトはどこまで強くなるのか

今からおよそ40年前に日本で開発が始まったコンピューター将棋。
最初は、ルールどおりに駒を動かすのが精一杯でした。
コンピューターを強くするためには、限られた時間にどれだけ多くの手を読み、有利な次の一手を見つけ出すことができるか。
そのプログラムを作る必要がありました。
将棋の序盤ですべての手を読もうとすると、パターンはおよそ10の220乗。
1兆が10の12乗ですから、この10の220乗は、今のコンピューターでは計算することが不可能な天文学的な数字です。
そこで将棋ソフトの開発者は、「評価関数」という数式を使いました。
これは、局面ごとに駒の強さや守りの堅さを数値で表し、有利な状況と不利な状況の序列を作るための数式です。
これを、あらかじめコンピューターに覚え込ませておけば、例え本来のパターンが10の220乗であっても、不利な状況になるパターンを排除して計算することができるのです。
こうすれば、計算する能力を有効に使え、さらに、その先の有利な手も計算することが可能になります。
将棋ソフトがプロと互角に戦えるほど強くなったのは、2000年代。
コンピューターの性能が大きく上がったことに加え、将棋ソフト「ボナンザ」の登場が1つのきっかけでした。
ボナンザは、過去に行われた対局から自動的に学習して「評価関数」を補正する「機械学習」という機能を取り入れました。
ボナンザは、いわば、強い人間同士が指した過去の将棋を学習し、強そうな手を的確に選ぶのに必要な「勘」を養ったのでした。
この機械学習の機能は一般に公開されてその後の将棋ソフトにも取り入れられ、コンピューターが実力を上げる一因となりました。
こうして、強い手を的確に絞り込む能力を身につけたコンピューターは、去年1月、すでに引退していたプロ棋士、米長邦雄・永世棋聖を破るまで成長したのです。
今回戦った、「GPS将棋」は、東京大学の研究者が中心となって開発され、去年行われた「世界コンピュータ将棋選手権」で、優勝しています。
今回の対局でGPS将棋は普段、学生が使っているパソコン、およそ680台をつないで、1秒間に2億5000万通り以上の局面を計算していました。
開発者の一人で、東京大学情報基盤センターの田中哲朗准教授は対局の前、「計算能力が上がったことと機械学習を取り入れたことで、形勢判断が非常に優れ、強くなったと思います。プロ棋士に勝てるチャンスはあると思います」と意気込みを語っていました。

プロ棋士がとった対策は

プロ棋士の三浦弘行八段は、20日の対局に万全の態勢で臨みました。
ことし2月には、コンピューター将棋の特徴をとらえようと、プロ棋士が集まったコンピューター将棋の勉強会に参加しました。
ここで三浦さんは、コンピューター将棋の開発者から将棋ソフトの仕組みについて説明を受けたほか、実際にソフトを使って対局しました。
このとき三浦さんは、コンピューター将棋ソフトには、まだ局面が進んでいない、対局の序盤に隙があるのではないかとみていました。
三浦さんは、「コンピューター将棋は野球に例えると、3回までは二日酔いのピッチャーが投げ、4回からいきなり大リーグの選手になるようなものです。序盤にいかに差をつけるかに勝負の行方がかかっています」と実感を話していました。
対局の1週間前、三浦さんは、自分の仲間のプロ棋士がコンピューターと戦う電王戦の第4局の様子を見に、会場の東京・渋谷区の将棋会館を訪れました。
この第4局は、コンピューターと、現役のプロ棋士の双方の玉が相手の陣地に入る「相入玉」という状態になり、引き分けに終わりました。
追い込まれたプロ棋士が、「相入玉」というコンピューターの判断が間違いやすくなる形に持ち込んだ苦肉の策をとったのです。
三浦さんは、「プロ棋士が執念を見せた勝負だったと感じました。20日の対局は最後にコンピューターの弱さが露呈したと思いましたが、ねらってできることでもないので、普段通りにやるしかないと思っています」と話していました。

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