2012年02月07日

4号機の謎は解けない

4号機の爆発の謎について改めて調べてみたが、私の結論は、分からない、ということになった。

1 主な経緯
3/11 15:42 1〜4号機の非常用電源が津波で喪失
3/15 4:08 4号機の核燃料貯蔵プールの温度が84度に上昇
   6:00 4号機プール付近で爆発
   9:38 4号機で出火を確認
3/16 5:45 4号機で再び火災確認
3/21 6:37 自衛隊の放水車など13台が4号機プールに放水開始
3/22 10:35 3、4号機に外部電源接続
3/23 10:00 4号機プールに生コン圧送機で注水開始

2 3/11の地震発生時の作業員の証言
4号機の原子炉建屋で作業をしていた人は、「作業をしていたら突然ゴーっという音がして激しい振動を経験した」、「地震と同時に照明がなくなり、真っ暗の中で恐怖を感じた」、「プールの水が波打ってみんなかぶっていると思う。死ぬかと思って覚悟を決めた」とNHKの取材に述べている(3/20)。
また、4号機タービン建屋地下1階で作業をしていた人は、「非常灯もつかず、懐中電灯を頼りに1階の建屋入り口に向かった。入り口には数百人の作業員が押し寄せており、必死の思いで脱出」と述べている(3/24時事)。

これらの情報からすると、4号機で3/11に人払いをして特殊の作業を行っていたということではなさそうだ、

3 定期点検
4号機の定期検査のための停止予定期間は、平成22年11月30日〜平成23年9月24日(299日間)と東電のリリースにある。この点検ではシュラウドの交換が予定されていた。2011/7/6の社会新報は、「原子炉圧力容器のシュラウドは切断され、五階のDSピット内に移動されていたとの東電関係者の話を伝えている。他の作業員にも、圧力容器内の機材がDSピットに入れられていると述べている人がいる。

シュラウドが半分水中でアーク切断され、取り出されていたなら、燃料棒の装着は無理だ。


4 原子炉の水の発熱
生コン圧送機で4号機プールに注水を開始した3/23、と翌3/24、防衛省が撮影したサーモグラフィの画像では、燃料プールより原子炉の放射温度の方が高くなっている。この画像は、いくつかのサイトで見ることができる。

この後も初夏にかけて、4号機からの大量の湯気が観察され、原子炉のある辺りから立ち上っているとの指摘が続いた。

東電が発表した原子炉ウエルの画像では、周囲に塩か石灰か湯垢の付着が激しい。 


5 燃料プールの燃料棒の損傷はないようだ。
東電が発表したビデオ画像によれば、燃料プールの燃料棒に大きな損傷は見られない。東電が他の燃料プールの画像を使っていたり、損傷のない部分だけを示しているのなら、話は別だが。米国NRCも、当初燃料プールが原因としていたが、その後見解を修正した。

6 爆発直後に放射能値が上昇。
3/15の4号機爆発直後、周辺での放射能値が急上昇している。東電は、米国から借りた垂直離着陸方式の小型無人機で4号機の内部を調べた。
次の画像は2011/6/14、午後8時少し前のJNNのライブ映像。


7 建屋の損傷が1、3号機とまるで異なる。
小出氏は、2012/1/9の毎日放送「たね蒔きジャーナル」で次のように語っている。
「1号機も3号機もオペレーションフロアーと私たちが呼ぶ、最上階の部分で爆発が起きてまあ体育館のようなどん長の部分が吹き飛んでいるのですが、4号機だけはそうではないのです。そのどん長の部分も吹き飛んでいるし、さらにその下の1階分、さらにまたもっと下のもう1階分ぐらいのところの建屋が爆発で吹き飛んでいるのです。だから使用済燃料プールが埋めこまれている場所というところが、すでに爆発で破壊されてしまっているわけで、いつ、使用済燃料プールが崩壊してしまうかがわからないという状態が4号機の爆発以降ずうっと続いているのです。(補強工事はやったが)次に大きな余震が来たときに4号機の使用済み燃料プールが、本当に壊れないんだろうかということが私は不安なのです。もし壊れてしまえば、政府が3月15日のころに予想したように、250キロというようなところも、膨大な汚染を受けるようなことになると思います」


8 4号機の爆発は、3号機からダクトや地下通路経由で水素が流れ込んだためとする説もあるが、ダクトは4号機爆発前に外れている。軽い水素が地下通路経由で流れ込むとも思えない。

9 4号機建屋の放射能は、他の炉より低い。
4号機のオペレーションフロアては、作業員がガレキ除去を行っており、他号機の建屋より放射線量が低いようだ。燃料がむき出しのまま、建屋内に散乱しているということはなさそうだ。もし、溶融燃料が建屋内にあれば、局部的とはいえ猛烈な放射能が観測されるはずだ。

10 燃料プールは損傷が避けられなかったはず。
燃料プールの健全性が確認できると言っても、冒頭の作業員の言では、「プールの水が波打ってみんなかぶっている」とのこと。それだけ揺れると、燃料プール自体と、恐らくは燃料棒の損傷が避けられなかったのではないか。4号機格納容器には亀裂が生じているとの情報もある。

だが、仮にそうだとしても、どのようなプロセスで当初の爆発が、そしてその後に生じた2回の火災(爆発)が生じたのかは、推定の手がかりさえない。

11 原発では何が起こるかわからない。
一つ言えることは、原子力発電所では、専門家や運転を担う電力会社でさえ、その原因を把握できない異常事象が発生することが4号機の爆発で証明された。

原発の近くに住むのは、怖すぎる。そういう人智の及ばないシステムは、即刻止めないといけない。

また、新しい疑問。「福島第1原子力発電所の不測事態シナリオの素描」で被ばく線量評価(P11)が、4号機燃料プールについて1炉心分と2炉心分と分けて計算がされている。なんで分けてあるのだろう。別々に溶融、放出があると考える理由は? 

4号機の燃料棒は、使用済み燃料プールに1,535本保管されていたという。このうちの204本が新燃料とされ、燃料集合体装着本数が548本だというから、使用済みの燃料でプールに保管されていた実本数は783本となる。当初この数字は、定まらなかった。

2012/3/23 追記
ドイツZDF 「フクシマのうそ」の中で、ナカ氏は、「燃料プールの上の階には、新しい燃料棒が保管されている」と述べている。

私設原子力情報室」によると

新しい燃料棒は、ウラン235の濃度が高いので、使用済み核燃料に比べて、少ない量で臨界に達します。

新核燃料は95.9%がウラン238で、残りの4.1%が連鎖的核分裂反応を起こすウラン235です。新しい燃料なので、もの凄い放射線を発していそうな気がしますが、実はそうではありません。ウラン238の半減期は44億6千万年。ウラン235は7億年。少しずつアルファ崩壊はしていますが、その線量は限られたものです(近くに長時間いるのは危険です)。

また、崩壊熱もありません。ですから、新燃料の輸送に使う容器には、水も放射線の遮蔽材も使われていません。

との説明があるから新燃料が輸送用容器に入ったままプールの外に置かれていてもおかしくない。東電は、新燃料は燃料プールに入っているとしており、齟齬がある。

燃料プール外にあるのであれば、オペレーションフロアーの片付け作業の中でこれも片付けるはずだが、どこに持っていくのだろう。
posted by ZUKUNASHI at 20:54| Comment(0) | 福島原発事故
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