水産特区:自前の販路、競争力に 宮城・桃浦漁港

毎日新聞 2013年04月14日 21時00分(最終更新 04月15日 08時05分)

船からあげたカキを共同作業場に並べる「サラリーマン漁師」たち=宮城県石巻市で2013年4月9日、小川昌宏撮影
船からあげたカキを共同作業場に並べる「サラリーマン漁師」たち=宮城県石巻市で2013年4月9日、小川昌宏撮影

 東日本大震災で壊滅的な被害を受けた漁業の復活に向け、宮城県が10日、漁業権を民間企業に開放する「水産業復興特区」を国に申請した。対象地の石巻市・桃浦(もものうら)漁港で一足早く設立され、受け皿となる見込みの会社は3月、養殖カキの初出荷にこぎつけ順調に滑り出している。県は桃浦をモデルケースに「漁協任せ」からの脱却を目指す。震災から2年1カ月。もともと先細り状態だった水産業に、特区が風穴を開けることができるか。【宇多川はるか、久木田照子】

 海の底まで透き通る美しい入り江・桃浦。漁業施設も家も根こそぎ津波で流され、集落の存続さえ危ぶまれた小さな漁港に9日早朝、次々とカキが水揚げされた。「やっとここまで来た」。“サラリーマン漁師”となった後藤建夫さん(65)は、朝日を浴びて輝くカキの山を見つめた。

 後藤さんは、地元漁師と水産物専門商社「仙台水産」(仙台市)が特区を念頭に作った有限責任会社(LLC)「桃浦かき生産者合同会社」の社員。同社は桃浦産のブランド化を狙い3月、春先の出荷を試みた。

 秋冬のイメージが強いが、産卵に向け養分を蓄える春物もうまい。それを知る漁師で代表社員の大山勝幸さん(66)らが、同水産からの出向者に提案。“漁師の目”と“バイヤーの目”で生育状況を確認・相談し、出荷時期を見極めた。同じ社内に二つの目があって初めてできたことだ。

 「今まではただ取るだけだった。ブランド力を高めるため、利益が上がる販売方法も考えながら漁師も動くんだ」と大山さん。社員18人はサラリーマンとなることで収入も安定する。初出荷約7トンの販売先は大手スーパーの県内店舗。仙台水産の販売網がいきた。他のカキより高い150グラム398円と強気の価格だったが飛ぶように売れた。

 販売まで一手に担うLLCのカキは、水揚げ翌日には店頭に並ぶので新鮮だ。漁協を通す共同販売(共販)だと3、4日はかかる。仙台水産の担当者は「共販は差別化も困難で、品質にもムラがあった。春先の出荷で、競争相手の広島産と差別化できる」と話す。養殖から販売まで一貫して行う「6次産業化」を民間参入で実現し、漁業の近代化を図るのが特区の狙いだ。

 ◇「漁場管理妨げ」漁協と対立残る

最新写真特集

毎日新聞社のご案内

TAP-i

毎日スポニチTAP-i
ニュースを、さわろう。

毎日新聞Androidアプリ

毎日新聞Androidアプリ

MOTTAINAI

MOTTAINAIキャンペーン

まいまいクラブ

まいまいクラブ

毎日RT

毎日RT

毎日ウィークリー

毎日ウィークリー

Tポイントサービス

Tポイントサービス

毎日jp×Firefox

毎日jp×Firefox

毎日新聞のソーシャルアカウント

毎日新聞の
ソーシャルアカウント

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞社の本と雑誌

毎日新聞社の本と雑誌

サンデー毎日

サンデー毎日

毎日プレミアムモール(通販)

毎日プレミアムモール(通販)

毎日新聞のCM

毎日新聞のCM

環境の毎日

環境の毎日