大気重力波の研究

大気重力波は大気中の浮力を復元力とする比較的小規模な大気波動です。ラジオゾンデで風や温度の鉛直プロファイルを観測すると、必ず「ぎざぎざ」が見えますが、そのぎざぎざのほとんどは大気重力波によるものです。大気重力波は直接日々の天気には影響しないので、純粋な気象力学的興味からの理論研究以外は、80年代に入るまでは「気象ノイズ」として扱われる存在でした。それが、80年代に入り、大型大気レーダー等高度な観測手法の開発と、コンピュータ技術の急速な進歩により、その実態が明らかにされるとともに、理論的にも、その重要性が強く認識されるようになりました。90年代には熱帯域に視点が移り、2000年に入ってからは、極域に、さらにグローバルに視点が広がるようになりました。

●1980年代 中緯度の時代/天気予報を高精度化
重力波作用が、中緯度中間圏界面や下部成層圏にみられる弱風層を維持していることが明らかになりました。この重力波作用を組み込むことで、天気予報精度が格段に進歩しました。
●1990年代 熱帯の時代/大気重力波が大規模大気振動を駆動
赤道成層圏下部にみられる準2年周期の大規模な大気振動の駆動源は大気重力波とその仲間であることが解り、大気重力波の重要性への認識がいっそう深まりました。
●2000年代 極域の時代/地球規模大気の総合的評価
極域成層圏の高温維持メカニズムやオゾンホールの将来予測、また,太陽活動の地球大気への影響を解明するため,極域重力波の研究が必要となります.重力波の研究は,地球気候システムという視点からの総合研究へと発展しつつあります.
私たちはこのような大気重力波を、観測、既存データの解析、数値モデル、理論とあらゆる研究手法で研究を進めてきました。また、緯度的にも中緯度、熱帯、海洋域、極域、全球と対象を広げてきました。視点は、重力波の起源、波数、周波数、伝播、エネルギー分布、季節変化、大規模場への作用、スペクトル理論等多岐にわたります。まだ様々なテーマが残っています。

MUレーダーで観測された重力波の例

北極スピッツベルゲン島の雲
地形性重力波によると思われる
南極東オングル島の雲
重力波とその不安定と思われる多数の筋が見える

研究論文


解説  
中緯度
熱帯
極域
グローバル(気候モデルによる研究)