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【コラム 月刊猪瀬直樹】

仕事は「即断即決」と「いつまでに」が重要

2013年4月2日

◆ツイッター

 僕が東京都知事になったのが昨年の12月18日だから、百日と少しが過ぎた。就任してすぐ、全部局にツイッターのアカウントを作れ、と指示した。警視庁から子育ての部局まで126できた。

 何でこんなことをしたかと言えば、最も大きな理由は緊急時の情報発信だ。知っている人はいるだろうが、大事な話だから何度でも書く。

 東日本大震災の当日、記憶にもまだ残っていると思うが、宮城県気仙沼市は巨大な津波と炎にのみ込まれていた。そこの中央公民館3階に、障害児童施設「マザーホーム」の園長内海直子さんは71人の保育園児を含む400人余の住民とともに孤立していた。唯一通じた情報手段が携帯メール。「火の海、ダメかも。がんばる」とイギリスに住む長男に届いた。彼はツイッターに状況を書き込み「拡散をお願いします!」とSOSを発信した。瞬く間にリツイートの輪が広がり、たまたまそれを読んだ人が僕宛にツイートした。

 地元の消防が壊滅状態の中で、僕は東京消防庁の防災部長に現場に行ってほしいと指示した。夜明けとともにヘリが出発、一時間半かけて現場に着いた。現場には生後10日の赤ちゃんがいた。妊婦も96歳のお年寄りもいた。順番にヘリで引き上げ、446人全員を救えた。

 この話はつい先日、3月26日に、僕を都庁に訪ねてくれたツイッター社のディック・コストロ最高経営責任者も知っていた。コストロさんは大きく頷き「欧米の都市から東京の活用例を是非参考にしたいと聞いている。このエピソードは会社のホームページで紹介する」と話してくれた。

◆正しい情報

 大震災の日は都内で帰宅困難者があふれた。携帯は通じにくくなった。避難場所などの災害情報を都庁のホームページに載せたがアクセスの集中でパンクした。首都直下型や東海地震だけでなく台風などの大災害の際には、さまざまなデマが飛ぶ。その中で、5W1Hのはっきりした出処の明確な情報をどう伝えるのか。都庁のツイッターは必ず役に立つ。

 東京の都営、メトロの地下鉄で、走行中の車内で携帯メールやネットへの接続ができるようにしたのは災害対応という理由もある。3月27日に、全線でつながった。もしもの時、暗がりの車内で正しい情報を入手できる。東京の地下鉄利用者は一日あたり世界最多の866万人だ。

 地下鉄内の携帯工事は動きだしてから2年余で完了した。詳しくは別の機会に書くが、もともとはiPhoneユーザーが孫正義さんに送った「東京メトロ内でサクサクと使えないのでしょうか」という質問が発端だった。

 どなたかが「地下鉄改革に熱心な猪瀬さんに伝えてみては」と間を取り持ってくれ、一気に話が進んだ。お互い超多忙。ツイッターとそのメール機能でやりとりしながら都営から進め、腰の重い東京メトロを追随させた。コストロさんが来た翌日、孫さんも僕を訪ねてくれて「これほど早くできるとはまさに決断力のおかげ」と持ち上げてくれた。

◆逆算して動く

 やる、やるといっても「いつまでに」という締切を決め、そこから逆算して計画しなければ、やるうちに入らない。僕は東京マラソンの3週間前に最後の12・195キロを走った。何かが起きるとすれば勝負どころの30キロ過ぎ。落とし穴はないか、自分でゴールまでのイメージを確認してから本番を迎えた。東京五輪招致の活動も開催都市が決定される9月から逆算して動いている。官僚が「やる」「検討する」といっても期限の明示がなければやらないと言っているのに等しい。知事になってますます、「いつまでに」が大事だと思っている。決断も実行もスピード。それが仕事ができるということだと、いつも心がけている。

   ◇   ◇

 作家で東京都知事の猪瀬直樹さんのコラムを月に一度、掲載します。

 ▼猪瀬直樹(いのせ・なおき) 作家、東京都知事。1946(昭和21)年11月生まれ。87年「ミカドの肖像」で第18回大宅壮一ノンフィクション賞、96年「日本国の研究」で文芸春秋読者賞。02年、小泉内閣で道路公団民営化推進委員を務め、道路公団の民営化を実現させた。その時の話をまとめた「道路の権力 道路公団民営化の攻防1000日」「道路の決着」。近著に「決断する力」「突破する力」「解決する力」。07年6月、石原慎太郎前知事から副知事に任命され、12年12月の知事選で当選。日本の選挙史上最高の434万票を集めた。ツイッターのフォロワーは31万人。趣味はテニス、ジョギング。

 

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