■#23 まったくもって個人的な青春
【CROSSBREED PARK / NEWEST MODEL】
1990 SOULFLOWER/KING RECORDS



【ニューエスト・モデル】。
80年代後半〜90年代初頭に活躍し、
現在のソウルフラワー・ユニオンの母体となった
ジャパニーズ・グレイト・ロックバンドです。

ロック好きなら誰もがきっと、若い時分に
狂信的にハマってしまうバンドがいると思います。
ボクにとって、このニューエストモデルがそんな存在でした。
アルバムはもちろん、シングルやビデオまで揃えて、
ライブに10回以上足を運んだバンドは、後にも先にもコレっきりです。

どんなバンドか?

変幻自在のサウンドとリズムを武器に、
言葉の固まりで脳をひっぱたくボーカルが魅力の
社会派ロックバンドってトコでしょうか。
このバンドは、ボーカル&ギターのリーダー、
中川敬(1966生)という人間なくしては語れないでしょう。
浪速の熱血青年活動家って感じ?

なんか聞くトコによると、父親が新聞記者だそうで。
そんで『総理!総理!総理!』の辻元清美議員は
ピースボートが縁で中川と飲み友達なんだとか。

政治や社会に、真正面から向かい歌う彼の歌詞。
ハッキリ言って暑苦しいのかもしれません。
でも、ただのプロテスト・ソングではないです。
いい意味で、とても人間くさい愛があります。
そして、嘘がない。
私は広い意味ですべてラブソングなんだと解釈しています。
たまに暴走しすぎてヒヤヒャしますけど(笑)

天皇制批判や政治批判、反戦、反原発、
そして反テロに、阪神震災復興支援と、まぁ
この平成の時代にここまでやるバンドいないでしょ〜。
バンドですよ?楽団ですよ?
『ギターヒーローになってチヤホヤされたい』って方々とは
志と住む世界が違いますね。
偉いと言うつもりはないですけど、
彼等が《ファッション》じゃないのはよく分かります。

ちなみに以前は右系・左系の政治結社などから
『殺すぞ』って脅迫された事も度々あったそうです。

でもライブでの彼等って、シリアスじゃなくて
めちゃ関西ノリなんだけどね。理屈ナシで楽しい。踊れる。
それと、そんなメッセージ性だけが取り沙汰されるけど
忘れちゃいけないのが、そう、サウンドです。
確かに流行りやオシャレとは無縁で無骨ですけど、唯一無二。
常に他のバンドの三歩先をいく音を出してました。
ハイクォリティな音楽を具体化できる技量があったからこそ
評価されてきた(されている)バンドなのです。
サウンドがダメだったら、誰も応援しませんでしょう。
“精神性”だけの音楽なんて、鬱陶しいだけですもん。

現ソウルフラワーユニオン。
ニューエストモデル時代からのファンには、
サニーデイ曽我部氏や、くるりの皆さん、
サーフコースターズのマキ嬢、
また佐野元春やBOOMの宮沢氏なんかも
熱いラブコールを送ってましたね。
ユニコーン時代のタミオ氏も、パーフリの二人も
ニューエスト聴いてたそうですよ。

逆にニューエスト時代、中川がリスペクトしてたのは
ボ・ガンボスと喜名昌吉&チャンプルーズでした。



では《ニューエストモデルの軌跡》を。

彼等が結成されたのは1985年。1986年にソノシートでINDIESデビュー。
もろに【THE JAM】の1st〜3rdを彷佛させるモッズパンクバンドでした。
いや〜、今聴くと青い・青い(笑)
ポールウェラー意識しすぎ(笑)
※中川は初めはモッズ風ジャケット着て、
首にスカーフとかしてたみたいだけど。
有名になってきた頃はもう、よくいる80'Sパンクスだった。
ロンTにブリーチジーンズ&アーミーブーツ。
バリバリ髪立てて、アイライン引いて。不動明(デビルマン)風。

私が出会ったのは翌1987年。RBF(!)からリリースされた1stアルバムでした。
オルガンをフューチャーしたソリッドなパンクロックと
ソウルミュージックを融合させたサウンドから、
【ソウルパンクバンド】と呼ばれて注目されるようになったのもこの頃からです。
今聴けば、どこがソウルやねんって感じですけど。
この当時、世の中はインディーズ・ブーム最高潮。
猫も杓子もビートパンク。
世の中には薄っぺらなビートパンクバンドが溢れまくってました。
そんな連中に嫌気がさした彼等はパンクとの決別をし、
どんどん進化を始め、自らのサウンドスタイルを確立していくのです。
※《危険な話》という本で反原発を唱えた“広瀬隆”の講議を企画し、
自ら参加・演奏した事もありました。
またライブ時に配るチラシで、60〜70'Sロック・ソウル.ニューオリンズ・ブルース等の
オススメのレコードを定期的に紹介したりしてました。
『パンクばっか聴いてるんやないで!』って、アンタ、パンクやん。

そして1989年。
通算3枚目、メジャーでの1st【SOUL SURVIVOR】発表。
そこで聴かれるサウンドは、パンクの精神を引き継ぎついだ《王道ロック》。
バーズ、ドアーズ、ディラン、ストーンズ、ビートルズ、
モータウンやニューオリンズの影響を匂わせたマニアライクなサウンドでした。
アコーディアン、ピアノやホーンセクション、テープ逆回転、コーラスを
大体的にフューチャーしたその音はJロック界に衝撃を与えました。
この盤で、当時本人達が豪語していたとうり、
彼等は日本のロック史に名を残すバンドになったのです。
※音楽オタクの彼等らしく、シングルのジャケはすべてパロディでした。
ストーンズ、バーズ、ジェファーソンエアプレイン、フランクザッパ、
ビートルズ、エドウィンスター、ファンカデリックなど。
分かるヤツには分かるという。
この辺の宣伝攻略はシブヤ系の感覚でしょう。

この頃からレーベル同朋のメスカリンドライヴと
ガッチリとタッグを組むようになりました。
ファッションもパンクをやめ、
60〜70年代のミュージシャン風に。インド入ってるサイケ系。

この頃、色んなバンドが出演したイベントで、
彼等が演奏を始めた途端、それまでバカ騒ぎしていた客が
硬直したのを見た事があります。
お祭り気分で戦争映画を観ていたら、
本当に戦争が始まってしまった、そんな感じでした。
別に、このバンドの音やルックスが過激な訳ではありません。
ただ、彼等には、他にない圧倒的な存在感があったのです。
それは、彼等が自分達の音楽に、絶対的な自信があったからなのかもしれません。

そして1990年、通算4枚目・メジャーでの2nd【Crossbreed park】発表。
それが上に紹介した盤です。
この盤で彼等は絶対的な地位と信頼をものにします。
リズムはファンク、アイリッシュ、琉球、ラテン、ジャズにも触手が伸び、
前作よりさらにギミックな音づくりが施されています。
聴けば聴く程、偏執狂な音づくりです。
※当時、ある方面では
『ニューエストとフリッパーズさえいればいい』とまで言われ、
日本のロックの救世主として君臨していました。
まるで対極にいるかのような【フリッパーズギター】とも
自らのアプローチにより、共演したこともあります。
【フリッパーズギター】のコーネリアスとオザケンも、
ニューエストを認めていたそうです。
が、パーフリとの共演をニューエストのファンは理解できなかったようで。
ライブ開始前に、ニューエストファンに中川が一言。
『なんでフリッパーズが出るのが不思議なんや?
ええバンドや思たから、呼んだだけや。』
う〜ん、正論。
両者とも他のバンドの事をクソミソに言ってたもんだから
友達がいなかったらしく、パーフリがステージで
『オレ達も友達いないから、ニューエストとマブダチになろう』とトークして、
《恋とマシンガン》を演奏。
終演後、彼等と朝まで飲んだというイイ話も(笑)


そして、1991年、通算5枚目・メジャーでの3rd【UNIVERSAL INVADER】発表。
これがニューエストモデルとしては最後のアルバムです。
時代を反影して、デジタル・ダンス・ファンク色が強くなり、ラップやスクラッチ、サンプリングも。
まぁ、よくも悪くも時代を反影した音だから、今聴くとイタイ部分も。
プロモビデオなんかはクラブ意識しちゃってます(笑)
でも、“ニューエスト節”は全開ですけどね。
曲はいいんで、ライブでのボルテージはこの頃が最高かも。
リズム隊演奏バカテクだし。

そんなニューエスト・モデルですが、このアルバム後、暫くして
『もう洋楽コピーはやめや。そろそろ自分の国の音楽を見つめ直していきたい』
という理由から解散、というかメスカリン・ドライヴと融合。
大和民謡色の強い楽曲を奏でる、ソウルフラワー・ユニオンを始動させました。



その後の活躍は省きますが、ソウルフラワー・ユニオンとしても
着々と名盤(迷盤)を発表。
阪神大震災時には、チンドンスタイルのアコースティックユニットで
被災地を訪問したり、募金活動などを精力的に行ったりして、
マスコミにも話題を提供してました。

その後、かなりのメンバーチェンジがあったようですが、
最近では各種ロックフェスにガンガン出演したりして、
若い新しいファンを増やしている模様です。

そして2001年にリリースされたSFUとしての5THアルバム
【スクリューボール・コメディ】は大傑作!!
ニューエストがひと回り大きくなって蘇ったようなサウンドです。
コレを聴かずして、日本のロックは語れませんね。
彼等こそ、正真正銘、日本で最強のロックバンドだと思います。


※ニューエストモデル時代のアルバム、一時全て廃盤になりましたが
2001年再発されました。また廃盤になる前にどうぞ。

2001.05.16 (2002 一部加筆)

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