正社員の世襲は現代版「蔭敍制」

 「父親が裁判官・検事ならば,その子どもは司法試験に加算点を付与しなければならないのか?」(ネット)「有名な元外務大臣の娘の外務省採用に便宜を図った事件と違いがない」(青年組合委員長)。
 現代自動車の労組は,去る4月20日(2011年)臨時代議員大会において,定年退職者と25年以上の長期勤続社員の子どもが同社への入社志望をするときに加算点を与えるという内容を含む,団体協約案を採択したが,このことに対して世間からは強い非難の声が上がっている。
 「正社員の世襲制」「現代版‘蔭敍制’」という批判が高まるや,現代自動車労組は,「必ずや採用するというわけではない。加算点は長期勤続者に対する士気の高揚のための象徴的な意味の保障に過ぎない」と,あえてその意味を薄めようと弁明した。同労組は,続けて「起亜自動車や韓国GMなども同じ内容の団体協約を既に採択しているのに,なぜわれわれだけが非難されるのか?」と抗弁した。

しかし,世の中の視線は冷たい。高い賃金と年末の成果主義的な宴会,手厚い名節ごとのボーナス,最高水準の福祉として,一般労働者から羨望の眼差しを受け,「貴族労組」と呼ばれる現代自動車の労組が,正社員の世襲制度まで踏み込んだからだ。
 高麗時代および朝鮮王朝の時代に,功臣や高位官僚を優遇し,彼らの子孫に対して科挙試験なく官職を与えた「蔭敍制」のコピーだという批判もある。
 労組の内部においてさえ,反対の雰囲気が少なくない。ある組合員は,「ある程度の分度は守るべきだ。このような要求は,就業競争と公正な機会を与えるべき時代的な要求に逆行するものだ」と皮肉った。正社員化を求めストをして懲戒処分を受けた現代自動車の非正規労働者の組合は「正規社員の労組が,われわれを見捨てた」と愕然となった。
 現代自動車の労組のやり方は,何らかの形で他の労組にも影響が及ぶであろう。度が過ぎれば,結局は自分の足を刺すことになることを知らなければならない。
 (注)蔭敍制:高麗時代および朝鮮時代に重臣と両班の身分の者を優待し,その親族や母方の一族を,科挙のような選抜基準ではなくその出身身分を考慮して採用する制度。蔭敍として選抜された官僚は,蔭官と呼ばれるが,規定には蔭敍制で官職に上るものは堂上官以上の職責と清要職には就けないが,門閥の影響力によっては,時たま清要職と3政丞,2賛成まで上る場合もあった。

(韓国「世界日報」2011年4月22日付,ウ・サンギュ記者)