“怪物ボクサー”井上尚弥（２０＝大橋）に早くもビッグマッチ構想が浮上した。井上は１６日に日本ライトフライ級１位・佐野友樹（３１＝松田）とのノンタイトル１０回戦で１０回ＴＫＯ勝ち。プロ３戦目も圧勝したことで“ポスト・パッキャオ”との激突に向けての第一歩を踏み出した。怪物伝説がいよいよここからスタートする。

　井上のプロ３戦目となった佐野とのノンタイトル１０回戦は、フジテレビ系列で地上波生中継という異例の扱い。歴代の世界王者たちがズラリと並んで見守り、高い注目を集めた一戦で井上は３Ｒに右拳を痛め、それ以降はほぼ左手一本で戦った。それでも、最後は連打からの左フックで佐野をぐらつかせ、レフェリーが試合を止めた。

　怪物ぶりをいかんなく見せつけた井上は、この勝利で日本ランク１位となることが濃厚。「そうなったら日本タイトルに挑戦したい。その先は、次の試合の内容次第」と話した。

　ただ、所属ジムの大橋秀行会長（４８）の野望はとてつもなく大きい。大橋会長が「将来、世界王者同士で統一戦をやることができたら最高」として名前を挙げたのが、北京とロンドン五輪のライトフライ級金メダリスト鄒市明（ゾウ・シミン＝３１、中国）だ。

　北京五輪では米タイム誌で「見るべき１００人の選手」の２０位にランクインしており、今月６日にはついにマカオでプロデビューした。しかも、６階級制覇王者マニー・パッキャオ（３４）や４階級制覇王者ノニト・ドネア（３０＝ともにフィリピン）が契約する米国の名門「トップランク」と契約。アマチュア７冠の井上も「あの“引き出し”の多さは参考になる」と評する。“ポスト・パッキャオ”と言っていい大物だ。

　ただ、試合のために日本に連れて来ることは極めて困難。戦うとなれば敵地に乗り込むことになる可能性が高い。反日感情が吹き荒れる中国での対戦となれば、殺伐たる雰囲気になることも予想されるが「本物の試合を見れば誰もが感動するはず。鄒と井上がやれば、国と国のしがらみとかいったものを超えた戦いができる。（映画）『ロッキー４』の世界ですよ」（大橋会長）。

　世界王者どころか日本王者にもなっていないプロ３戦目の“ルーキー”に、大物との世界王座統一戦構想。これが井上の怪物ぶりを表している。