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御堂筋、200メートルビル論争が活発化

60メートルと31メートルのビルが混在する御堂筋

 大阪のメーンストリート・御堂筋に超高層ビル建設の道を開く、高さ制限の大幅緩和策を巡って、〈摩天楼論争〉が活発化しそうだ。大阪市は「民間投資を誘う呼び水になる」と、高さ最大60メートルと定めた現行制度を変え、200メートル級のビルが建てられる新制度の条例案を今年度中に市議会に提案する構えだ。地元では歓迎の声が上がる一方、「オフィスがだぶつく大阪で、必要性があるのか」「風格のある景観が乱れ、魅力が薄らぐ」といった慎重論、反対論も根強い。

 「バブルの頃はいつも店が満席だったのに、その後はずっと右肩下がり。高さ制限の緩和が活性化につながるのなら、うれしいね」。御堂筋沿いで喫茶店を営む男性(60)はそう話す。

 ほぼ同じ高さの建物が並び、イチョウ並木の上に空が広がる――。ビルの圧迫のない開放感が御堂筋の魅力だ。厳しい高さ制限が守ってきた景観と言える。

 しかし、ビル所有者からは「規制の高さでは、建て替えても十分な広さが確保できない」と不満が漏れる。御堂筋では十分に建て替えが進まず、沿道ビル43棟のうち、半数以上の26棟は築30年以上の「老朽物件」だ。2007年に約2%だった沿道ビルの平均空室率は、11年に約15%まで悪化した。

 御堂筋について、橋下徹市長は就任翌月の12年1月、「(ニューヨークの)マンハッタンと比べると、中心部の密度がスカスカ過ぎる」と、高さ制限の見直し方針を表明。市都市計画審議会専門部会が今年3月、淀屋橋〜本町間1・1キロで超高層ビルの建設を認める新制度案をまとめた。

 案では、高さ50メートル地点で御堂筋側から階段状に後退させた幅に、50メートルを加えた長さの2倍まで高さを緩和。たとえば、20メートルの後退幅を取れば高さ140メートル、50メートルの後退幅なら200メートルのビルが建設できる。航空法の規制を考慮すると、最大約220メートルまで可能になる。

 御堂筋のビル所有者らで作る大阪ビルディング協会会長の佐藤博之・ダイビル相談役は「地盤沈下に歯止めをかけるためにも、規制緩和は歓迎だ」と話す。

 一方で、御堂筋の不動産会社幹部は「御堂筋に超高層ビルを建てて、どこまでテナントを集められるのか」と懐疑的だ。

 今月26日には大阪駅北側に大型複合施設「うめきた・グランフロント大阪」(高さ180〜154メートルの4棟)、来春には阿倍野区で超高層複合ビル「あべのハルカス」(同300メートル)が開業。オフィス供給は一気に増える。幹部は「規制緩和しても建て替えに踏み切るビルは多くはない」と分析する。

 現在の景観が失われることに反対もある。95年の一部規制緩和に当時、反対した元市議(63)は「御堂筋は大阪の歴史そのもの。経済性を優先させて建て替えを促進すれば、どこにでもある街になるだけだ」と語る。

 市は今後、有識者らによる第三者委員会を設け、沿道ビルの外観デザインのガイドラインをまとめるほか、新制度について地権者や市民から意見を聞く。

御堂筋 大阪市北区〜中央区の約4キロ。東西本願寺の別院(御堂)が沿道にあるのが名の由来で、1937年に幅約50メートルに拡張された。大正時代に始まった高さ百尺(31メートル)の法規制が69年に廃止、各地で超高層ビルが登場したが、市は景観保護を理由に淀屋橋〜本町間1・1キロについて、行政指導で百尺規制を続けた。95年にこの区間で高さ最大60メートルに制限を緩和したため、11棟(工事中含む)が新たな高さ制限で建築され、現在は建築時期によって高さが異なる建物が混在している。

2013年4月5日  読売新聞)
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