大規模な医療観察病棟の建設は、どのようなプロセスを経て、建設工事の業者が決定されたのか、昨年、情報公開請求した。
『平成24年度第1号精神医療センター医療観察法病棟新築工事にかかる「総合評価審査小委員会」の資料一切』
滋賀県土木交通部では、「総合評価審査小委員会」で総合評価方式による建設業者を決定したとのことだ。しかし、その決定の判断根拠とな
る「技術提案書」は非公開となった。
そこで、非公開の公文書に対して、開示を求め、昨年8月に異議(不服)申立をした。
滋賀県は、異議申立に対して、諮問理由説明書を、情報公開審査会に提出している。
滋賀県諮問理由説明書
それに対して、反論の「意見書」を下記の内容で、情報公開審査会に提出している。
意見書
「平成24年度第1号 精神医療センター医療観察法病棟新築工事」の落札に関する公文書の一部非公開とされた部分の取り消しについて、県側からの説明書に対して意見申し上げます。
今回の医療観察病棟本体建設にかかる費用は、国からの交付金総額約13億円内の約5億6千万円(滋賀県との契約締結金額)である。医療観察病棟建設計画は、地元住民や当事者の精神障害者関係団体が建設を反対する中、県から詳しい説明や対話もない中進められ、新聞紙上でも何度も取り上げられてきた。今もって、県民の関心の高い建設計画でもある。
この本体建設業者の落札がどのように行われ、適正な選択の結果決定されたかどうかを知ることは、国税を投入して行われる事業として、滋賀県民だけでなく国民の知る権利として必要な情報であると認識している。
滋賀県が非公開情報の妥当性として取り上げている「意欲のある企業は現地に何度も赴き、現場状況を把握し、個々の現場特性を活かした上で、自身が今まで蓄積してきた経験やノウハウ、技術力を駆使して技術提案書を作成しており・・・」とあるが、これ自体はどの業種においても仕事を受ける上では当たり前のことである。また、県では、「こうして作成した技術提案書は各企業にとって知的財産となり、各企業においては情報漏洩を防ぐためにいろいろな対策をとっている」と述べているが、それは、各企業の個々のリスクマネジメントの問題である。国税を投入して行われる、または県税を投入して行われる事業においては、1社1社の状況より、「公的」な側面として、不公平さがないかどうかと、過去の建設結果の適正な検証により、県民や国民が納得出来る根拠となるものをはっきり明示していただかなければならない。
然るに、県が参考として出した「公共工事の品質確保の促進に関する施策を総合的に推進するための基本的な方針について「平成17年8月26日閣議決定」(抜粋)県が理由とした下線部分の記載文書は、審査までの取り扱いに関することであり、審査後の事項ではない。審査後のことに関しては、その参考資料の後半部分である。内容は「採用した技術提案や新技術について、評価・検証を行い、公共工事の品質確保の促進に寄与するものと認められる場合には、以後の公共工事の計画、設計、施工及び管理の各段階に反映させ、継続的な公共工事の品質確保に努めるものとする」とある。つまり、品質確保において、重要なことは、採用した技術について評価、検証が行われたかどうかであり、適正な検証が行われたかどうかを客観的な方法により明らかにし、以後の公共工事に反映させることである。そのためには、どの技術提案書がどのような理由で選ばれたかを開示していただくことが重要である。
県には、過去の落札した業者が、建築物を技術提案書通りに順守して建設したかどうかや、建設後に不具合はないかどうかを検証する外部機関や今までの蓄積データは存在していないとのことである。
そういう状態の中、何を根拠に決定しているかというと、各業者が提出した技術提案書や入札価格を総合判断した総合評価小審査委員会の判断で決定しているとのことである。提出する申請書類は、助成金申請と同じようなもので、こういうことをしたい、こういうことが出来るという申請方式でもあり、データに裏付けされた客観的な判断による選択とは言い難い。
これでは、人や物が揃っている大手の建設業者が有利となり、小さな建設会社には、選ばれる可能性が非常に少ない不公平な結果になるのではないかと懸念される。本来、税金を投入して行われる公共の工事においては、小さな建設会社にも参入する機会を与え、幅広い人材の育成に寄与するのが県の役割ではないかと思われる。
また、入札経過情報から、入札金額では落札業者より低い金額を提示した業者が3社あり、落札した業者は技術評価点が他社よりずば抜けて高く、同社のホームページを見ても施工実績は大手の部分施工であり、県の技術評価点の高さに疑問に思われる。
総合評価小審査委員会では、決定過程の議事録も存在せず、どのような過程で何を元に決められたかということも県民にはわかりにくい状況となっている。県ホームページ上の総合評価方式の導入については、「公共工事は豊かな国民生活の実現や安心・安全の確保、活発な経済活動を支える基盤となる社会資本を整備するもので現代に生きる私たち、そして未来の子や孫の世代に大変大きな影響を与えるものです」と記載されている。この記載の通り、未来の子や孫の世代に大きな影響を与えるものであるなら、いつの時代でも、誰にとってもわかりやすい決定過程の情報発信を行っていただく必要がある。
また、総合評価小審査委員会の実施要領の第4によると「学識経験を有する者の意見の聴収」とあるが、滋賀県の総合評価委員会の外部委員の委員は、京都営繕事務所 技術課長と大津市建設部 建築課長であり、両人とも国や県に関係のある部署の職員でもある。一般的な認識による学識経験を有する外部委員とは言えないのではないかと思われる。
学識経験を有する外部委員が存在しない総合評価小審査委員会では、県民の納得する形での客観性を求めた判断ということに対して、疑義が生じる懸念もある。こうした疑義を払拭する意味でも、県には、落札の判断材料となった「技術提案書」の公開をしていただき、落札根拠とする確固たる公文書を、明らかにしていただきたい。
以上の理由から、「技術提案書」の公開を求めます。
今週に情報公開審査会が開催され、審査される。滋賀県土木交通部の話によると、落札に関する情報公開も不服申立も初めてとのことである。開示か非開示か、どのような結果となるのか・・。