参加者には米国の大統領、国防長官、日本の首相、防衛庁長官などという役割を与え、どんな判断を下して、どんな行動を取るのかを演じさせる。参加者は大多数がその課題や地域についての専門家から選ばれる。私も日本の防衛庁長官などという役割を演じたことがある。ウォーゲームは文字どおり、そのシナリオが単なる危機の想定ではなく、戦争の勃発として、それに対する対応策を具体的に見ていくわけだ。
米国は日本の軍事行動の限界をすぐに認識
さて、グリフィン氏は「ウォーゲームの結論はぞっとする内容になった」と総括していた。ゲームは米国チームと日本チームに分かれて進行し、それぞれに模擬の結果が記録されていった。同報告によると、まず北朝鮮が、韓国でもなく米国でもなく日本を攻撃するという想定は「北朝鮮にとって、日本の無人の地域へのミサイル発射は死傷者を出さないまでも、北朝鮮の実際のミサイル使用への能力と意思とを疑いの余地なく明示し、全面戦争に至らずに、米韓日の側との外交交渉を引き出すことができるという計算から」だという。そしてその背後には日本が自国領土にミサイルを撃ち込まれても、軍事的になんの反撃もできないという北側の読みが作用するのだという前提だった。
北朝鮮側が求める「交渉」の目的は野心的である。米国や日本との外交関係樹立、経済援助の獲得、そして在韓米軍の撤退、さらには在日米軍の撤退までをも、北朝鮮は実は求めているのだ。そうした野望を実現させるための「交渉」をまず米国と実施するというのが、北朝鮮の年来の本音の狙いなのである。
同報告によると、米国チームは、この北朝鮮による日本攻撃の後の米国当局の対応として、以下のような措置を取る方向へと動く想定を明らかにしたという。
・この危機を最小限の規模に封じ込めることに精力を注ぎ、米国政府は中国政府に接触して、北朝鮮の意図を探り、情勢の安定化に努める。
・米国は同時に日本をも加えての軍事力を「誇示」し、北朝鮮のさらなる軍事行動への反撃の構えを見せるが、日本の軍事行動の限界をすぐに認識する。
日本攻撃で始まる第2次朝鮮戦争を具体的に想定せよ
この模擬演習で注視されるのは日本の出方である。報告によると、ゲームの中で日本チームは以下のような判断を下したという。
・日本領内へのミサイル攻撃を日本は「軍事攻撃」と断じて、日米安保条約上の米国の日本への防衛誓約の実行を求めるか否か、あるいは日本自体も独自に反撃の措置を取るべきか否か、を討議した。
・その討議の結果、米国と共同でも日本側の北朝鮮への反撃能力が決定的に欠けることがすぐに判明した。このため日本が北朝鮮の第2次対日攻撃用のミサイルの破壊などの軍事的な反撃をしようにも独自にはできず、その作戦を米国に委託しなければならないことも明白となった。
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