1 | 2 | 3 |最初 次ページ >> ▼ /
2013-04-18 15:23:52

入学

テーマ:ブログ

シムルグ騎士学校。

 帝都シムルグの南に位置したこの学校、かつては皇帝が住まう宮殿であったが、数代前の皇帝が東に新宮殿を作ったため、今は学校の校舎として利用されていた。
 何代にも渡っての増改築が行われた結果、その異様なまでの大きさは大陸でも有数の大きさを誇ることになり、この帝国においても現宮殿に続いて二番目の大きさであった。
 騎士学校としての教育機関だけでなく、内部には騎士団の詰所、宮廷魔術師たちの研究室も存在する。御秀堂 養顔痩身カプセル
 そして、彼らが教官として生徒たちを指導していた。

 ――ついにここまで来た。

 そびえ立つ、かつての王宮への城門を前にしてウィンは足を止めて目を細めた。

 戦時は固く閉められ難攻不落を誇り、平時は他国より訪れる使者たちへ帝国と皇帝の威光を示した城門も今は解放されており、馬車や多くの人々が出入りしている。

 入学式である今日は、出て行くよりも入っていく馬車のほうが多かった。
 多くの馬車に家紋が入っている。
 今日入学するために帝国中から集まった貴族の子弟たちだ。

 家紋こそないものの、それなりに立派なこしらえの馬車は、裕福な商家や地主の子供が乗ってきているのだろう。
 よくよく周囲を見回してみれば、お付きの人はおろか馬車にも乗らず、徒歩にて学校に向かって歩いている人間はウィン一人だけだ。

 ハンナから買い取った(譲り受けたのではなく、買い取った)、使い古されてところどころ綻びが目立つ肩がけカバンを担ぎ歩き出す。

 馬車は門の前までしか入ることが出来ないらしい。
 学校への入学資格は十歳から十六歳まで。
 馬車から降りた少年、少女たちはみな同じ方向へと歩いている。
 彼らもまた、使用人と思しき従者に荷物を担がせ、腰には家から持ってきたであろう、立派な剣を腰に携えていた。

 彼らの流れに乗って同じ方向を目指して歩いていくうちに、入学式が行われる大聖堂が見えてくる。その前には幾つかの天幕が張られており、数人の係官が次々と訪れる彼らを整理しようと必死になっていた。

 今日は日差しも強く、汗ばむような天気だった。

 待たされることに慣れていない貴族の子弟や、富裕層の子息たちが係官に詰め寄ったり、列から外れたりして混沌とした状況を招いている。
 そもそも、彼らの多くが荷物を自分で持たずに使用人に持たせているため、広場とは言えど既に人であふれかえっていた。

「きみきみ、使用人は一度別の広場のほうで待機してもらっていいか?」

 あまりの人の多さにまごついていたウィンに一人の中年の係官が声をかけてきた。

「あれ? 入学許可証を持っているのか」

 懐に大事に仕舞っていた一枚の書状を見せる。
 試験合格者に手渡されたこの許可証。
 これをもらったその日から、三日間は寝床に入ってもニヤニヤと眺めてしまい、寝不足となってしまったのは内緒だ。

「ええ、自分もこの春からここに通うことになりました」

「ああ、なるほど。主人の付き添いとして入学したんだな。で、主人はどこだい? もう手続きは済んだのかな?」

「いえ、自分は一人なんですけど。あと、手続きはまだ済んでいません」

 ウィンの言葉に軽く目を見張る係官。

「こいつは驚いたな。格好からして貴族や地主の子というわけでもなさそうだし、良く入ることができたな」

「ええ、まあ……」

 一応、古着屋で買ってきた新しい服に身を包んではいたものの、使い古された肩掛けカバン。
 この日のために古道具屋で前から目をつけていた中古の剣を腰に携えたウィンの姿は、いま広場に集まっている人々の中では浮いていた。
 使用人たちの中に混じっても、まったく違和感がないどころか、むしろ彼らの方がよっぽど小奇麗な格好をしている。

「ふーむ。ウィン・バード君か。ついてこい」

 係官は天幕の一つにへと歩いていくと、受付をしていた係官にウィンの入学許可証を渡し制服と鍵を受け取りウィンに渡す。

「制服と寮の鍵だ。大聖堂の横に更衣室がある。そこで制服に着替えてくるといい」

「助かります。ありがとうございます」

「あと、一人で来たのなら荷物や脱いだ服はここで預けることができる。着替えたら持って来い」

「わかりました」

 一礼し、言われたとおりウィンは大聖堂へと歩き出す。
 首が痛くなるほど高いその建物に入り、言われたとおり更衣室に使用されている部屋へとはいる。
 部屋といっても、その広さはホールと読んでも差し支えなかったが。

 部屋の中ではすでに着替えている者たちも多く、顔見知り同士なのだろう、いくつかのグループができており彼らは思い思いに談笑していた。御秀堂養顔痩身カプセル第3代
 部屋の隅、若干空いている場所を見つけてカバンを放り出し、制服へと着替えはじめた。

「おい、そこの平民」

 嘲るような口調で声をかけられ振り返ってみると、数人の少年たちが立っている。
 同い年くらいだろうか。
 それぞれが絹で作られた上等な服を身に付け、渡された新しい制服を持って立っている。

「誰の従者だ?」

「いえ、誰の従者でもありません」

「そうか、ならそこを空けろ。おれたちがそこで着替える」

 彼らの先頭に立つ少年が、ウィンを押しのける。

「邪魔だな」

 吐き捨て、置いてあったウィンのカバンと剣を足で押し退ける。

「何をする!」

 思わず、声を荒げ剣と荷物を拾い上げる。

「きさま!」「ジェイド様に向かって何て無礼な!」

 取り巻きの少年たちが激昂し、腰にそれぞれ携えている煌びやかな剣に手をかける。

 だが――

「まあ、おまえたち」

 手を上げて彼らを制したのはジェイドと呼ばれた少年だった。

「彼は平民だ。無学無教養な平民に高貴なる我々は、寛容な精神で接するべきだろう」

 そう言うと彼はウィンに向かって手を差し出した。

「すまなかったな。まさか君の持ち物だとは思わなかったのだ」

 ジェイドはウィンの手を握りにこやかに微笑みを浮かべる。
 顔は笑みを作っているが、その目は笑っておらず他者を見下すことに慣れた、傲慢さを宿していた。

「なぜ、こんなところにゴミが置いてあるのかと思ったよ。この伝統あるシムルグ騎士学校は、貴様のような平民がいていい場所ではない。身の程を知れ」

 小声で言い放つと、ウィンの手を離すと絹のハンカチで手を拭き着替え始める。

 唇を噛み締め、改めて開けた場所を探すウィン。
 今の侯爵とのやり取りを見ていた周囲の者たちは、隅っこを見つけて着替えを再開したウィンへ今度は関わってくることがなかった。

「さすがクライフドルフ将軍閣下のご子息だ。平民にも謝るとは」「侯爵家の御嫡男ジェイド・ヴァン・クライフドル様。我らとは器が違うのだ」

 最後にジェイドが呟いた小声は、どうやら周囲に聞こえなかったようだ。
 表面上はウィンに謝罪し友好的に握手を求めたように見える。

 結果的にはウィンが場所を確保することに繋がった訳だが、さすがの彼であっても悔しさを感じずにはいられなかった。

「よう、災難だったな」

 入学式を終え今日はもう特に予定もなく寮へと戻る新入生に混じり歩いていると、後ろから肩を叩かれた。
 赤い髪を短く刈り込みツンツンに立たせた少年が立っていた。

「おれはロック。ロック・マリーンという名前だ。よろしく」

「ウィン・バードだ」

「やっぱりおまえだったか」

 やっぱりとはどういうことだ? 

「寮の同室者、聞いたことがない名前だったからな」

「え? てことは新入生全員と知り合いなのか?」

「さすがに全員ってことはないけどな」

 ロックは笑うと、ウィンの横に並んで歩き出す。

「おれの実家は商家で、そこそこ成功している方なんだ。だから、ある程度はパーティーに顔を出しているし、大体の顔触れはわかる。まあ、騎士の子供とかってなると知らない奴も出てくるが。で、寮の部屋割りを見たら見たことがない名前がある。そして、見たことのないお前がいた。だから声を掛けてみたのさ」

「なるほど」

「さっきお前に絡んでた奴は、クライフドルフ将軍閣下の息子だ。候爵位を持つ、立派な門閥貴族ってやつだ。取り巻きどもは、その一門の子息だろうな。おまえも騎士を目指すんだろ? だったら、ああいった奴らの不興を買わないように気をつけろ」

「ありがとう、そうするよ」

 だが、ロックの警告は無駄に終わってしまう。半年後に行った模擬戦闘において――

「くそ……くそ!」

 今日から始まった訓練用の騎士剣を使用した模擬戦の授業。
 ジェイドは剣を握り締め、目の前に悠然と立つウィンを睨みつけた。

 こんなみすぼらしい平民(ウィン)に、将軍の息子であり高貴なる侯爵家の血を引く自分が負けるはずがない!御秀堂養顔痩身カプセル第2代

 歴史や戦史、数学などの座学においても、魔法においても目の前の平民(ウィン)の成績は決してかんばしい物ではない。
 家庭教師からそれぞれの家で学んできた他の生徒たちとは違い、ウィンはレティの持ってきた本による独学である。
 どうしても基礎学力において他の生徒たちから遅れを取ってしまっていた。
 さらには魔力もまた少ない。
 貴族たちは有力な血筋との婚姻を重ねることによって、平民より強い魔力を持つ。
 地主や商家の子息たちも魔力においては貴族に劣ってしまう。
 だが、そのなかでも目の前の平民(ウィン)は、さらに少ない魔力だった。

 だから劣等生である彼を徹底的に痛めつけてやろうと思い、彼に声を掛けた。
 騎士剣に魔力を流し、威力と切れ味を強化。
 伝統あるこのシムルグ騎士学校の目障りなゴミを叩きのめし、身の程を知らせてやろうと思ったのだ。

 ところが――

 キン! 

 一瞬で間合いを詰めて来たウィンによって剣を叩き落とされてしまう。
 慌てて拾い直し、油断しすぎたかと思い構えるが、再び剣を合わせると叩き落とされてしまった。

 惨敗である。

 しかも、他の生徒たちが見ている前でだ。
 結局、教官が授業の終了を告げるまでの間に、ジェイドは九回も剣を叩き落とされることになった。

 ――おのれ、おのれ、おのれ! ゴミ虫の分際で!

 取り巻きたちが近づけないほどの怒りの形相を浮かべ、授業で使用した訓練用騎士剣を片付けている平民(ウィン)の背中を睨みつける。

 ――絶対に許さん!

 ジェイドの目には暗い憎悪の光がある。

 ――この俺様をコケにしやがって。ただで済むと思うなよ!


 そして――
 一年の最後に行われる准騎士選抜試験。
 この選抜試験に勝利、もしくは優れた戦闘技術を披露できれば騎士候補生から准騎士の身分が与えられる。
 学生ではあるが、就学中に任務に就くことができるようになるのだ。
 逆にここで落とされてしまうと、また来年も一年生として出直しとなってしまう。


「勝者! ―――――!!」


 試合に勝った対戦相手の歓喜の声を聞きながら、ウィンは目を閉じた。

 今年から試験が変更され、離れた距離から魔法による遠距離戦を行ったあと、接近して剣による模擬戦となった。
 そしてウィンの対戦相手は、魔法――それも攻撃魔法が得意な生徒となった。

 魔力の少ないウィンが使える攻撃魔法は少ない。
 そして、相手の攻撃魔法の威力はウィンの攻撃魔法の比ではなく、彼が張った障壁もあっさりと破られてしまい、ウィンの一年目の試験は終わってしまった。

 大の字に倒れて荒い息を吐いているウィンを、離れた見物席からジェイドが暗い笑みを浮かべて見つめている。
 自分に恥をかかせたウィンへの復讐はまだこれからだった。韓国痩身一号

PR
2013-04-16 20:45:12

麗の台詞

テーマ:ブログ

聞こえてきた銃声に血の気が引いた。

 ドクン、と心臓が鳴る。たまらず会場まで再び駆け出そうとして一歩踏み出した時、後ろから手首をがっしりと掴まれた。

 「待ってください!このまま乗り込む気ですか!死にますよ!?」ダイエット
 肩で息をしているまだ若い刑事は白夜の手首を掴んだまま、小さく「やっと追いついた・・・」と呟いた。

 扉から次々と彼の仲間が現れる。そして聞こえてきた銃声に反応して、所持していた拳銃を取り出していた。

 「我々が動くまで大人しく待っててください」
 「嫌です」

 間髪をいれずに白夜は即答した。思ってもいなかった返答に、一同が唖然とする。いや、半ば予測は出来ていたが、それでも普通は少し位苦しそうに葛藤したり、考える素振りなど見せるだろう。この状態で堂々と警察官に反発するとは思っていなかった。白夜の手首を掴んでいた若い刑事は少し困り顔で焦りを見せた。

 「いや、あのそれは困るんですが・・・」
 「散々待たされたのはこちらなのに、再び待っていろと仰るのですか。そもそも貴方達が早く来ていれば麗さんが無茶をする事もなかったのですよ。愛する女性が捕らわれているのにただじっと黙って待っていろと?」

 言われた刑事は思わず声を詰まらせた。

 白夜も彼等が相当やきもきした思いで出動命令が出るのを待っていたのはわかっている。警察の組織が複雑でそれでも早期解決に向けてがんばってくれていたのは、隼人の話から聞いていた。しかし抑えきれない衝動と不安を抱えたまま、じっとこの場で待つなんて耐えられない。せめて状況を確認したい。邪魔はしないから自分も同行させてほしい。

 その想いが伝わったのか、刑事に相応しいような鋭い目つきと鍛えられた肉体を持つ男が、嘆息しながら了解した。

 「決して無茶はしないと誓ってくれるなら、まあ中を覗くくらいは許しますよ」
 突入はさせられないが、と苦々しい表情で告げた。この中で一番リーダーなのか信頼されているのか、彼が決めた決定に反論を唱える者はいなかった。自分達が十分警戒して気をつければいいだろうと視線のみで了解を示した。

 白夜は一言「感謝します」と伝えて、警戒心を強めながら会場へ真っ直ぐに向う警察官の後を追った。



 ボスが指でぱちんと合図した直後。
 黒尽くめの男達が一斉に武器を構え直す姿を目撃した。

 ちょ、ちょっと待って!これってかなりやばくない!?

 一歩後退するけど、多分背中を見せた瞬間に一発ズガ―ンだ。後ろを見せたら撃たれる。そう思うと逃げ出す事もできないでいた。

 捕まえろと命令を受けた彼等が何で銃を構えて私に向ってくるの!か弱い女の子に対してそんなに大勢の男が動くとか、この卑怯者ども!!

 「逃げなさい麗!」

 聖君の必死の声が聞こえた。自分は椅子に縛られているままなのに、私を案じて逃げろと言ってくれる。近付いてくる彼等と聖君の顔を交互に見つめて、私は必死に考えた。ここでの最善の策は一体何だ!

 男の一人が私に銃を向けた。脅しのつもりだろうけど、今は脅しだと確信がもてない。そして情けないほど足が地面に埋まったかのようで動けない。全身汗でびっしょりだった。先ほどまで強がりを見せる余裕もないし、隣に座るK君のことも気になる。
 捕まえろと言われたのは私一人。ならK君は見逃してくれるんじゃ・・・?

 「K・・・K君、逃げて」

 傍観者のようにただ座って黙ってみていたK君は、「そんなことできるわけないでしょ」と淡々と言った。

 「女の子一人でがんばらせて挙句に守られるって、俺どんだけ情けない男なの。麗が捕まるなら俺も捕まるよ。格闘技とかは出来ないけど、庇う事は出来るはず。一人で逃げだすなんてしたら、ファンの子から幻滅される」

 マイペースな口調でそう言ってから、私を紫の瞳で見上げてきた。巻き込まれているのはK君の方なのに、パニックになるどころか客観的に物事を見ているようだった。そのクールで冷静な眼差しに私の焦りも落ち着いてくる。

 「ご、ごめんね、K君・・・でも何か今の台詞かっこよかった。ちょっとときめいたよ!」
 なかなかこんな場面で言える台詞ではない。彼の本来の性格から来ているのかわからないけど、どこか達観して歳の割りに落ち着いているところを見ると、次第に恐怖が薄まってきた。これで私より年下って思えない・・・実は年齢詐称しているんじゃ・・・

 「失礼だね、していないよ年齢詐称なんて」脂肪燃焼
 「っ!?今私の心読んだ!?」
 「麗は顔に出やすいからわかりやすい。俺はプロフィール通り23歳だよ」

 2歳年下だったか。メイクの所為かちゃんとした年齢までは見た目からはわからなかったけど。

 「これが終わったら、何かいい詩作れそうな気がする」とぼそりとK君が呟いた。歌詞をほとんど彼が担当しているからか。こんな状態なのにそんな事まで考えられる余裕のあるK君は大物だと改めて実感した。

 「うん、その時はCD送って!だからお互い無傷でここから出よう」

 雑談混じりな話をしたから少し冷静さが取り戻せた。焦ったらだめだ。パニックになんてなったらその時点で死ぬ確率が上がる。
 今は逃げる素振りを見せたら撃たれるだろう。だから大人しく彼等の言うとおり従う方が・・・

 ジャキンとマシンガンのような銃をスライドさせた音が聞こえてきた。仲間の一人は手にロープを持っている。ってどっから出してきたのそれ!さっきまでなかったよね!?

 やばい、本格的に捕まる・・・・・・!!

 近付いてくる彼等の姿を見たくなくて顔を背けて目を瞑った。
 けれどいつまで経っても足音が私に近付いてくる音が聞こえない。ロープで体を縛られる事も、何かで攻撃される事もなく、異変を感じて思わず薄っすらと目を開けようとした。

 「麗。あれ」

 K君の指で示すほうにゆっくりと顔を向けると、信じられない光景が飛び込んできた。状況が理解できず、思わず驚愕で口を開けた。



 「お前ら。一体どういうつもりだ」
 低く地を這うような声はボスの物で。ボスが告げた発言は尤もだと思った。

 私達に向っていたはずの黒尽くめの男達は、呆然と立ち尽くしている数名を残した全員が、一斉にボスに銃を向けている。椅子に座る彼の周りをぐるりと囲むように、拳銃やマシンガンを頭に突きつけて、他の男はロープなどボスに巻きつけようとしている。ボスを除いて12名いた仲間の男のうち2人は響と森田さん。そして輪に加わっていないのは4名だ。それ以外は全員、ボスを囲むようにして反旗を翻していた。

 唖然とする私とK君、そして聖君をよそに、仲間の一人が目出し帽を脱いだ。

 「簡単だ。お前が仲間だと思っていた男達と俺達が入れ替わっていただけだ」

 現れた顔の人物を見て、思わず「あ!」と声をあげた。

 「あの人って柔道のオリンピック選手じゃなかったっけ?あ、もうとっくに引退したか」
 K君の言葉につられて頷く。
 その逞しい体は衰える事がなく、未だに鍛えられているようだった。引退して何年か経つけど、その人はまさしく数年前のオリンピックでメダルを取った人物。

 そして次々と目出し帽を取り正体を晒し始めるのを眺めて、私は信じられない思いでいっぱいだ。だって全員がどうやらこのパーティーに招待されていた人物で、いつの間にか彼等の仲間と入れ替わっていたのだから。

 「ど、どーゆーこと・・・?」
 脱力しそうになるのを堪えて、ぽつりと呟いた。

 「さあ、見たまんまなんじゃない?」
 どこか意地悪そうに笑ったK君の顔を見て、瞬時に悟る。

 「もしかして、知ってたのこれ?だからそんなに余裕だったの!?」
 「うん」
 悪びれた様子もなくK君はあっさりと頷いた。続いた言葉に今度こそ脱力したくなった。

 「だってこんな面白そうな場面、自分の目でちゃんと見たいじゃん」
 案外いい性格をしていると、K君に対する見方が少し変わった。さっきまでのかっこいい台詞も嘘か!

 「別に嘘ではないけどね」
 「だから、人の心を勝手に読まないで!!」


 輪に加わっていなかった4名のうちの2人も帽子を取った。その一人は響で、もう一人は恐らく森田さんだろう。残された2人は戦意喪失になったのか、呆然としたまま動けずに立ち尽くしていた。

 「響!どーゆーこと!?」
 近付いてくる弟に訊ねると、少し緊張が解けた顔で響は微笑んだ。

 「うん。麗ちゃんが僕にやったことをね、森田さんに協力してもらって。さっきのトイレ休憩に行った時に見張りをしていた彼等と入れ替わったんだ」

 聞けばどうやら男性トイレには念の為2人見張りをつけていたそうで。男性は体力も力もあるから一人だと抵抗されると言ったら、簡単に仲間の一人が付いて来てくれたそうだ。そして隙を見て森田さんが相手を気絶させて、招待客の中から背格好が似ている人物の協力を仰いだ。トイレに順番に人が行くたびに仲間に交代を伝え、そして彼等自身もトイレに行きたかったからかあっさりと頷いたらしい。そして次々と身包みを剥いで、彼等のフリをして潜伏していたそうだ。
 ちなみに仲間だった男達は未だにトイレで捕まっているらしい。恐らくロープか何かで身動きが取れなくさせているのだろう。

 一部始終説明されて、思わず言葉を失った。まさかそんなことをしていただなんて・・・!

 「助かったけど、なんて危ない真似を・・・!」
 「え、それ麗ちゃんが言っちゃう?」

 うっ、それを言われると痛い。なにせ私も人の事は言えない・・・。

 気付くとボスは武器を奪われた上に数名の人の手でロープを巻きつけられていた。
 そして流石に全員と入れ替わる事は出来なかったそうで。取り残されていた仲間の一人がいきなり息を吹き返したかのように、出口に突進してきた。そう、私の後ろにある出口を。肥滿

 「どけ―――!!!」

 体格のいい男が拳を振り回しながら威嚇するように私に叫んだ。
 思わず咄嗟に響の背中をドンと押して離れさせる。でもその一瞬で間合いを詰められて、間近に迫る男に反応が遅れてしまった。

 「えい」

 小さな掛け声とともに、K君が絶妙なタイミングで男の足を引っ掛けた。目の前で倒れかける男に止めを刺すように、思わず反射的に私の右足が出た。

 ガン!

 そのまま倒れる男の左肩を踏みつける。

 「うわ、麗・・・ヒールで踵落としは容赦がないね」
 「ち、ちがっ!今咄嗟に足が出ちゃって!!」
 踵落としをするつもりはなかったんだよ!
それに頭を狙わなかっただけありがたく思って欲しい。そのまま唸る男の体をピンヒールでぐっと踏むと、暴れていた男が変な呻き声を出して大人しくなった。

 「いくらスリットが入っててあげやすくても、ドレスのまま脚を上げる真似、男の前でしちゃダメだよ。さっきビリって音したけど、大丈夫?」
 「え、嘘!あ、ああ・・・!スリットが破れた・・・」
 よく見たら膝上5cm程度だったスリットが、今では太ももの真ん中あたりまで破れていた。埃塗れになったり、裾を焦がしたり、スリットが破れたり・・・散々な目に遭っているドレスはもう使い物にならないだろう。

 諦めの溜息を吐いたところで、K君が再び話しかけてきた。

 「ね、麗。そのままさ、女王様っぽい台詞言ってみて」
 「は?何それ!嫌だよ、何で私が!」
 「いいじゃん。今ぴったりだし。男を足蹴にしているんだから似合うと思うよ」
 それはしたくてしているわけじゃない!
 踏みつけている足をどかしたら、この人また暴れるかもしれないじゃん!!

 「『頭が高い。地面に這い蹲んな、この豚男』とか」
 な、なんて台詞を・・・!!

 でもどこかワクワクしているK君の顔を見ると、ある意味彼にはお世話になったし、その台詞を言う位大したことじゃないかと思えてくるから不思議だ。もしかしたらアーティストとして何かのインスピレーションを得ようとしているのかもしれないし・・・
 一度唸って考えた後、「一度だけだよ?」と訊ねた。

 一息深呼吸をして、右手を腰に当てながら男を見下ろして言い放つ。

 「頭が高い。地面に這い蹲んなさいこの豚男!」

 コレで満足か!とちょっと呆れた笑みでK君を見たら、K君は一言「あ」とだけ呟いて私の後ろに視線を向けていた。

 つられるように後ろに視線を向けてみれば、いつの間にか開け放たれている両開きの扉が。扉を開けたであろう若い刑事っぽい男は、まずいものを見たかのように咄嗟に視線を逸らした。そして刑事の後ろから現れた人物を見つけた時。いっきに顔から血の気が引いた。

 「と、とととと東条さん・・・・・・」

 え、どれが?と訊ねるK君の問いは完全に無視して、私は気絶したいほど後悔した。

 唖然とした顔で私を見つめるその視線は、私と足蹴にしている男に向いていて。

 あんなにも会いたいと願っていた人物に会えた事が嬉しいはずなのに、この状況では全く喜べないでいた。

 なんで今このタイミングで来るんですか・・・・・・!!!減肥茶

2013-04-13 18:06:39

選択

テーマ:ブログ

「そなた達の気持ちは分かった。
要するに自分達より身分が低い女を妃として認められない…そういうことか。」

王は言葉を投げかけたが、皆俯き答えない。
王の怒りを買うことを恐れているのだ。御秀堂養顔痩身カプセル第3代
先程不満を口にした女性達だけが、そんなのおかしいと思っているのではない。
声に出さなくとも、大勢の心の中に「平民が王妃だなんて…、」という感情が多かれ少なかれ存在している。
側室でも愛妾でもよいではないかと、子が出来たから王妃になれるのかと感じているのだ。

「寿は宮司の娘であり、母御は貴族出身だ。
だがそのようなことは関係ない。
農民の娘でも貧しい商家の娘でもな。」

先程その事を言い放った女性達は、王の怒りを感じ恐ろしさに顔を俯かせている。
王は王妃付の侍女達の方へ顔を向けた。

「そなた達はどうだ。王妃を…守れるか。」

守り、敬い、命に従い、もし危険があれば諌めることが出来るか…それが王が王妃付の侍女達に求める事だ。
そう告げると彼女達は迷う事なく頭を下げる。
王は小さく頷く。
王妃付の侍女は寿に忠誠を誓っている。
そして下級女官達は皆不満はなさそうであるし、一部の貴族出身の娘達もそこまで反発していないようだ。
だが大勢の高級女官達は納得していない。
それでも力でねじ伏せるのは得策とは言えない、何故ならそうする事が余計事態を悪化させ、結果として寿や紗々に被害が及ぶ可能性があるからだ。
王は暫く考え込み、すっと顔を上げた。

「寿を王妃として敬えぬ者はいらぬ。
即刻城を出るといい。」

皆が顔を上げる。

「と言いたいが、それでは事の解決にはならない。」

たかが女官の事で…とは言えない事情がある。
王がどんな対応を取るかによって、彼女達の家、家族に対しても影響を及ぼすのだ。

「今まで通り各々の職務につけ。
だが敬えぬ者は私と王妃と姫の側には置かない。
いざとなった時王妃の命に従えぬ者は本丸を出ろ。
それさえも拒むならば城を出ろ。」

これが最善の策だ。
女官達を追い出して、新しい女性を城に入れても同じことの繰り返しだ。
それから、側室は迎えないから王の寵愛を得る為に城に上がった者は去るようにと告げた。
女官達は誰も声を出さずにいる。

「承知しているはずだが、もし王族に危害を加えれば極刑だ。」

これは誰でも分かっている事実である。
王族を殺せば、本人は勿論一族郎党、死罪、もしくは追放となる。
王があえてそれを言うことにより、その掟を皆に思い知らせた。

「どうするかは其々が決め、侍女頭に報告するように。
如月、そなたに一任する。」

侍女頭…かつての王の乳母であった女性に呼びかける。
それから王は寿に顔を向けた。
それでいいな、と言わんばかりに見つめられ寿は頷いた。

「私の子は全て、王妃の胎から出す。
大切な女性と子を守って欲しい…頼む。」




「姫様、私の姫様。なんとお可愛らしい。」

若草は紗々をぎゅっと抱きしめる。
まだ十八と年若く、乳は出ないが乳母役を自負している。
キョトンとした表情で紗々は彼女を見上げている。
お気に入りの玩具を握りしめながら若草を見上げていたが、だんだん瞼が下がり始め、暫くすると眠ってしまった。御秀堂養顔痩身カプセル第2代
何人かの侍女達がその寝顔を覗き込み、可愛い可愛いと小声で話す。
寿はそんな姿を微笑ましく思っていた。
今は自室に寿と紗々と侍女達だけで、王はいない。
あの後、王は主だった臣下達に王妃を迎える事と既に姫が生まれた事を報告する為、対馬を伴い先に本丸に戻って行った。
貴族の令嬢達と同じで、臣下達も大反対するに違いないがなんとか納得させると王は言った。
反対するに決まっている。
なんの為に娘を城に上げたのかと臣下達は思うだろう。
しかも王子ならまだしも王女であるならば、側室でいいだろうと皆言うかもしれない。
寿は溜息をついた。
日はすっかり暮れたのに王はまだ戻らない。
きっと紛糾しているのだろう。

「寿様、いえ…お方様。
少しお疲れになったのでは?」
「大丈夫よ、神奈。ありがとう。」

寿は笑みを作る。
神奈は心配そうに寿を見つめた。
すると部屋の外からパタパタと足音が聞こえてきた。
侍女頭の元に行っていた一人の侍女が息を切らしながら部屋に入り、寿の前で礼を取る。

「聞いて参りました。」
「如月殿はなんと?」

侍女は顔を上げる。

「下級女官は移動も暇乞いもなかったようでございます。ですが十数人の貴族出身の者達は城を去るそうです。」
「…そう。」

やはり自分を王妃として認めたくない者はいるようだ。
だがそれは責められることではない。高貴な令嬢として育てられた女性達にとっては当然の心理なのかもしれない。
そして王の寵を得られないと分かった以上、城に留まっても仕方ないと判断したのだ。

「お方様、お気を悪くなさる必要はありません。
彼女達の選択です。貴方様は王妃として奥を取り仕切るお方。
貴方様に従えぬということは王に従えぬということ。
恐れ多くも陛下ご自身が私共に『頼む』とまで仰せになったのに、それでも従えぬ不届き者は城にいるべきではありませぬ。」

此花の主張は尤もだが、彼女達を追い出した原因が寿にあることは間違いない。
残った者達も完全に納得した訳ではないだろう。

寿に出来ることは自分を選んだ王の顔に泥を塗らない為にも強く、そして毅然とした態度をとることだ。
王妃としての役割を全う出来れば、分かってくれる者は分かってくれる。
無理やり力づくで強いるのではなく、皆に認められる人間になる努力をするべきなのだ。
愛だけで全てが上手くいく訳ではない。
それでも王への愛があるから頑張ろうと思える。

神奈と此花の顔を交互に見てから寿は頷いて見せた。
二人は安堵したように笑う。

「出て行くのは皆、余所者ばかりですわぁ。」
「余所者?」

菜月がそう言い放った。
彼女は食べていた大福を更に置き、丸々とした体を寿に向けた。
引き目・かぎ鼻・おちょぼ口のぽっちゃりとした女性である。

「五十年前、我が国は戦乱の世を平定し、いくつもの小国を領地としました。
その時都に移ってきた貴族達です。
我が大和の国の古くからの住人ならば、王の決定に否など申しませぬ。」

五十年前…王の祖父の御代、激しい戦があったのは寿も知っていた。
今から十年前にも隣国と戦が起こったが、その時よりも更に大規模な戦争で、勝者も敗者も多大な被害を受けた。
だが財を持つ小国の貴族達は国を捨て、早々と大和に寝返ったので被害を受けることなく現在に至るのだ。
大和に攻め込むと決めたのは彼らであるのに、風向きが悪くなるのを感じ民を土地を捨てた。
そんな国がいくつもあった。
小国の民達は今では大和の国の民として豊かな生活を送っており、民の間では差別意識はないが、早々と国を捨てた貴族のことはどうしても皆そういう目で見てしまう。
風見鶏と揶揄されている。
それが彼女達の矜恃を傷つけていると菜月は語る。韓国痩身一号

「五十年も前のことでも、人々の中にそういう意識があるので、彼女達も劣等感を抱いているのでしょう。」

だからそんな目で見る者を見返す為に出世して権力を握り、家格を上げたい…そう思っているのだ。
そんな中、現れた寿の存在は疎ましい以外何者でもないだろう。
確かな後ろ盾もないのに、王の愛を得ただけで最高の地位を手に入れたのだから。
それだけで人々の尊敬を得られる地位につけるのだから。
それが更に彼女達の矜恃を傷つけたのだ。

「悪口ばかり言って人を陥れることしか考えてない。陥れれば自分が上に立てると思ってるのです。
はっきり言ってざまあみやがれですわぁ。」
「菜月っ、お方様の前でなんと汚い言葉をっ、」

此花が窘める。
寿は首を横に振り「教えてくれてありがとう」と言うと菜月は満足げに笑い、また大福を食べ始めた。

「王城は人々の思惑と欲望が渦巻く場所でございます。
私共が必ずお守り致しますが、その事はお忘れなきよう。」

此花の言葉に寿は頷く。

「分かったわ。これからは今まで以上に気を引き締めます。」


そんな話をしていると部屋の外から足音が聞こえてきた。
その音から察して王が帰ってきたのだと寿はすぐに分かった。
襖が開かれ王が部屋の中に入る。
寿は深く頭を下げ、それに従うようにして侍女も手をつく。
王は若草が抱く紗々を受け取り、軽々と抱き上げた。
眠る我が子の頬に口付けを落としてから、侍女達に退室するよう命じる。
神奈と寿だけが部屋に残った。
王の後ろから対馬が現れ、各々いつもの場所に座る。
寿が王に手を伸ばすと、彼は名残惜しそうに紗々を寿に渡した。
王は目の前の寿の瞳を見据える。

「かなり揉めたが臣下達はなんとか納得した。」
「左様でございますか。」

寿は深い息をつく。
もっと大反対されるかと思ったが上手くいったらしい。

「有力な貴族の御令嬢方を王妃付の侍女にしたのと、無理強いせず女官達の意思を尊重した事が功を奏しました。」

対馬は穏やかな笑みを浮かべる。
以前王が侍女達を直接面接したのはこの時を見据えてのことだった。
常識を弁えた、王家に忠誠を誓う女性達を選び寿につけたのだ。
王直々の人選だと告げると、父親達は惜しいと思いながらも納得した。
娘達は、今まで王の愛を得られなかったのだからこれからも見込みはない。
せめて王妃付の栄誉を手に入れようと考えたのだろう。
そして無理に女官達を追い出さず、自由意志に任せたことにより不平不満は最小限に抑えられた。

「皆様、寿様が王妃になられることをお認めになったのですね。」

神奈は嬉しそうに笑う。
すると王は「そうなのだが…」と言いづらそうに呟いた。
寿がどうしたのかと問うと、覚悟を決めたようで寿を真っ直ぐ見て口を開いた。韓国痩身1号

気になるキーワード

    1 | 2 | 3 |最初 次ページ >> ▼ /
    アメーバID登録して、ブログをつくろう! powered by Ameba (アメーバ)|ブログを中心とした登録無料サイト