TPPが解禁になったら日本の生命保険は壊滅するかも


黒船




いまさら感のある”平成の黒船”TPPですが、友人から衝撃的な話を聞いたので紹介します。
とその前に、TPPの目的、対象などを簡単に整理します。

目 的  :加盟国間の貿易 完全自由化
対 象  :農林水産物、工業品、知的財産権、労働規制、金融、医療サービスなど
加盟国  :シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランド
加盟交渉国:アメリカ、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、ペルー

TPP9カ国と日本のGDP比は、簡単に言うとアメリカと日本でおよそ9割です。
よって、TPPとは「事実上の日米による自由貿易協定」であるといえます。
「医療が自由化すれば、日本の医療保険制度が崩壊する」「海外から安い農作物が入れば、日本の農業は壊滅する」と既存団体が悲痛な声を上げれば、「いま決断しなければ、世界の成長と繁栄から取り残されてしまう」とする経済界。という構図はわかりやすいですが、これはひじょーに狭いせますぎる一端しか表していなくて、TPPの対象は非常に広いのです。TPP全体に関する詳細は、こちらのサイトに詳しく掲載されています。

前置はここまでで、本題です。

先日、ロサンゼルスに住んでいるFPの友人と「TPPを締結することって金融サービスの面ではどう影響するんだろう?」という話になりました。

マスコミでは比較的、医療や農業への影響が取り上げられることの多いTPPですが、アメリカのGDPにおける産業別の構造比をみると、

米国GDP2010

 

実は金融サービスがGDPの20%以上を占めており、アメリカの主要産業のトップであるということがわかります。2番目に弁護士、技術者などの専門色の強いサービス業が11.8%、3番目に製造業が11.4%ときて、医療・教育は8.5%(医療だけだと6%くらい)、農業にいたっては1%にすぎないのです。

このような状況ですから、日本では農業自由化は国が滅ぶと大騒ぎしていますが、実はアメリカからみれば農業自由化なんて鼻くそみたいなもので本丸は金融サービス、それに弁護士、弁理士など専門色の強い高付加価値型サービスの自由化であることは明白です。

オリジナルのTPPを読んでも、そこには「金融サービスの自由化」と明記されていますし、ましてやアメリカが金融を狙っているということであれば、必ずTPPの中の枠組みという国際的な協定の強制力のある形で、保険の自由化も狙ってくると思います。

じゃ自由化されたらどうなるのさ?というなのですが、消費者にはものすごく有利な商品が売られるかもしれない一方で、国内の保険会社は壊滅的な打撃を受けるかもしれません。例えば民間の生命保険を例にとって日米比較してみると

・55歳の男性
・1億円の終身保障
・10年間の払い込み

といった条件で保険に加入するとしましょう。日本の終身保険でいちばん安いものに入ったとして、10年間で約6900万円かかります。6900万円払って、いつかは必ず遺族が1億円もらえるという訳です。年間保険料690万円。。高すぎて、資産家じゃないと入れませんね。
これと同程度の商品、アメリカで100万ドルの終身保険に入ったら幾らになると思いますか?商品によりますが、だいたい30万ドル程度だというのです。同じような保障内容でも掛かるコストは、半分以下!

終身保険というのは積立部分があります。この部分の比較でいっても、日本の終身保険は10年間かけて6900万円払って、その後10年経過した段階での積立金は110%程度にしかなりません。それに対して、支払った30万ドルは10年後には200%の60万ドル!コストでもそうですが、運用面でも全く勝負になりません。

しかも驚きはこれだけではなくて、一定の資産があれば、支払いに掛かる30万ドルは全額プライベートバンクが融資してくれるというサービスがあるそうです。つまり契約者は30万ドルの融資を受けて、財布からは1銭も払うことなく100万ドルの終身保険に加入します。そして死ぬか解約したら、その中から借り受けた30万ドル+利息を払って清算。差し引いた額が手元に残るというわけです。しかも初期投資はゼロです。入りたい・・

こんな金融サービスが輸入されてきたら、まちがいなく日本の生命保険会社は大打撃を受けるでしょう。

そしてこういった商品、日本国内では入れませんが、アメリカに行けば外国人でも加入できてしまうそうです。情報弱者という言葉がありますが、こと金融商品に関してはわたしも含め、日本人はほとんど全員が情報弱者なのかもしれません・・・

最近ときどきお客様から「積み立て型の保険でなにがおすすめですか?」と聞かれることがあり、これがいいあれはダメと言うのですが、このようなプランが現実に輸入されて来たらどうでしょう。
もちろん生命保険契約者保護機構の対象外ですが、費用対効果は圧倒的というか、まったく勝負になりません。

生命保険会社は既知のとおり、日本国債や上場企業の株式を大量に保有する機関投資家です。そういった企業がもし倒産したら日本にどういう影響を及ぼすか、想像もできないことですね・・・。

※注:このエントリーはすべて個人的見解、および聞いた話し、推測によって書かれております。

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