「いつかはゆかし」に関する考察


前回のエントリー、「いつかはゆかしへの誘導広告じゃないか」と多数お叱りを頂きました。当ブログに1日あたりアクセスして頂いている方が約50人ほどですが、2013/4/13については、その100倍くらいのアクセスして頂いております。見事に炎上です。率直に申しあげまして、「いつかはゆかし」に関してこれほどアクセス(嫌悪感)があるとは思わず、ほんとうに冷や汗かいてます。ステマサイトと同じように判断されると思わなかったことが、配慮に大変欠けておりました。加えて、炎上マーケティングを狙った訳では全くないことを、まず冒頭に申し上げます。

以下、本来ご紹介したかったことだけ簡潔に書きます。

◆「いつかはゆかし」の問題点

やまもといちろうさんがご指摘されているとおり、

アブラハムPB社「いつかはゆかし」事業に対する公開質問状(訂正あり)(報告あり)

【謹告】アブラハム社から公開質問状に対する回答はなし

アブラハム・プライベートバンク社(便宜的に以下アブラハム社と呼びます)の運営姿勢については、ウェブで多数とり上げられております。私はこのあたりについては、何も言うことはありません。アブラハム社の運営姿勢が世間にどう捉えられたかの問題ですし、客観的に見てやまもといちろうさんをはじめとする識者の方が多数ブログに書かれている訳ですから、ご指摘のとおりなのだと思います。

前回のエントリーの最後に「いつかはゆかしはアリだと思う」と書きましたら、ほら見ろステマだということで見事に炎上しました。自分自身、痛感いたしましたが、そういうサイトが多数あることが事実だからこその炎上だったのだろうと思います。そして正直、そういった実態をよく知りませんでした。今となってはお恥ずかしい限りです。

◆アブラハム社の広告は誇大と思えるし、サービス内容は誤解を招く

俳優の塚本高史さんをモデルにした、アブラハム社のバナー広告を見ない日はありません。見るたびにまたかと思うこともありますし、広告にある「1億円貯められる」というのも運用次第ですから、もしかしたらそうなるかもね、という話しです。運用利回りが約束されているワケではありません。

また、アブラハム社が提供するサービスは、「投資アドバイザリー」ですから、アブラハム社が独自で提供しているのは「アドバイザリー」業務のみで、実質的に海外運用しているのは別のファンドです。(これは非公開情報かつアブラハム社の守秘義務に抵触することで、どんなファンドなのかをブログではご紹介できません。ご了承ください)

あたかもアブラハム社にお任せしたら1億円を貯められるような広告は、「誇大広告」と言われても仕方がないところがあります。そもそも、客を騙す行為は企業モラルとしてダメです。

ただ後述しますが、「海外ファンドを日本に居ながら買える」という取り組み自体はアリだと思うのです。当然ながら、きちんとした情報開示とサービスが消費者に提供され、コンプライアンスなどにも順守することが前提ですが、こういった会社が何社も出てきて、比較できるようになったらどうでしょう。それは消費者にとっては選択肢が広がりますから、アリではないでしょうか。

◆それでも「いつかはゆかし」のビジネスモデルは条件付きでアリだと思う

実は、海外ファンドを消費者が直接買うことって簡単なことではありません。香港のHSBCなどに海外口座を作って、現地で契約手続を行なう必要があります。個人的にも、「ゆかし」ではありませんが、別の海外ファンドに申し込んだことがありますが、お恥ずかしい話しですが、英語が得意ではない私には大変でした。

申込書類はすべて英語。サポートデスクもありますが、電話応対などすべて英語。時差もありますから、日中の都合のよいときに電話して依頼することもできません。スイッチングするにも日本語サポートはありませんし、WEBでの資産残高照会もリアルタイムで出来ない。運用状況報告書は送られてきますが、基本的に「結果こうでした。」というものばかり。やってみて分かったことですが、日本の金融機関のサービスレベルの高さを実感したものです。

こういった敷居を下げたという意味では、「金融仲介業者がきちんと説明責任を果たして」「消費者側が理解、合意したうえで加入すれば」という条件付きではありますが、意義があると思うのです。やまもといちろうさんも、金融サービスとしての海外ファンドへの運用自体を否定されていることではないと思います。

◆「いつかはゆかし」という金融サービス自体はどうなのか?

実はわたしも「いつかはゆかし」に加入しました。ただこれは、あくまで「実験」です。仕事がらということもありますが、金融サービスとしてお勧めできる商品なのかどうかは、まず自分でやってみないと分からないことが多いからです。

これはアブラハム社のサービスレベルがどうか、という点もありますが、ファンドの運用成績がどうか、という意味でもあります。「いつかはゆかしって儲かりますか?」「大丈夫ですか?」と聞かれることがありますが、すべて「わかりません」「個人的には興味はあります」と答えるようにしています。海外のファンドの運用成績ってどうかといえば、実は年利5%以上のファンドは普通にあります。TPPが解禁になったら、こういった金融サービスが日本に輸入されてくるかもしれないというエントリーを書きました。そういった事情や、アブラハム社のサービス内容を理解したうえで契約する分には問題ないこともあるかもしれません。それでもやるかどうかは、あくまで個人の判断です。

ひるがえって、「いつかはゆかし」については、去年の秋にサービスインしたばかりの商品です。アブラハム社の運営姿勢、営業手法については上記しましたとおり、問題があると思いますが、肝心の商品なり提供しているサービス自体に問題があるのか?というと、これはまた別問題のように思います。というのも、まだ半年弱しかたってませんから短期的にしか成果が出てません。「まだ判断できない」としか言いようがないのではないでしょうか。

ただ、アブラハム社については、やり方があまりにも勿体ないというか、これだけ消費者に嫌悪感を持たれるようなやり方をしてしまったので、残念に思えてなりません。

◆倒産のリスクについて

わたしのように、既にこの商品に申し込んだ方も多くいらっしゃると思いますが、この商品に申し込んで届くのは、アブラハム社との契約書ではありません。海外のファンドとの直接契約に関する書類です。よって、万が一アブラハム社が倒産しても、契約自体は有効です。

ただ、日本の金融商品でしたらペイオフの対象になりますが、そういったものや保護機構による一定部分の保証もありません。分散運用しているから安全といいますが、現実的には金融仲介業者があいだに介在しなくなったら、すべて自己責任で契約を維持するなり、解約するなりの必要性があります。こういったことも、きちんと理解しておかなくてはなりません。

◆結論

繰り返しになりますが、先駆者としてこのようなサービスを広く一般消費者に提供し始めた試み自体はアリだと思います。

しかし、そのやり方には問題がある。これは明確な事実だと思います。願わくば、他の事業体が出てきて、(ステマとか無しで)消費者優位な金融商品がいろいろ出されてきて、きちんと消費者が判断できるような情報インフラが整備されたらいいなと、このように思います。

そして「ゆかし」については、残念ながら今の状況からすると、いくら利益が出ようが、個人的にはお勧めすることは出来ないと思います。

最後に、前回のブログであたかもステマのような結びで終わりまして、申し訳ございませんでした。わたし自身はアブラハム社との営業面の繋がりは一切ございませんし、これまでにアブラハム社から1円も受け取ったことはありません。ということをご報告し、当エントリーの結びとさせて頂きます。

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