(cache) 紀南新聞
11月14日付
腹ビレイルカの研究成果
東京海洋大学院教授が報告

 太地町立くじらの博物館で飼育展示している腹ビレイルカ「はるか」の研究プロジェクト運営委員長を務める加藤秀弘東京海洋大学大学院教授が10日夜、同博物館で集まった町民ら約130人に研究の進ちょく状況について説明した。

 「はるか」は平成18年10月、太地町の沖合で追い込み漁によって捕獲されたバンドウイルカの雌。腹部に一対のヒレ状の器官が見つかり、近代鯨類学の成立以来の初記録として世界的興味を集めた。

 研究チームによるエックス線撮影で「はるか」の腹ビレを解析した結果、指骨に似た形状の扁平な骨など左右計22本あることを確認。四足歩行していた陸上ほ乳類の名残である「後ろ足」に相当することが分かった。

 加藤教授は、四足歩行であったとされる古代鯨類の進化と、胎児の時にある後ろ足の突起物がすぐに引っ込んでしまう現生鯨類についてパソコン映像を使って分かりやすく説明。「はるか」の腹ビレは先祖返りで「昔のころは足があったことを表している」と語った。

 研究チームでは「はるか」の血液からゲノムの解読を8割ほどできており、あと1年くらいで「はるか」の遺伝的なことが解明するという。

 加藤教授は「はるかの寿命が尽きても研究できるように、血液細胞の不死化をしている」「はるかの子どもを調査して初めて継承されていく。子どもに腹ビレがなくても重要。今後の方針は交配を誘発して次世代を残す。まず自然交配。来年できなかったら人工的処置も考えていかなければならない」と話した。

腹ビレイルカの研究成果を説明する加藤教授

研究報告に耳を傾ける参加者