＜大病の脳出血でも最終的な支払いは３１万円＞
テレビや新聞では、医療保険の広告がやたらと目につく。つられて加入している人も多いだろうが、ハッキリ言って、サラリーマンには不要だ。
「えっ！？」と思った人はまずは表を見てほしい。どの病気も医療費全額はベラボーだが、サラリーマンはそのうちの３割負担で済むから、負担はそれほどでもない。しかもさらに負担を軽くする方法があるのだ。
経済評論家の荻原博子氏が言う。
「高額療養費制度を使うのです。高額療養費制度は、医療費負担を和らげるため、医療費の上限を設ける制度。年収によって異なりますが、７０歳未満の一般的な年収だと、１カ月の医療費の自己負担上限額は約８万円で済むのです」
ただし、高額療養費制度には、差額ベッド代や入院時の食費は含まれない。それらを加味した最終的な医療費の自己負担額は、表の右側に記した額になるのだが、３割負担の金額と比べると、さらなる負担の軽さは一目瞭然だ。しかも、確定申告で年間１０万円以上の医療費は控除がある。
毎月の住宅ローンや生活費でカツカツのサラリーマンにとって、ある日突然、病に倒れ、１０万円単位の出費を余儀なくされるのはつらい。そのための保障が医療保険だが、この程度まで医療費を圧縮できる知恵を知っていれば、わざわざ昼メシ代をケチってまで、高額な医療保険に加入する必要がないことが分かるだろう。
たとえば、４５歳男性がアフラック医療保険「新ＥＶＥＲ」のスタンダードプラン（入院給付金日額１万円）に、三大疾病増額特約と総合先進医療特約をつけて加入するとして、ホームページで試算すると、毎月の保険料は７３０９円。
＜給与ストップでも傷病手当金で補える＞
いつ起こるか分からない入院に備えて毎月１万円近いカネを払うなら、もっといい方法がある。
「保険料を払う代わりに毎月５０００円ずつ貯蓄しておけば、１年で６万円、１０年で６０万円。脳出血の医療費だって、十分カバーできます。医療保険に頼らなくても生活できるのです」（荻原氏）
入院したら、通勤できず給料が支給されなくなることを不安に思うかもしれないが、それも大丈夫だ。
「そんなときは、健保組合などに申請して傷病手当金を受け取ることができます。金額は仕事ができない一日につき、標準報酬日額の３分の２です」（荻原氏）
これは、病気やケガによる療養で仕事ができずに、給料をもらえないことが条件。だが、療養には、保険外の自費診療や医師の指示による自宅療養も含まれるから、うつ病で自宅療養するケースも対象だ。最初の３日間は支払い対象外だが、支給期間は最長１８カ月。とにかく手厚い。傷病手当金がもらえるのは、サラリーマンと公務員のみで、妻や引退した人は対象外。だから、自営業者をはじめ国民健康保険の人は「所得補償保険」に加入するのも手である。
サラリーマンは、最低限の蓄えを持ち、公的保険を使い倒せば、民間の医療保険に頼らなくてもいいのだ。
◆病名／入院日数／医療費／３割負担額／高額療養費制度適用額
◇不整脈／３４日／１４１万円／４２万円／１４万円
◇脳出血／１２１日／２９２万円／８７万円／３１万円
◇前立腺肥大／１０日／３５万円／１０万円／８万１０００円
◇脳梗塞／１０７日／２４８万円／７５万円／３０万円
◇くも膜下出血／９７日／３４７万円／１０４万円／３１万円
◇狭心症・心筋梗塞／１３日／９７万円／２９万円／８万７０００円
◇肺がん／２６日／９５万円／２８万円／８万７０００円
◇胃がん／２７日／１０４万円／３１万円／８万８０００円
◇大腸がん／１９日／８３万円／２５万円／８万６０００円
（日刊ゲンダイ2013年4月15日掲載）