フジテレビを退社、ということで
多くの方々に報告する。
 
でも、ここで僕は一つの網を張ってみることにした。
 
取材の方法の一つで、これを
「決め打ち」と言います。
 
なんと言うか…結構最後の手段で、
あんまりこれってやることを推奨される方法じゃないんですが、
 
要は
「決めつけてみて、運よく引っ掛かればラッキー」
みたいな。
 
この事件、容疑者、こいつだろ!
と言い方悪いけど「決めつけて」見る。
しばらくしたら警察がその人物を連行…
ってなった時に、
他局に差をつけられる…みたいな感じと思ってください。
 
 
 
僕は球体君について、決め打ちをしかけてみた。
 
球体君は絶対に…
 
・性格が悪い(断言)!
・何らかのコンプレックスがあって
・ひきょう者で陰湿(間違いない!)。
・上司にはこびへつらって
・女性社員にはセクハラ三昧!
・もー子供のころから全然モテてこなくて
・そのくせ実は小心者で…
・このこんちくしょうは…
 
 
 
 
 
 
…途中から上司にへつらう以外はほぼ自分に当てはまることに気づいて凹む。
 
 
 
いや、へこんどる場合か。
 
そんな人間の取る行動と言えば…
プロファイリングしてみる…
もしそんな人間なら…
多分…
絶対に…
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
 
「はい!実はニューヨークに戻るんです!」
 
多くの方々に説明した。
僕はフジテレビを辞めます。
でも、新しい道が決まってるんです!
 
その道はニューヨーク!
 
みんなにはもうなかなか会えないけれど!
 
僕は新しい地で頑張ってきます!!

 

イエス!ウィーキャン!!
 


 
 
全員に同じ説明をする。
 
みんな、新しい地で頑張れよ!と
応援してくれる。
心が痛む。
でも、とにかくやり遂げよう!
 
 
いつ行くの?
 
何するの?
 
 
ここで僕は
 
 
 
網を張ってみた。
 
 
「そーですねー。3月
25日に渡米して…」

「実は3月27日のフライトを…」

「3月末日(31日)ですねー」

「心機一転、4月1日ですよー」
  


これで4パターン。
フジのみんな、これ読みながら、口々に言ってるはず。
 
あ、俺、25日って言われた!
あ、俺、3月末って聞いた!って。
 
続いて…
 
ニューヨークに戻ってね、
 
フリーのアナウンサーとしてやってくんですよー」


「日本食のコンサルテーションを…ラーメンブームだし…」


「日本式の保育園を経営しましてね…」


「プレゼンテーションのクラスを開講するんですよー」
 
 
こっちで4パターン。
みんなに
全部言うこと変えて。
合計、16パターン。
(実際は3パターン分、言えなかったので、計13パターン)
 
つまり、ある人には


「3月25日渡米してコンサルを」


別の人には


「4月1日に渡米してフリーで」
 
そんなみんなに説明したパターンをすべてメモしていった。
 
 
 
 
 
もし!
 
 
もし!!
 
球体君がひきょう者で、
そのくせ、小心者で、
 
 
去年の悪質な報道そのものが
球体君の仕業なんだったとしたら!!
 
 
 
 
 
僕がアメリカに旅立った、
 
つまり、

 

「僕が何も手出しを出来なくなった段階」で、
 
再び動く可能性があるはずだ!!!
 
 

 

 


 
3月末。
ある日、僕はフジテレビに呼び出された。
僕が出社した最後の日。
年金の説明です、
そう言われて説明を受けにいった。
 
ある紙が出される。
 
なにこれ?
 
 
「    誓約書
 
   わたくし長谷川豊は
 
フジテレビが公表していないすべての情報を
今後、一切口外しないことを誓います。
 
   もし口外した場合、
フジテレビの損害賠償請求に応じます。
 
サイン欄→           」
 
 
 
なんじゃ!?こりゃ??
全員に書いてもらってるとのこと。
 
おいおい、
個人情報保護法などもあるし、
そもそも、こんな誓約書、なくたって、
秘匿義務を守ってないやつがいれば、訴えればいいじゃないか!
 
逆にそれ以外のことは、
法のもとに
「自由な表現」を主張している僕たちマスコミにとって、
完全におかしくないか?
 
 
 
誰に強制されたとしても、
みんな、こんなサイン、絶対にしなくていいと思う。
そして、僕は
 
 
 
 
これは

 

 

 

 

 

おいしい、と思った。
 
 


 
 
これは僕の宣戦布告だ。
球体君、
僕は話すぞ!
全部ぶちまけてやる(かもしれない)ぞ!
反応して来い!
お前は小心者だろ?こうされたら…
何かしたくなるはずだ…
 
 
「お断りします。僕は説明責任を果たすために辞めるので」
 
 
届いてくれよ!
球体君の耳に!
 
誓約書をたたき返す。
祈る様にして、フジテレビを後にする。
それが僕のフジテレビとの最後の時。

 

胸張って、出てきてやった!


 
 
 
 
静かに待つ。
時間だけが過ぎる。
 
 
 
そして。

 

 

 

そのわずか3日後だった。
 
 
 
子供と春休み、

一緒にバスケをして楽しんでいた時だ。
携帯電話が鳴った。

 


 
「もしもし長谷川君?」
 
「はい、長谷川ですが…」
 
「フジテレビの広報ですけど、
 なに?私たちも知らなかったけれど…辞めるんだって?

 

 

 

 スポーツ紙から問い合わせがあったのよ」
 
 
 
 
 
 
 
かかったか!?
 
 
 
 
時計の針は
 
3月26日、午前11時9分を指していた。