大型車の免許を取得して、ドライバーとして正式に採用されました。その後、せっかく高い日本語の力があるのだから単なるドライバーではもったいないと、フランス人の夫がアドバイスしてくれて、観光ガイドも始めたのです。
入社して3年後、前社長が定年退職したのを機に私がこの会社を受け継ぐことにしました。一社員として働いていたときも、自分がここの社長になるなんて夢にも思わなかったのですが。
出会いはすごい、運命ってすごいとつくづく感じています。このフラゴナールでの出会いがなかったら、私は今、この仕事をしていなかったでしょうから」
仕事と家庭生活、日本文化とフランス文化のバランスを取りながら
ステファニーは、フランス人としては飛び抜けて働き者だ。自分優先、家庭優先で仕事は付随するものという考え方はフランスでは当たり前な中、昼夜問わず事務的なことをほとんどこなし、休日もツアーに出かけることがある。それでも、幼い子供を持つ母親だから、子供と過ごす時間もきちんと取っている。
「夫がものすごく協力的です。母の協力もあるので、やりくりできています。やはり経営者ですし、仕事が忙しいときはついのめりこんでしまいますね。お客様と過ごす時間が長くなり、家にいる時間が少なくなってしまいそうになります。
そういうときは夫や息子が、家のことも忘れないで! と言ってくれるので、仕事はここまでと区切りをつけて、スタッフに任せるようにしています。
フランス人的な働き方も極端だと思いますし、勤務時間が長く、休暇も少ない日本人の働き方も極端ですね。両方の中間がよいと思いますが、なかなか簡単にはいかないでしょうね」
ステファニーにとって、仕事と家庭生活とのバランスとは、日本の文化とフランスの文化のバランスでもある。
「例えばフランスでは普通のことですが、夫と2人きりで旅行したりして妻であることもいつも意識しています。夫が日本人で家庭も日本的だったら、少し息苦しかったでしょう。私には2つの文化が必要です」
「私は、高校生のときからずっと、フランスと日本を比較しながら暮らしてきました。2つの国の学生の違い、結婚したときは両国の結婚式や夫婦関係の違い、今は子どもを持って子育ての違いといったふうに。こうやって生きるのが私の生き方だと思います」
「日本の学生は将来の目的がないとよく指摘されますが、フランスにも何をしたいか分からない学生は少なくないのです。私は日本を発見して、好きになって、本当にラッキーだったと思います。日本語にも日本の文化にも日本人にも、飽きることはないでしょう。これから一生付き合っていくつもりです」
日本への愛情がほとばしるステファニーやスタッフたちが、いつも待っていてくれる。スイスに戻った私は、今、ニースをとても身近に感じる。
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