大震災後純輸出が減少したのは、発電の火力シフトによって燃料輸入が増大し、実質輸入が増えたことが大きな原因だ。しかし、実質輸入は12年4−6月期をピークとして減少しているので、それ以降の実質純輸出減少の原因は、実質輸出の減少だ。
なお、図表2には、民間企業設備も示した。推移は、つぎのとおりだ。
リーマン前から減少。リーマン後はほぼ一定。10年に輸出が増えても一定。11年10−12月期に増加したが、その後減少。
輸出が増えても設備投資が増えないことに注意が必要だ。投資をしても海外投資になってしまうのだ。これは、04−07年頃とは違う傾向である。
12年7−9月期には、実質純輸出と民間企業設備が落ち込んだため、GDP成長率はマイナスになった。
10−12月期においてGDPがマイナス成長を免れたのは、住宅投資が高い伸びを示したからだ。これは、復興と住宅エコポイントによるものである。
株価は、リーマンショック直前の水準を回復した。
実質GDPがリーマンショック直前の水準にほぼ戻ったのは事実だ。しかしそれは、政府最終消費支出と公的固定資本形成が増えたことによる。
企業活動に関係する民間住宅と民間企業設備は、いずれもリーマンショック直前の水準を下回る。また、鉱工業生産指数も1割程度低い。
株価に直接関係するのは、企業利益だ。これは、リーマンショック直前の水準よりかなり低い。これについては、後で述べる。
(注)現実の貿易収支は赤字になっているが、実質の純輸出(実質輸出と実質輸入の差)は、図表3に見るように、黒字だ。実質値は、基準時点を変えると値が変わるので、こうした事態になる。したがって、純輸出の絶対水準を問題にするのは、適当でない。異時点間の比較をする場合に用いるべきだ。