円安が顕著になった12年10−12月期においても、輸出が減少していることに注意が必要だ。図表2の実額で見ると、12年1−3月期をピークとして、それ以降は継続的に減少しているのである。これは、中国経済の減速とヨーロッパの景気後退によるものだ。10−12月期の実質輸出は、大震災後の11年4−6月期よりさらに低い水準だ。
震災による落ち込みをならして見れば、図表2に見るリーマンショック後の実質輸出の推移は、つぎの3つの期間に区別される。
(1)落ち込みからの回復期:10年7−9月期頃まで
(2)安定期:10年7−9月期頃から12年4−6月期まで
(3)減少期:12年7−9月期以降、最近時点まで
しばしば、「リーマンショック後の急激な円高が日本の輸出の競争力を低め、それが日本経済回復の障害になっている」と言われた。しかし、上で見たように、急激な円高の時代に、日本の実質輸出は(大震災の影響を除外すれば)、減ったのではなく、増えたのである。
この間に日本の実質輸出が増大した基本的な要因は、すでに述べたように、中国の経済刺激策など、世界経済のリアルな面での要因である。実質輸出に影響を与えているのは、為替レートではなく、世界経済のファンダメンタルズなのである。
この事実は、今後を考える場合にも、重要な意味を持つことになる。
実質純輸出と実質設備投資の落ち込みが
経済の足を引っ張る
2007年からの実質純輸出の推移を示すと、図表3のとおりだ(注)。
経済危機によって大きく落ち込んだあと、回復して、10年には07年の水準を超えた。しかし、大震災で落ち込んだ。その後回復したが、12年1−3月期をピークとして減少している。
12年10−12月期の水準は、08年10−12月期や09年4−6月期より少なくなっている。11年10−12月期に比べると5.1兆円ほど少ない。これは、12年10−12月期のGDPの約1%である。これだけ総需要が減少しているわけである。