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野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」
【第1回】 2013年4月18日
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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

【新連載】
円安が進んでいるが、実体経済は停滞したまま

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 ここ数年の季節調整済み実質GDPの需要項目別の推移(対前期伸び率の年率換算値)を見ると、図表1に示すとおりである。

 まず注目されるのは、輸出の変動が、経済全体の変動に大きな影響を与えていることだ。より詳しく見ると、つぎのとおりだ。

 リーマンショック後の2008年10−12月期、09年1−3月期に、実質輸出は、それぞれ-45.3%、-68.8%というきわめて大きな減少を記録した。実質GDPが落ち込んだ大きな理由は、このように輸出が急減したことだ。

 その後、輸出は高い伸びで増加した。落ち込んだことの反動もあるが、それだけではない。

 実質輸出の実額を見ると、単なる反動とは言えないことがよく分かる。図表2に見るように、10年10−12月期(4Q)まで、実額が増加し続けたのである。これは、主として中国への輸出が増大したからだ。そしてこれは、中国が強力な景気刺激策をとったからである。

 この時期には顕著に円高が進行したにもかかわらず、このように輸出が伸びたことに注意が必要だ(ただし、実質輸出が経済危機前のピークを回復することはなかった。これは、経済危機前の輸出が、アメリカの住宅バブルに支えられたものだったからだ)。

 輸出が増加したため、GDPの伸び率も高まった。09年10−12月期(4Q)から10年7−9月期(3Q)にかけては、とくにそれが顕著だった。

 ところが、大震災後に輸出が急減し、これがGDPのマイナス成長をもたらした。その後回復したが、12年7−9月期から、実質輸出が再び大きく減少した。

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  • 第1回 【新連載】 円安が進んでいるが、実体経済は停滞したまま (2013.04.18)
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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『「超」整理法』シリーズ、『世界経済危機 日本の罪と罰』『日本を破滅から救うための経済学』等がある。 野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」

日本銀行が新しい金融政策を決定した。今後2年間でマネタリーベースを2倍に増加させ、消費者物価指数上昇率を2%にするとしている。これを受けて、「円安が進行して輸出が増大する。輸出関連企業の利益が増大し、株価が上がる。日本経済は長く続いた停滞から脱却しようとしている」と考えている人が多い。果たして、この期待は、実現されるだろうか?

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