現場から:放射性物質含む廃棄物、悩む自治体 行き場を失う焼却灰=高橋直純、山田麻未 /神奈川
毎日新聞 4月13日(土)11時36分配信
◇国基準に従うだけでは解決せず
福島第1原発の事故で全国に飛散した放射性物質は、震災から2年を経た今も県内自治体を悩ませる。震災前は建築資材に再利用されたり、埋め立てなどで処分されたりしていたごみや下水汚泥は焼却灰になることで、放射性物質が濃縮されてしまう。受け入れる民間業者や処理施設近隣の住民の理解が不可欠だが、一部の自治体では、処理できない焼却灰が行き場を失ってたまり続けている。県内自治体の現状を探った。
◇報道後に拒否−−藤沢市
約1600トンの下水汚泥焼却灰を一時保管している藤沢市。たまり続ける焼却灰を処分するため、同市は土砂などを混ぜて濃度を下げた上で建築資材に再資源化する装置を新設し、来年2月から稼働させる。
震災前はセメント原料などとして民間企業に再利用を委託していた。だが震災後、焼却灰の放射性物質の濃度は、最大で1キロあたり6415ベクレルを検出し、建築資材に利用できる国の基準(1キロあたり100ベクレル以下)を大きく超えた。これまで委託していた業者は「濃度が高い」として受け入れを拒否した。
焼却灰は当初、下水処理施設で焼却炉を備える辻堂浄化センター(辻堂西海岸3)に保管していた。ところがスペースがいっぱいになり、現在は市内にもう1カ所ある、大清水浄化センター(大鋸(だいぎり))にも倉庫を建て、保管している。倉庫を建築した時には、地元住民向けの説明会を開いた。保管期間は最長5年とし、その間に焼却灰を処理をする方針を示したことで同意を得た。
導入予定の装置は、土砂や水と焼却灰を混合してセメントなどの原料を作るもので、受け入れ業者の望む基準に応じて混ぜる土砂などの割合を増やす。辻堂浄化センター内に設置し、約5000万円の整備費用と月額約540万円のリース代などは、東京電力に賠償請求するという。
ところが今月、焼却灰を混合して処理する装置の導入方針を一部メディアで報道されると、数件の苦情が同市に寄せられただけでなく、当初は受け入れを予定していた2社のうちの1社が拒否に転じた。市は「風評被害を気にしているのだろう」と見ている。
◇独自に埋め立て−−川崎市
最終更新:4月17日(水)17時31分