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野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」
【第1回】 2013年4月18日
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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

【新連載】
円安が進んでいるが、実体経済は停滞したまま

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 日本銀行が新しい金融政策を決定した。今後2年間でマネタリーベースを2倍に増加させ、消費者物価指数上昇率を2%にするとしている。

 これを受けて、株価が上昇している。「円安が進行して輸出が増大する。輸出関連企業の利益が増大し、株価が上がる。日本経済は長く続いた停滞から脱却しようとしている」と考えている人が多い。

 この期待は、実現されるだろうか? 以下では、この問題について考えることとしよう。

資産価格は、実体経済の動向から
乖離してバブルを起こす

 最初に注意すべきは、「株価や為替レートは、しばしば実体経済の動向から乖離する」ということだ(このような文脈での実体経済は、しばしば「ファンダメンタルズ」と呼ばれる)。

 株価や為替レートは資産価格であり、「期待」、つまり将来の見通しに影響される。何らかの理由によって将来への期待が好転すると、ファンダメンタルズに何の変化がないにもかかわらず、価格が上昇する。価格上昇がさらに需要を増やし、投機的な取引も増えるので、ファンダメンタルズから乖離した価格上昇が続く。これが、「バブル」だ。

 それに対して、実体経済は、期待が変化しても、それによって直接に動かされることはない(ただし、まったく独立であるわけでもない。これについては後で述べる)。

 これから述べることのおおよそのストーリーをあらかじめ示すと、つぎのとおりだ。

 日本経済の現状を見ると、円安が進み、株価が高騰しているにもかかわらず、実体経済の動向ははかばかしくない。好転していると考えられる側面はほとんどなく、悪化している側面が多い。

 したがって、ここ数カ月間の株価高騰は、ファンダメンタルズの好転によって引き起こされたものではなく、将来への過大な期待が醸成されたことによるバブルであることが、ほぼ確実だ。

 もちろん、実体経済の停滞的状態が、今後も継続するというわけではない。しかし、円安や株価高騰が実体経済を改善する可能性は、今後も小さいのである。

 実体経済が改善するのは、短期・中期的に見れば、世界経済が好転して日本の輸出数量が増加する場合である。

 長期的に言えば、日本に生産性の高い新しい産業が生まれ、縮小する製造業からの雇用の受け皿になる場合だ。それこそが、日本を再生させる唯一のルートだ。そして、これは、金融政策によって実現されることではない。

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  • 第1回 【新連載】 円安が進んでいるが、実体経済は停滞したまま (2013.04.18)
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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『「超」整理法』シリーズ、『世界経済危機 日本の罪と罰』『日本を破滅から救うための経済学』等がある。 野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」

日本銀行が新しい金融政策を決定した。今後2年間でマネタリーベースを2倍に増加させ、消費者物価指数上昇率を2%にするとしている。これを受けて、「円安が進行して輸出が増大する。輸出関連企業の利益が増大し、株価が上がる。日本経済は長く続いた停滞から脱却しようとしている」と考えている人が多い。果たして、この期待は、実現されるだろうか?

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