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スペシャルインタビュー・対談

スペシャルインタビュー・対談

脚本家・遊川和彦×制作統括・山本敏彦×チーフ演出・梛川善郎 スペシャル対談[前編] 「純と愛」の脚本を手がけるのは、「キャラクターがいかに魅力的であるか」をとことん追求したオリジナル作品にこだわる脚本家・遊川和彦さん。ドラマ制作の総指揮を執る山本チーフ・プロデューサー、監督として撮影現場をリードする梛川チーフ演出を交え、公式ホームページだけのスペシャル対談がここに実現しました。

どうにもふたりが必要だ、と思える泥くさい男と女を描いてみたかった。

『純と愛』が生まれた背景を教えてください。
山本:
最初に遊川さんに電話をかけたのは、昨年6月でしたね。最初は僕単独で、途中から梛川も合流して3〜4回お会いして、今回の連続テレビ小説の脚本をお願いすることになったんです。
遊川:
そんな前ですか?覚えてないなぁ(笑)。
山本:
そうですよ(笑)。連続テレビ小説はオリジナルが基本なので、僕が「いま一番オリジナルの脚本を書いてもらいたい人」は遊川さんしかいなかった。実は、遊川さんとのお仕事は初めてなんですが、3年ほど前に会食でご一緒したことがありましてね。その時にじっくり話をする機会があって、とにかくドラマを愛していて、すっごい熱いものを持っている彼と一緒にやりたいと思っていたんです。まぁ大変かもしれないけど(笑)、この人となら面白いドラマができる、と。
チーフ演出・梛川善郎 画像
梛川:
あの〜、ずっと聞きたかったんですけど。
遊川:
…ざっくばらんだねぇ!(笑)。
梛川:
(笑)。一緒に企画を考えている中で、遊川さんから「こういう男と女の話をやりたいんだ」という話があったのが、「純と愛」のはじまりなんですよね。その時、「どこのテレビ局に出しても通らずに、何年も温め続けた企画なんだ」とおっしゃってたんですけど、それはいつ頃からなんですか?
遊川:
いつからというより、僕はずっと夫婦に興味があるんですよ。夫婦愛というものにね。まぁ僕は弱い人間なので、女性に守られたい、支えてほしい願望がある(笑)。美しく、たくましく、凛としている女性が好きで。
 男って、そんな女性にどこかすがって生きていくからこそ、外でガーッとえらそうに言えたりするんじゃないかと思うんです。でも家に帰ったら、「洗いモノして」とか「洗った皿は重ねないでよ」とか言われてさ(笑)。「なんだ、疲れて帰ってきてるのに!」とか思いながらも、どこかで「あぁ、やっぱりこの人がいいな」と思える。そういう泥くさい関係をね、描いてみたいと思ってた。
 どちらかが病気で死ぬ、とかありがちなドラマじゃなくて、「本当にふたりが必要だ」っていう感じを出会いから別れまでやりたいって。で、「夫婦愛って何だろう?」と一生懸命考えて、せっせと企画書を書いてもさ、「もっとドラマ性が必要だ」とか言われて、なかなか通らない訳ですよ(苦笑)。
山本:
このチームの原点は「これまでになかったドラマをやろう」ですからね。もともとは、東日本大震災の後というタイミングもあって、「人間がどこまで再起できるか」「この世の中で何を信じてがんばれるのか」というテーマで話してたんですよ。そこで、「現在の夫婦像とか、結婚ってどうですか?」と遊川さんから出て、話を深めていくうちにそれは面白いなぁとなった。まぁ、その通らなかった企画書は見せてもらえなかったんですけどね(笑)。
梛川:
でも話を聞く分には、確かにその企画は通らないだろうなぁって思った(笑)。一般的なワンクール(三ヶ月間)のドラマ枠だとぴしっとしないから。
遊川:
ぴしっとしない!?(笑)。
梛川:
(笑)。「その売りは何だ?」とプロデューサー目線で考えると、ですよ。だからこそ逆に、連続テレビ小説という長いスパンのドラマなら、ちょっとずつ階段を上っていくような描き方ができるんじゃないかと思ったんです。
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「純愛がやりたいんだよ!」そんな叫びから、タイトルが生まれた。

『純と愛』というドラマタイトルへの思いは?
遊川:
最初、「ふたりなら」というタイトルで考えたんですよね。でも通らなかった(笑)。「ふたりなら」っていいタイトルでしょ?でもね、いいタイトルはダメなんですよ。強さがないと。
制作統括・山本敏彦 画像
山本:
実は、「純と愛」というタイトルも最初の方に出てたんですけど、当初は「これじゃ、あまりにも…」という感じだった(笑)。でも、いろんな案を出して、最終的にはこれがストレートでいいんじゃないかとなったんですよね。
梛川:
確かその時、遊川さんが「要は、純愛がやりたいんだよ!」って叫んだんですよ。「つまり、“純と愛”なんだよ。だから、主人公の名前も純と愛(いとし)なんだ」って。
山本:
そう。純に見えない純と、愛に恵まれない愛(いとし)。
梛川:
そこから「普通なら純が男で、愛(いとし)が女だろう?その名前は逆じゃないか?」という意見が上から出て…。
山本:
まぁ最後の最後までその話はありましたけど、「そこは絶対的なこだわりなんだ」と貫き通したんです。ヒロインは純で、さらに女性だと。そこがするすると行けたのは、遊川さんの思いの強さのおかげですけどね。
遊川:
つまりこのドラマでは、男でなく「女が主導権を握った方がいい」ということなんですよ。男が女に従う。そして、女は男の真似をするんじゃなく、女として男を引っ張っていく。これまでの発想を転換しましょうと。まるで人間の悠久の歴史を覆すような、ね(笑)。
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異質なものが混じり合うからこそ、人間は大変で、面白いんじゃないだろうか?

大阪と宮古島、ふたつのドラマの舞台について。
山本:
今年、2012年5月15日は「沖縄本土復帰40年」ですから、舞台は沖縄にしたいという思いがありました。さらにあれこれ取材した結果、大阪の大正区には沖縄から移住されてきた方が長く住んでいらっしゃるということで、宮古島と大阪を舞台にしようと決めたんです。
遊川:
結果的に、宮古島でよかったよね。ヒロインは宮古島育ちって聞けば、「なんくるないさぁ〜」が似合う穏やかな人というイメージがあるのに、実は違う。すごく強いんだ。そこに「宮古島で育ったのになんで?」という疑問が湧いてくる。これが、ドラマづくりなんですよ。分かりますか?(と、いたずらな表情で笑う)。
一同:
(大笑)。
脚本家・遊川和彦 画像
遊川:
ヒロインの純は親父の育った大阪に生まれて、やがて母親の故郷である宮古島にわたります。彼女は宮古島でどんどん影響を受けて、太陽のような明るい女の子に育つんです。でも、根本には親父から受け継いだ大阪の血も流れている。だから人に臆さず問いかけたり、何かを突き詰めたり、見ている側がハラハラするようないろんな面を持っているわけです。
 まぁね、脚本を書く側の僕としては、何かを好きで懸命に生きている人間がいてほしいんですよ。僕が「ドラマが好きなんだ!」なんて言ってるようにね(笑)。今回、大阪と宮古島というミックス感が、キャラクターの魅力にうまく作用したんじゃないかと思いますね。
梛川:
そもそも結婚という男と女が一緒になること自体、ふたりがミクスチャーして新しい何かが生まれることだから。
遊川:
そうやって人間は変わるし、成長するもんだと思うんですよね。異質なものが混じる時、そこにはいろんなエネルギーが生じる。ぶつかり合って、認め合って、また反発し合って…。最終的に本当に分かり合えるのか、確信を得ない悲しさもある。それこそがドラマだと思うんです。
 ただ、今回のドラマは、決してこれまでの連続テレビ小説っぽくない(笑)。本当にこれで後悔していないのか?って聞きたい時はあるんだけど…、まぁそこは放送が始まってから、また三人で対談でもしますか(笑)。

【⇒インタビュー後編はこちら】

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