小泉内閣が、アメリカによるイラク及びアフガニスタン侵略戦争を全面的に支持し、莫大な資金援助（さらに自衛隊派遣まで）を盲従的に行って以来、私はこれまで日本に対して何の反感も抱いていなかったイスラム圏の人間を敵に回してしまう危惧を抱き続けてきた。
当ブログでもこれまで幾度か斯様な危険性を告発してきたのだが、今回のアルジェリア事件で日本人の犠牲者が二桁に上ったことから（これまでも日本人はイラク侵略戦争以降イスラムテロリストに殺害されてきたが、少数だったので政府は無視してきた）、流石に大手マスコミも本腰を据えて斯様な状況を報道し始めたようだ。
アルジェリア東部イナメナスの天然ガス関連施設で起きたイスラム武装勢力による人質事件で、事件発生翌日の１７日、日本人を含む外国人の人質が武装勢力によって施設のプラント区域に向けて複数の車で移送される際、国籍別に車に分乗させられていたことが分かった。
人質となった「日揮」スタッフのフィリピン人男性３人が２５日、アルジェで読売新聞に証言した。日本人の人質は、移動の車列の先頭の車に乗せられていたという。証言によると３人は１６日早朝、施設の居住区域内で武装勢力に拘束された。３人が目撃した人質の人数と内訳は日本人７人、フィリピン人８人のほか、英国人、ノルウェー人、アイルランド人ら計３７人で、犯人に監視されながら区域内の噴水のある広場で一夜を過ごした。
１７日午後、軍の攻撃が始まると、武装勢力は人質に「日本人は名乗り出ろ」などと呼びかけて国籍別に分け、７台の車に乗せてプラント区域に移動を始めた。フィリピン人は２台に分けて乗せられた。車列の台数については４〜６台とする別の証言や報道もある。
(読売新聞 1月26日)
懸念されていたように、今回のテロ事件は当初から明確に「日本人」をターゲットにしていたものであることが、こうした証言から明らかになっている。
斯様な背景について、大手メディアはようやく日本の米国追従外交との因果関係を仔細に報じるようになったようだ。
もともとイスラム諸国と良好な関係を築いてきた日本が、アルカイダに名指しされたのは2003年10月のことだ。中東のテレビ局アルジャジーラが「日本へ報復する」としたオサマ・ビンラディン氏の声明を流した。その年の3月に勃発したイラク戦争で、日本は現地に自衛隊を派遣し、親米の姿勢を強く打ち出していた。そしてその翌11月、日本人外交官2人がイラク北部で武装勢力に銃撃されて殺害された。
04年には、01年の米同時多発テロの計画段階で、アルカイダが日本国内の米関連施設に対して、旅客機をハイジャックして激突させるテロを検討していたことが、米議会の独立調査委員会が公表した報告書で発覚した。韓国に対しても同様のテロを検討していたことが報告され、米の“息のかかった”国までもが無条件で標的になりえる現実が浮かび上がった。
「アルカイダにとって、日本人はすでに『十字軍の一員』なんです。今後、日本人は欧米人と同様に標的にされていく」と強く警告するのは、危機管理の専門家で、アルジェリアで石油プラント建設に従事した経験もある首藤信彦・前衆院議員だ。
「かつて日本人は、米国に立ち向かった唯一の民族として、アラブ社会で尊敬されていました。ところが、イラク戦争で米国の“下請け”と化したことで、テロリストのみならずアラブの一般社会からも敵意を抱かれてしまった。今回の事件で日本が大騒ぎし、政府が『人命優先』の姿勢を打ち出したことは、アルカイダにとって揺さぶりやすい国だと思われた。日本企業は、もっと警備に資金を投資すべきです」
(週刊朝日 2月8日号)
かつて小泉・自民政権が、米国に対して全面的に阿諛追従外交へとのめりこみ、かつ今の安倍政権もそれを継承していることの応報が今回のアルジェリア事件だ。
繰り返すが、小泉政権時代にも既に日本人犠牲者が出ているのだが、当時は政府とぐるになった読売・産経大手メディアが件（くだん）の「自己責任論」（＝実態は政府無責任論とよぶべきがふさわしい）によってそれらの事件を瞞着（まんちゃく）してきた。
これらは犠牲者が少数であったため瞞着しやすかったようだが、今回は犠牲者が二桁に上ったことと、かつ戦地ではなかったことで、やっと大手メディアもこの自民政権による米国隷属外交による危機を公に認めるようになったようだ（といってもいまだ読売と産経は厚顔無恥な無責任記事を書き続けているが）。
かくなる自民政府の認識の無さは以下の様に安倍首相の暴言からも伺いしることができるだろう。
「企業戦士として世界で戦っていた方々が命を落としたのは痛恨の極みだ。テロは決して許されない。強く私たちは批判していかねばならない。すべての責任はテロリストにある」安倍晋三首相は２２日の自民党役員会で最悪の事態となったアルジェリアの人質事件についてこう述べた。聞きようによっては犠牲者を冒涜することにならないか。
「企業戦士」とは高度経済成長期、家庭を顧みず身を粉にして会社に尽くすサラリーマンをたとえたものだが、テロの犠牲者となった邦人１０人のうちには派遣労働者もいる。出発前、家族には「日本では思うように働けない。外国に出るしかない」と話していたそうだ。職を求めてやむを得ず、アルジェリア行きを決断したのだろう。
何より「戦場」で起きた惨劇である。奪われたのは民間人の尊い命だ。彼らの無念の死に心至していれば、もっと違った言葉があったはずだ。
(「藤本順一が『政治を読み解く』」1月27日)
小泉がもたらした二極化不況政策までもが今回の犠牲者に多大な影響を及ぼしていたとは。小泉は日本の戦後史上最大の売国奴内閣としてやがて歴史に名を残すかもしれない。
さて昨日も紹介させていただいたが、現地で果敢な取材を行ってきたフリージャーナリスト・姫田小夏氏は、欧米諸国によって抹殺されたカダフィ大佐の真の役割及び存在感を西側マスコミの偏向報道と一線を画す実態を報告している。
部族が複雑に入り組むアフリカで、カダフィの存在は大きかった。アフリカの情報サイトである「Inform Africa」は、「アフリカの西側帝国主義からの解放とアフリカ諸国の発展のために、カダフィはリビアのオイルマネーを投じた」とし、アフリカ全土においてカダフィの評価は高いとしている。カダフィが君臨していた当時、リビアは輸出額の9割を原油が占め、原油の年間輸出額は422億ドルにも上っていた。そのオイルマネーは彼個人の懐にも蓄えられたが、全土にもばらまかれ、アフリカの発展に寄与していた。
モロッコを除くアフリカの全独立国が加盟する国家統合体「アフリカ連合」（African Union、略称AU）の予算は、その75％をカダフィが賄っており、アフリカ大陸の電話・テレビ・ラジオなど全体をローコストなネットワークで繋いだのも彼だった。アフリカ研究の第一人者であるジュネーブ大学のジーン・ポール・ポーガラ教授は、「アフリカの現代における改革をもたらした人物」と、その業績を評価している。
2010年、カダフィは西側の影響力を一掃するために、複数の国に計970億ドルもの資金を援助した。コンゴ、スーダン、エチオピア、ソマリア、ガンビア、リベリア、ニジェール、チャド、中央アフリカ共和国、モーリタニアなどがその対象で、マリ共和国もその恩恵に与っていた。
マリのホテルやオフィスビル、テレビ局などにもカダフィの資金が入り、実質、中心部の発展を支えてきたとも言える。また、カダフィは安全保障上の軍用機2機を納めるなど、闘争に弱い政府軍を側面から支援していた。また、カダフィはその資金力、権力、そして半ば狂気を帯びたカリスマ性で、アフリカの無数の部族を抑え込んでいた。アフリカ人たちはカダフィ亡き後に部族間の争いが再び顕在化することを懸念していた。それがついに現実のものとなり、北アフリカを中心に混乱が訪れた。
カダフィは極端に欧米を敵視し、嫌悪しているとも言われていた。アフリカではいまだ西欧諸国による植民地支配が実質的に残存しており、カダフィに限らず、アフリカ人たちは反欧米色が強い。
今回の事件は、カダフィ抹殺がもたらした間接的な負の遺産とも言える。西側の論理からすれば、カダフィは民主主義と相容れない独裁者だっただろう。だが、カダフィ亡き後のアフリカの混沌を欧米はあまりにも軽く見過ぎたのではなかろうか。筆者が取材したマリ政府関係者は最後にこう嘆いた。「欧米諸国は大きな誤りを犯した。結果として彼らは、イスラム過激派の勢力を拡大させることになった。カダフィはいつも言っていた。彼ら（欧米諸国）はいつか後悔するときが来る、と」統治者を失ったアフリカの混迷はますます深まるばかりである。
（JBPRESS 姫田 小夏 １月２９日）
穿った見方をすれば、欧米諸国はかつて自国の植民地であったアフリカのリーダーシップをカダフィに任せておくのが不愉快だったのではないだろうか。かつアフリカ諸国が混沌・阿鼻叫喚としている状態のほうが、欧米諸国の主要産業の一つである武器輸出政策が思う存分できるため、カダフィの存在は邪魔だったのかもしれない。
「アラブの春」などかつてシナがチベットを征服したとき使用した「解放」と同意義であることがこれで証明された。
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イスラムの怒りはもっともだと思います。日本政府が異常なのです。ブッシュがイラクに攻め込めと言っても、行く必要はありませんでした。
ドイツも、行っておりません。行こうと言っていた候補者が大敗して、『貴重なドイツ人の血を流させない』と公約したシュレーダーが圧倒時勝利で再選されましたから！ そして、アメリカは ドイツに対して 何の報復もしておりません。アメリカの誘いに乗らなかった国の中で、たとえ一国でも、アメリカに報復された国はありません。日本も行くべきではなかったのです。しかし、行った。だからイスラムに報復される国・人になったのです。自業自得です。
１９７４年、上智へ進学するために上京した私は前代未聞のトイレット・ペーパー不足を経験しました。テレビは早めに放送終了。アラブの有力者を招き、若く美しい日本女性を侍らせ何とか石油を売っていたただこうとしていると聞きました。
当時の方がマシだったと思います。
今、アラブは、石油販売を戦略的に使わないのでしょうか？
既に、米英に利権として、石油は奪われてしまったのでしょうかねぇ。
2013/2/3(日) 午前 8:49 [ トンビ母 ]
ビルトッテン氏が90年代に日本がイスラムの標的と言う事を指摘していました。湾岸戦争にカネを出した事についてですが、それから21世紀になったら残念ながらそれが現実となりました。
911みたいなことが日本で起こってほしくないですが、そうでもしないと気づかないのか、と暗澹たる気持ちになりますね。
傑作&TBします。
2013/2/3(日) 午前 9:17
トンビ母 さん
仰せのように歴代の対米隷属外交を国是としてきた自公政権が狂信的でした。
ご指摘のようにイラク侵略戦争のおり、欧州の主要国はイギリスを除いて反対し、出兵していませんでしたね。欧州だけでなくロシアやシナも同様ですが、その結果アメリカがロシアやシナに圧力をかけたという話は聞いておりません。
そしてNAFTA協定を結ぶなど世界で最もアメリカと緊密なカナダもまた出兵を拒否しました。
厳密に言えば報復といえるかどうかわかりませんが、精神的な抵抗をそうした欧州やカナダにした程度です。フランスに対しては一時期「フレンチフライ」という呼称を廃して「フリーダムフライ」にするとか、またカナダに対しては「カナダドライ」の不買運動をするなどという、ほとんど抗議にもならない瑣末で無駄な抵抗だけしたね。ちなみにカナダドライはオーナーが同盟国のイギリス人だったので、政府やメディアは即その運動をやめるよう呼びかけましたが。
2013/2/3(日) 午前 10:16
トンビ母 さん
たしかに日本以上にアメリカとの関係に恩恵を受けているカナダに対してアメリカはこの後しばらくだけ冷めた帰還がありましたが、なんとオバマが大統領に就任すると世界最初の訪問先としてカナダを選び、アメリカのほうから和解を呼びかけてきたのです。
一方アメリカに徹底して操を尽くした日本には、国務長官どまりでした。これが対米隷属外交の答えとは日本も情けない国になりさがってしまったものです。
そのうえイスラム諸国の聖戦？相手とされてしまったのですから、いかに小泉・自公政権が視野狭窄で遠謀深慮など微塵もない外交をしてきたか立証されたようなものです。
2013/2/3(日) 午前 10:19
トンビ母 さん
１９７４年のオイルショック（それに便乗してトイレットペーパー騒動が起きましたが）は、中東戦争の拡大版とも言える事態でしたね。
欧米主要国はイスラエル支持でしたし、当時も日本はアメリカの子分的役割を担っていましたから、アラブ側とすればイスラエルに味方する国は一網打尽に原油制裁の対象だったのでしょう。
それであわてた日本政府は急遽アラブ諸国に媚びる外交政策に転換し、日本とアラブの友好政策を促進していきました。ご指摘のような接待もその一環だったのでしょう（この接待については寡聞にて存じませんでしたが）。
しかるにその結果今度は世界のユダヤ人を敵に回してしまったため、彼らに陰で教唆された東南アジア・シナ系住人による日本製品ボイコット運動が東南アジア諸国で吹き荒れてしまいましたが。
2013/2/3(日) 午前 10:25
千葉日台さん
私も当時彼の著書を読み驚愕しました。しかるにそうした論調を大々的に述べた大手マスコミは少なく、二回目のイラク侵略のときはさらにトーンダウンしてしまいました。
一回目は日本はアメリカに恫喝されて仕方なく、金銭だけ提供したということが国際的にも周知されていたし、日本国内でも反対世論が多かったためこの時はアルカイーダはまだ沈黙していました。
しかるに小泉政権下の２００３年のイラク二回目の侵略戦争の折には、小泉はむしろ果敢そして献身的なほど自ら率先してこの戦争に加担していきました。しかもこの時は前回の侵略時とは異なり、大義名分がないため主要国の中でも反対もしくは同調しない国が数多くあるなかでだったため余計に日本の存在が目立ちました。
そのうえこの時は土木工事限定とはいえ国軍である自衛隊まで派遣してしまったのです。これではアルカイーダに敵国視宣言されるのは確実でした。
2013/2/3(日) 午前 10:36
千葉日台さん
その後幾人もの日本人が彼らに殺害されていますが、イラク国内だったためマスコミも「自国責任論」なる不可思議な論を主張してもみ消しました。しかるに今回のように紛争地でもないアラブ諸国で日本人の犠牲者が大量にでるような事態まで悪化してきたためようやく多くの日本人が今の日本の立ち居地を確認しはじめたのでしょう。しかし安倍政権が小泉の対米隷属外交を踏襲し続ければ必ず第二第三の被害が起こることでしょう。
ナイスとトラックバックを感謝します。
2013/2/3(日) 午前 10:36
イスラムテロリストのターゲット！
日本は危険やな。アメリカの巻き沿いはアホらしい。
☆
2013/2/4(月) 午前 9:43 [ 北一代 ]
北一代 さん
本来はイスラムに縁も縁もないに等しい状態だったのに、小泉売国奴自民政権がアメリカ隷属外交を臆面もなく強行に推し進めた結果、彼らの敵に日本をしてしまったのです。
ナイス感謝します。
2013/2/4(月) 午後 3:34