CGディレクターの宮原直樹さん。最初の挨拶で「いつも見ています」と言われました。いろいろなところで書いているプリキュア記事をたくさん読んでくれているそうです。ありがとうございます!
俺は「プリキュア」が好きだ。でもなぜ好きなのかが自分でもよくわからない。その理由を探るために、いろいろな方たちに「プリキュア」ができあがるまでの話を聞いてきた。webマガジン幻冬舎ではプロデューサーの鷲尾天さん、「プリキュアオールスターズDX」シリーズの監督、大塚隆史さん、脚本家の村山功さん。音楽の佐藤直紀さん。「なかよし」で漫画版「プリキュア」を担当している上北ふたごさん。
じつはこれらの取材がきっかけになって「プリキュア5をつくったひとたち」(仮)というインタビュー集をつくることになった、来年2月発売予定。その本のために、今年の春からスタッフや声優のみなさんに話を聞いたので(総勢25人以上!)、「かなり網羅できんじゃないか?」と思っていたけど、それは甘かった。近年のテレビシリーズ「プリキュア」、エンディングで特に欠かせないものといえば、そう、CGだ。
2011年8月から、池袋サンシャインシティや埼玉県むさしの村などのイベント会場の一スペースで上映されていた「プリキュアオールスターズDX 3Dシアター」。歴代プリキュア22人が3DCGになってダンスライブを開催!
「プリキュア」シリーズにCGが導入されたのは「フレッシュプリキュア!」(09〜10年)から。CGでダンスするプリキュアのエンディングムービーは好評で「ハートキャッチプリキュア!」(10〜11年)、「スイートプリキュア♪」(11年〜)でも続いている。「プリキュア」大集合映画「プリキュアオールスターズ」シリーズでもCGになったプリキュアたちを見ることができる。
今回は、「フレッシュプリキュア!」「映画プリキュアオールスターズDX1」、そしてシリーズ最新作「スイートプリキュア♪」のCGを担当している宮原直樹さんにCGになったプリキュアたちの魅力と動かし方、2Dとはどう違うのか。そして「3Dシアター」はどうやってつくられたかを聞いてきた。鷲尾天プロデューサーにも同席していもらい、企画の成り立ちから教えてもらった。
宮原さんのイメージメモ。右上に注目!
「3Dシアター」は現在愛知県にある日本モンキーパーク。和歌山県の和歌山マリーナシティ、ポルトヨーロッパ内で上映中! 主題歌CDは発売中。特典映像付き DVD/ BD「プリキュアオールスターズDX the DANCE LIVE〜ミラクルダンスステージへようこそ〜」は11月25日発売!
──(イメージメモを見ながら)これなんですか(左図参照)?
宮原 ハミィです!
鷲尾 「にゃー」って書いてありますね(笑)。
──「スイートプリキュア♪」の妖精ハミィはもっとかわいいですよ、ふつうの猫じゃないですかー。
宮原 ハミィはヒゲがなかったんですね。あと額にハートマークがあったかなあって、イメージだけで書いてます。
──あ、ほんとだ。ヒゲがないんだ(ほんもののハミィはこちら)。気づかなかった(笑)。「プリキュアオールスターズDX 3Dシアター」では歴代プリキュア22人がCGになってダンスをする。22人ものCGをつくるのは大変そうですね。
宮原 「フレッシュプリキュア!」(09〜10年)から「プリキュア」のエンディングはCGでダンスをするという流れになっていたので、すでに素材はあったんですよ。それ以前の「ふたりはプリキュアMaxHeart」(05〜06年)「ふたりはプリキュアSplashStar」(06〜07年)「Yes!プリキュア5GoGo!」(08〜09年)のプリキュアたちは「プリキュアオールスターズDX2」(10年)のエンディングのときにCG用にモデリングしました。
──すでにほとんどのプリキュアのモデリングはもうできてたんですね。宮原さんは「プリキュア」テレビシリーズのCGも担当しているんですか?
宮原 「フレッシュ」と「スイートプリキュア♪」(11年〜)をやっています。「スイート」のテレビシリーズでもエンディングでCGになっているので、主人公のキュアメロディとキュアリズムのモデリングもできあがっていました。ちょうど「スイート」のエンディングにキュアビートが出るタイミングだったので、3Dシアターとテレビシリーズを並行に作業をしていました。
──ええー、いっしょにやるなんて大変ですね。
宮原 まあね。でも「3Dシアター」用に新しくつくったのはキュアビートってだけってことなんですよ。
よくみるとSDのふたりとモニタに映っているふたりの動きがシンクロしている。
「ふたりはプリキュアMaxHeart」。左からキュアブラック、シャイニールミナス、キュアホワイト。
「ふたりはプリキュアSplash☆Star」。左からキュアブルーム、キュアイーグレット。
宮原直樹(みやはら・なおき)PROFILE
1965年12月23日生。東映アニメーション所属。「ドラゴンボールZ」で作画監督を担当し「デジモンアドベンチャー」では総作画監督を務める。「ロボディーズ」ではキャラクターデザインとして参加。「フレッシュプリキュア!」から「プリキュア」シリーズに参加し「スイートプリキュア♪」「プリキュアオールスターズスターズDX2」などでCGディレクターを担当している。「プリキュアオールスターズDX 3Dシアター」では、監督を務める。
──キュアビートが登場したのが7月の放送で「3Dシアター」も8月から各イベント会場で公開だから、時期が一致しているんですね。そもそもなんで「3Dシアター」をつくることに?
鷲尾 「プリキュアオールスターズでイベント用の3D映像を作らないか」という話が社内で出たんです。TVシリーズのエンディングや「プリキュアオールスターズDX」などの映画でのCGキャラクターのダンスのイメージが良かったからでしょうね。
宮原 「じゃあやりましょう」って鷲尾さんを中心に始まったんです。しかし、今回のやり方には驚いた……。
──どういうことですか?
鷲尾 音楽ディレクターの藤田昭彦さん、作詞の只野菜摘さん、作曲の大石憲一郎さん、振付のプランニング遊の清水さん夫妻、そしてCG部からは宮原さんなど、10人前後かな? 主要な関係者が集まって打ち合わせをしました。
宮原 ふつうは職種の違う人が企画会議で顔を合わせたりしないんですよ。別々に分担して作業を進めていくんです。
──そうなんですか。それは画期的ですよね。
宮原 だいたいバラバラに発注するんですよ。さいしょに音楽をつくって、それを振り付けの人に渡してダンスのイメージをつくってもらう。そこからモーションキャプチャーをとって、それを流し込んだCGのキャラクターのイメージを合成して完成という流れです。
鷲尾 ひとつずつ作業をすすめていく方法だと、最初に仕事が終わったらあとはもうなにもすることがない。そうではなく、全員に最初から関わってもらい、いろんなパートからやりたいイメージやアイデアを出してもらいたかった。たとえば振付の清水さんからは「プリキュアたちにこれまでとは違ったリズムのダンスをさせてみたい」とか、作曲の大石さんからは「CGで巨大なステージを観てみたい」とか。
宮原 CGディレクターの中沢大樹さんがフェスやライブをすごい観ている人で、「こういう曲のときはこういうステージが多いですよ」ってステージや曲の構成は相当アイデアを出してくれました。僕は「うんうん」って。
──それまでのやり方だと各パートでできあがったものを使っていくところを、今回は元から全部つくりあげていった。会議はどんな内容でした?
鷲尾 「フルCG映像でプリキュアたちのダンスをショートストーリー仕立てにしたい。ダンスを際立たせたいから、ストーリー部分はサイレントにしたい」ということから話していきました。
──映画館やプリキュアミュージカルでもダンスで大盛り上がりしていますもんね。
宮原 「『プリキュア』のダンスは子どもたちに受けているけど、ダンスだけの映像だと飽きちゃうんじゃないか」ってすごい心配していましたね。
鷲尾 そう。踊りだけだと「きれいな映像」で終わっちゃうけど、ストーリーがあると心に響くし、何度でも観たくなる。演出次第で面白くできるんじゃないか、と思ったんです。あとはみんなでいろんな話をしました。「曲は映画プリキュアオールスターズの主題歌を中心に」「曲順はライブステージらしい順番にしよう」「メドレーにして、元の曲から大胆にアレンジしてみたら」「新曲は『オールスターズ感』全開で」「プリキュアらしさを出しながら、これまでチャレンジしたことのない踊りを」「CGでどこまでライブ感を出せるか」。2ヶ月間いろんな角度から、とにかくずっと話し合っていました。
──すべて並行作業で進めていったんですね。ダンスとサイレントのストーリーにするというのは最初から決めていたんですか?
鷲尾 そこは企画段階で自分のなかでは決めていました。ダンスはCG映像が映えると思っていたし、サイレントのほうが動きのかわいらしさが強調されるんじゃないかと思っていましたから。タイムテーブルとしては、ハミィによる3Dメガネの説明が1〜2分、プロローグが2〜3分、ダンスシーンが7〜8分。残りの時間でエピローグ。宮原さんに「メインをダンスにして、プロローグとエピローグをサイレントムービーにして動きだけで楽しい映像はできないか」と相談をしていました。
宮原 あれ、してましたっけ。
鷲尾 しましたよ!(左一番上のイメージメモを見ながら)ほら、大まかなイメージもあります。
宮原 あー、思い出した。「サイレントムービーの時間によってはダンスシーンの尺も変えます」って言ってた。
おもちゃ屋に陳列されていたキュアメロディ。お店を出て自由に動き回る。
自分だけかと思ったらリズムも!?
「Yes!プリキュア5GoGo!」。左からキュアミント、キュアルージュ、ミルキィローズ、キュアドリーム、キュアレモネード、キュアアクア。
──サイレントムービーのアイデアはどこから?
鷲尾 (DVDを取り出し)これです。
──ピクサーのショートフィルム?(「ピクサー・ショート・フィルム&ピクサー・ストーリー 完全保存版」)。
鷲尾 はい。ピクサーのCG映画はかならず最初に短編がついていて、ほぼサイレントなんですよ。これがすごい好き。
──そういえばピクサーも小さいキャラクターたちがちょこまか動いていますよね。あれが元だったのかあ。
鷲尾 子どものときに「トムとジェリー」「ロードランナー」みたいな、動きだけで笑わせる作品をたくさん観ていたというのもあると思います。深夜のおもちゃ屋さんで人形が動き出し、誰かに誘われるようにステージに行って踊りだす。そうすることによって、おもちゃ屋やショッピングモールの雰囲気が変わる、というおおまかな説明をしました。
宮原 まったく簡単に言ってくれます。鷲尾さんはいつもそう(笑)。
鷲尾 CG部のみなさんはきっとピクサーに負けないくらいの強い意志と粘り強さがありますからね(笑)。
宮原 冒頭のキュアメロディとキュアリズムのSDキャラクターの動きは「ロボディーズ」がかなりベースになっています。
──えーっと、フルCGアニメのでしたっけ。
鷲尾 私は製作に関わってはいないのですが、「ロボディーズ」はディズニー・ジャパンと東映アニメーションが共同製作した作品で、1話2分半という短さの中でキャラクターの動きの面白さを徹底的に追求しています。宮原さんもキャラクターデザインと演出で参加していますね。シリーズディレクターは「ドラゴンボール」や「ふたりはプリキュア」(04〜05年)の西尾大介監督。これはものすごく面白いですよ。
宮原 僕の中で「3Dシアター」は「ロボディーズ プリキュア編」ですよ。
──そうなんですか。
鷲尾 プロローグでキュアメロディが腕を組んで考え込むポーズとかは明らかに「ロボディーズ」の雰囲気ですよね。女児向けキャラクターはああいうポーズは普通しません。「3Dシアター」のSDキャラは明らかに少年の動きをしているんです。
──女の子だからとかは関係ない。
鷲尾 動きとして面白いことをやっていましたよ。
宮原 「ロボディーズ」でもそこを追及していました。地球を侵略しに来ているキャラクターたちが、律儀に信号を守って横断歩道を渡らなかったりする。観ている方はそれだけで笑ってしまう。あれは西尾さんの特徴だなあ。
鷲尾 「3Dシアター」にはそこはかとなく「ふたりはプリキュア」や「ロボディーズ」のテイストがあります。
宮原 僕は「ロボディーズ」の演出もやっていて西尾さんとはよくご飯を食べに行っていました。すぐ「『プリキュア』とはね……」って話をするんですよ。僕は「フレッシュ」から参加しているんですけど、西尾さんのおかげで直接参加していなくても「プリキュア」がどういうものかなんとなくわかっていたんです。
「スイートプリキュア♪」。左からキュアビート、キュアメロディ、キュアリズム。なめらかに動く髪の毛が今回の発明!
ブーツとスカートからも目が離せない。
鷲尾 天(わしお・たかし)PROFILE
1965年9月16日生。秋田県秋田市出身。商社、出版社、秋田朝日放送を経て、1998年に東映アニメーション入社。「キン肉マンII世」や「釣りバカ日誌」を手がけ、2004年に「ふたりはプリキュア」を立ち上げる。2008年「Yes!プリキュア5GoGo!」まで5年間「プリキュア」シリーズのプロデュースをする。「映画プリキュアオールスターズDX」シリーズでは全作プロデューサーを務める。「プリキュアオールスターズDX 3Dシアター」でもプロデューサーを務める。
──22人のプリキュアを動かしていて大変だったこととかは。
宮原 やっぱり頭身ですね。22人並べてもおかしくないように調整しています。
──以前「DX」シリーズの大塚隆史監督に話を伺ったときも頭身のバランスは気をつけたと言っていました。
鷲尾 「MaxHeart」や「Splash☆Star」もバランス調整をしていましたね。
宮原 しましたね。その2作品は顔と手足が大きいのが特徴なんですけど、22人並べるときにはひとまわり小さくして、頭身も高くしました。でも、特徴的な部分はなるべく残したかったので、足は大きいまんまです。
──ブーツがふっくらしていますね。
宮原 あとひらひらが大変でしたね。
──ひらひら?
宮原 髪の毛やスカートがひらひら揺れるところですね。キャラクターの動きからちょっと遅れて揺れる。その方が自然な動きになるからなんですが、「DX2」まではぜんぶ手作業でやっていたんですけど、今回はかなりの部分がオートでできるようになりました。
──より自然になった。
宮原 はい。「スイート」のエンディングではじめてこの機能を使って「これはいけるぞ!」って、今回は全員に適用しました。それまではほんとに1本1本手で髪の毛を動かしていたんです。シャイニールミナスとかほんとにめんど……、あ、これは言っちゃいけないね。
──ははは。髪の毛ってどうやって動かすんですか?
宮原 手に関節があるように、髪の毛にもひとふさずつ骨を通すんです。
鷲尾 骨を通して、それぞれを独立させて動かす。クレイアニメを想像するとわかりやすいかもしれません。
──コマ撮りの?
宮原 クレイアニメよりはやりやすいですけど、ある程度テレビアニメの原画と動画の関係と同じかもしれない。キーとなるこの絵とこの絵の間はどう動くのかとか。それをひとつひとつ手作業で。
──へええ、CGってもっとボタンひとつでできあがるイメージがありました。
宮原 ボタン一発ポーン! の世界に近づいていますね。ってそんなに簡単な話じゃないですけど(笑)。
──かなり作業が省力できているんですね。
鷲尾 「髪の毛ふさふさソフト」みたいなのが開発されたんですか?
宮原 うーん、それいいですね(笑)。スタッフの技術力が上がってきているおかげですね。そうだ、その状態を観てみますか。ちょっとそのシーンをモニタに映せるかな? あ、櫻井正樹くん、うちのスタッフです。
櫻井 はい、しばしご歓談を。
──よろしくお願いしますー。
宮原 お、出ましたね。これが髪の毛が動いていない状態。
──ほんとだ、キャラクターは動いているのに髪の毛は固いままだ。
宮原 ここから髪の毛を動かしたり、色をつけたり表情をつけたり……。
鷲尾 どんどんお化粧をしていくんです。
──あ、なるほど。
宮原 このお化粧前の状態をアニマティクスモデルと言います。
──2010年8月に行われた「東映デジタルセンターOPEN記念セミナー」で聞いたんですけど、「DX2」のときはキャラクターをかわいくみせる「お肌ぴちぴちレイヤー」を開発したんですよね。
宮原 しました(笑)。今回もつかっています。
──そういう発明が今回は髪の毛ふさふさソフト?
宮原 そうですね。いろいろなことが省力化してつくれるようになっています。
パチっとウインク。チョーカワイイ!
キュアレモネードもアイドルスマイルでウインク!
加藤レイズナ(かとう・れいずな)PROFILE
1987年9月11日生。フリーライター。「エキサイトレビュー」レギュラーライター&編集。Web幻冬舎「実況野郎Bチーム」でインタビューの面白さに目覚める。日経ビズカレッジ「ゆとり世代、業界の大先輩に教えを請う」」、3月2日発売「プリキュアぴあ」に参加。NHK-BS2「MAG・ネット」のプリキュアシリーズ特集に出演。現在「プリキュア5」シリーズ本製作中! 製作者たちへの怒涛のインタビューで突き進んでいます。小社より2012年2月発売予定、よろしく!
Twitter:@kato_reizuna/加藤レイズナの仕事一覧/ブログ
──「セミナー」ではスカートの中をいかに映さないかが大変と言っていたのを覚えています。
宮原 うん。でも最近はAKB48とかが普通にスカートの中を見せているし、スパッツがうつるくらいなら大丈夫じゃないかな? って思ったんです。でも女性スタッフから「ダメ!」って言われちゃった。
鷲尾 シームラインとかがみえるのはやっぱり気になるみたいです。女性が気にするんだったらやめたほうがいいなと。
宮原 人間としてリアルにつくってあるからちょっといやらしい線にみえちゃうんですよね。
鷲尾 そうそう。それがCGの難しいところなんです。きちんと立体感をもってモデリングするから、ふくよかになってしまう部分も出てくる。アクションをしたときにお尻のラインが見えてしまったり。
宮原 それを隠すために意図的にスカートを抑えて動かしています。
鷲尾 特に「プリキュア5」のキャラクターはスカートのボリュームが大きいので、ひらひらしているのをぐっと抑えてもらっています。
──お化粧で表情をつけるときに苦労するところってありますか?
宮原 うーん。まばたきをするとき、あまり生々しくならないようにかわいくしようとは意識しています。あと、表情をつけるスタッフには「ウインクをやりすぎちゃダメだからね」と最初に言ってます。
──ウインクいいですよね。
宮原 「DX2」のときもそうだったんですけど、キャラクターを担当している人がそれぞれ違うので、みんなすきあらばウインクさせちゃう。かわいいからついやっちゃうんです。
鷲尾 「今回は抑えてね」っておっしゃってましたね。
宮原 そうそう。でもダチョウ倶楽部の「絶対に押すなよ!」のネタみたいに「絶対にウインク入れろよ!」だと思っているのか、今回もパチパチパチパチ(笑)。
──そういえば「3Dシアター」でも多かった。
宮原 みんな自由にウインクしちゃう。「あーもーしょうがない! かわいいから採用!」って。
──そういえば、つり目系のキャラの目がちょっと下がっていたり、眉毛のカーブがやわらかくなっている雰囲気を感じたんですけど。
宮原 マジですか?
──うーん、気のせいですかね。
宮原 いや、絵に描いたものよりまるく感じるってのはあるのかもしれません。
鷲尾 立体的な印象がありますからね。ダンスシーンなので、全体的にやわらかい表情にはしています。
──プリキュアたちが踊っていたステージにモデルってあるんですか?
宮原 ステージそのもののモデルは味の素スタジアムです。もちろんかなりアレンジしているので、ほかのいろんなスタジアムも参考にしています。
鷲尾 ショッピングモールの吹き抜けを大スタジアムのライブ会場にしたいって話をしていましたね。実際に出来上がった映像を見ると観客は10万人規模で、どれだけ広いんだと(笑)。
宮原 サッカーのヨーロッパチャンピオンズリーグとかスタジアムをいろいろ見ながらね、どこがいいかなーって考えてました。
──「DX2」のときの参考モデルは日本武道館じゃないですか?
宮原 そうです。
鷲尾 「DX2」でアリーナスタンド、「3Dシアター」ではスタジアムライブ。次があったらどうなるんでしょ。日比谷音楽堂かな(笑)。
──どこだろう、楽しみです。只野菜摘さんが「ももいろクローバーのライブが好き」だって話をしていたんですよね。実際のコンサートとかも参考にしています?
宮原 女性スタッフはどういうステージがかわいいかをずっと考えてくれていましたね。それぞれライブビデオを観たりね。浜崎あゆみとか。あと、パフュームも人気があってDVDを持ち寄っていました。
──AKB48とかは?
鷲尾 意外にもAKB48の話はあまり出ませんでした。私は毎年年末に東京ドームでやっているジャニーズのカウントダウンコンサートの話をしました。
──そうなんですか! 毎年観ていますよ。
鷲尾 カメラワークをすごい駆使しているんです。あれは構成するのが大変だろうなあって話をしていて。
──そこの関係先でバイトをしていました。ディレクターとお話したこともあります。
鷲尾 え、ほんとですか! クレーンカメラ何十台もつかってるでしょ、あれ。
──大変そうでした。
宮原 あんな大きいモニターどうやって仕込むんだろうとか(笑)。年末は紅白を観てジャニーズのカウントダウンコンサートを観てネタを仕入れていました。
──そうやって完成したのがあのステージなんですね。
宮原 舞台をつくったはいいけど問題点もたくさん出てきたんですよ。ステージを照らしているはずのライトがうつっていないとか。
──どういうことですか?
宮原 ステージの下から照らすフットライトってカメラワークによっては照明器具が大きく映り込んで邪魔になるんですよ。だから画面から消してしまった。照明器具がないのにキャラクターに光が当たっているんですよ(笑)。
鷲尾 逆にライトの光がキャラクターカラーと干渉してしまうこともありましたね。ブルーライトとかね。
宮原 最初はもっとブルーライトを強く反映させたシーンもあったんです。
鷲尾 でもキャラクターにライトの光が当たると色が合わさってしまい別の色に見えてしまう。シャイニールミナスが緑色になっちゃったり。
──そこはあえて表現してないんですね。
宮原 あとは、ステージのフロアもがんばりました。
鷲尾 手間をかけてもらいましたね。フロアがピカピカの鏡面なので、そのままにしておくとスカートの中が映りこんでしまう。
宮原 「DX2」のときはその映りこみを消すのが大変でした。でもテレビの「スイート」のエンディングでディテールをゆらゆらさせるにじみのある反射を採用したんです。歌番組を観るときれいに映っているというよりも、ぐにゃぐにゃしているじゃないですか。ああいう感じでごまかせるんじゃないかと思ったんです。
──ほんとだ。フロアはピカピカなのに映り込みはぼかされていますね。
「フレッシュプリキュア!」。左からキュアベリー、キュアパッション、キュアピーチ、キュアパイン。
「フレッシュ」の4人は別のステージへ移動中。
■歴代プリキュアが走り出すシーン集。一瞬なので見逃さないように!
(下から2枚目)「ハートキャッチプリキュア!」左からキュアマリン、キュアブロッサム、キュアサンシャイン、キュアムーンライト。母の心で見守るキュアムーンライト。
──「MaxHeart」から「スイート」まで6シリーズのプリキュアたちが入り交じって踊っています。シリーズごとに特徴をつけようとこだわったことは?「DX2」では「Splash☆Star」のキャラクターが動いたら星がキラキラ飛び散っていました。
宮原 「Splash☆Star」は「DX2」のときはキラキラしてたけど、「3Dシアター」だと1カットくらいかな。あとは「フレッシュ」のチームが前面に出るようには意識しています。
──ダンスをずっとやっていますからね。
宮原 そうそう。このステージをつくるときに、彼女たちが中心になって振り付けをしたんじゃないかなーとかを考えて画づくりをしていました。
──「フレッシュ」のソロコーナーとかありますもんね。ヒップホップで。
宮原 ヒップホップってリズムの取りかたが違うから、曲をアニメ映像に当てはめていくのに苦労しました。はたしてこれで合っているのか、自信なかったですね(笑)。
鷲尾 カット割りも相当考えていましたよね。
宮原 かなり考えました。「ハートキャッチプリキュア!」(10〜11年)と「スイート」のメンバーで踊るシーンがあるんですけど(左図参照)、あそこは本当は「フレッシュ」もいたんですよ。でも、すぐ次のカットで「フレッシュ」は別の場所で踊っているんです。あ、それじゃおかしいよなと思って消したんです。
──ああー、そこはリアルなんですね。
宮原 そういうカットはいくつかあります。こだわってみたけど、あんまり意味なかったかな。
鷲尾 いやいや、こだわらないと「おかしくないか?」と矛盾を感じちゃいますからね。本物のライブステージを参考にしているのはこういうところに反映されているのかもしれないですね。生身の人間だと移動する時間の短さで観衆をびっくりさせられるけど、CGではそうはいかない。
──たしかにどんなに大胆に位置を動かしても、誰もびっくりしない。だから逆に、細かいリアリティで裏打ちする、実際らしさ、を積み重ねていったんですね。
宮原 わかっていただけてよかった。
鷲尾 かなり大変な作業をやっていただきました。キャラクター的にはシャイニールミナスはあまり前に出て踊っていないんです。はっちゃけて踊らせるのはどうなのかなと思ったのでおとなしめですね。
──「DX2」のときもおとなしかったですよね。キュアブラックとキュアホワイトが飛んでくるのを待っているというか。
鷲尾 あと、それぞれのシリーズのメンバーごとにステージに向かって走るシーンがあるんですけど、キャラクターらしさが出ていると思います。
宮原 プリキュアのダンスは、ぜんぶ実際にやってもらってキャプチャーしてるんですよ。走るシーンもすべて生身のアクターが担当してるんです。
──ですよね! ぜひモーションキャプチャーの話も聞きたいです。
宮原 あ、加藤さんキュアルージュ好きでしょ。ここはキュアルージュこだわったんですよ。
──な、なんでそれを!?
宮原 ちょっと下調べをね……。
鷲尾 元気よく、でもあまり野蛮な走り方にしないでとお願いしました(左図参照)。
宮原 ここはみんなキャラクターになりきって走ってくれていましたね。キュアムーンライトは「母の心で走ります」って言っていました。
──母? どんな走りだったでしょう?
鷲尾 ではそのシーン観てみましょうか。「3Dシアター」、全編通してみましょうか?
──いいんですか。観たいです!
鷲尾 おや? こんなところに3Dメガネがありますよ。
宮原 いいですね。観てから話しましょうか。櫻井くん、お願い。
「3Dシアター」映像を観ているときはみんな(鷲尾さんも)黙って鑑賞会になっちゃいました。
「プリキュア」は大好きだけどCGにはまったくの素人の加藤レイズナが、必死に聞き出してきた制作秘話、いかがでしたか? 後編は振付やモーションキャプチャー収録の裏話、本編でのCG使用の話が中心になっていきます。「レインボーローズ」の無茶ぶりの話とはいったい!?
「お前の目玉は節穴か」では、おもしろい取材企画を募集しています。ブログなどで具体的に企画をはじめているかた、道場破りもありです、ぜひお問い合わせください。プロアマ問いません。編集担当のツイッター @kaerubungei までどうぞ。