再生エネ固定価格買い取り制度:検証/中 送電網、相次ぐ接続拒否
毎日新聞 2013年04月12日 東京朝刊
発電所でつくられた電気は、電力会社が所有する送電網を通って私たち消費者に届けられる。新規に参入する太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用した電気も、供給には送電網の利用が不可欠だ。今、この送電網への接続問題が、再生エネ拡大を阻む大きな要因となっている。
●ボトルネック
津軽海峡を隔てて青森県・下北半島と向かい合う北海道函館市に、巨大スピーカーのような三つの建物がそびえる。「Jパワー」(電源開発)の海底ケーブルの端末だ。東京電力福島第1原発事故後の電力逼迫(ひっぱく)時、ここを介して北海道と本州間で電気を融通し合った。ところが、ここが再生エネ拡大の「ボトルネック」となっている。
環境省などの試算によると、北海道には太陽光と風力による発電を開発する余力が約2850万キロワットあるとされる。毎冬500万キロワット台の道内ピーク電力を補って余りあるが、海底ケーブルの容量は60万キロワットしかない。発電所をいくら増やしたとしても、この容量を超えて本州の消費地へ送ることはできない。
Jパワーは90万キロワットへの増強も検討しているが、開発余力からすれば、それでも足りない。再生エネ普及の旗振り役の経済産業省は「増強の必要性は認識しているが、まずは事業者が整備すべきだ」と、動きが鈍い。
●ブラックボックス
国内の送電網は、東電や関西電力など電力大手10社が地域ごとに独占している。固定価格買い取り制度は法律で、再生エネ事業者から申し出があれば、送電網に接続することを電力会社に義務付けた。ところが実際には、電力会社が接続を断る例が相次ぐ。
再生エネを推進する「自然エネルギー財団」(東京)は2月、国内の太陽光発電事業者252社にアンケート調査を実施した。回答した79社のうち約2割にあたる15社が電力会社から接続を拒否されたことがあると答えた。主な理由の一つが「送電網の容量オーバー」だった。
法律は、電力会社に接続を義務付ける一方で、「円滑な供給の確保に支障が生ずる恐れがある時」は例外を認めている。天候に左右されがちな再生エネが送電線や変電所の許容量を上回れば、電圧が不安定化するから、というのが理由だ。