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先祖帰りをしたバンドウイルカ

 2006年10月28日に、太地町の沖から追い込み漁業者によって生け捕りにされた118頭のバンドウイルカの群れの中から、1頭の腹鰭が付いている個体が、世界で初めて発見されました。
 現生の哺乳類の中ではカバと最も近縁な、熱帯の古テーシス海の近くで生活していた原始偶蹄類が、水に親しんで生活するうちに、次第に水との関係を深めてゆき、約5千万年前に完全水生のムカシクジラ亜目に進化し、やがて約3千万年前に、それが現生のヒゲクジラ亜目とハクジラ亜目に分かれ、その後も進化を続けて現在に至っております。
 鯨類の祖先が水中生活に入ると、水には浮力があり、陸上のように四肢で体を支える必要がなくなりましたので、前脚は遊泳方向を転換するための胸鰭に変化し、役に立たなくなった後脚は次第に退化して消失して、現在の流線型の体形になりました。
 ところで、「個体発生は系統発生を繰り返す」という法則通りに、鯨類は全て、発生のごく初期の体形は一般の哺乳類によく似ていて、腹の後ろの部分に後脚の原器の突起が存在し、発生が進むに連れてそれが吸収、消失されます。その過程は進化の間に獲得した遺伝子の働きによると考えられています。
 ごく稀には、生まれた後も後脚の痕跡が残って、後脚の位置に隆起が見られる個体が見つかる場合があります。しかし、今回発見された個体のように、後脚が腹鰭になっている例はこれまで世界で全く報告されておりません。さらに、これまでの例は全て死んだ後に見つかりましたが、今回はそれが生きて発見されました。
 この個体は、恐らく遺伝子の突然変異によって、後脚だけが3千万年以上前の時代に先祖帰りしたものと思われます。太地町立くじらの博物館では、この学術的に大変貴重なイルカを、できる限り健康に育てて、多角的に研究して鯨学の発展に貢献するとともに、その貴重な個体を皆様に公開して、実際に泳いでいる姿を観察して頂けるように、職員一同が現在一生懸命努力しております。どうぞご期待下さい。

                              太地町立くじらの博物館名誉館長 
                              大 隅 清 治

 
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