540 :名無しさん@ピンキー [sage] :2012/03/25(日) 18:33:11.50 ID:R1aQ8gUv (2/7)
布団の中はとても温かくて、まるで体が蕩けているような気になった。
寒い冬、寒い外からここだけは遮断されていて、私はお兄ちゃんに守られているのだ。そう思うと、安心できたし、癒される。
私は今、お兄ちゃんに抱き締められながら昼寝をしている。いや、昼寝をしているのはお兄ちゃんだ。春休みに入ってから、お兄ちゃんと私は何処にも行かず布団で横になっている。お兄ちゃんは凄く眠いが口癖で、本当にずっと寝ているのだ。
休日はいつも十三時までは寝て、それから食事をし、寝る訳ではないが布団に入るという怠惰な性格をしている。
私はいつも一緒に寝ている。お兄ちゃんは「寒いから、もっとこっちにおいで。隙間ができるから」と、私を優しく包み込むように抱き締めてくれる。
幸せ。安心感と眠気が私を襲う。昔なら、うとうととして眠りについてしまっただろう。けれど、今は少し違う。安心感や眠気を上回って、胸が痺れる様に痛むのだ。息使いが荒くなるのだ。
お兄ちゃんに抱き締められているとこうなる。最近気がついた。私は興奮しているのだ。兄に欲情している。
知ってしまったのだから、もう戻れない。
可愛い顔で眠りこけているお兄ちゃんの胸に顔を埋める。匂いを堪能し、胸に頬擦りをする。お兄ちゃんの温かさを感じながら、一日が終わって行く。
541 :名無しさん@ピンキー [sage] :2012/03/25(日) 18:35:10.05 ID:R1aQ8gUv (3/7)
今日はお兄ちゃんに腕枕をしてもらっている。とても良い。お兄ちゃんの顎が頭に触れている。お兄ちゃんが眠りについたのを確認してから、私は何を思ったのか、首に噛みついた。力を入れているわけではない。甘噛みである。
確かに分かった。
体が痺れて、へその辺りがむずむずする。唇をお兄ちゃんから離すと、唾液が糸を引いた。それにくらくらし、お兄ちゃんの体を撫でまわす。
「どうすれば、私のものになってくれるの?」
恥ずかしくなり、私は目を閉じる。それから少ししてお兄ちゃんは起きた。
眠たそうにしながら、それでも布団から出ようとしないのはお兄ちゃんらしい。お兄ちゃんらしいとは可愛らしいという意味である。
お兄ちゃんは寝ぼけ眼で頭を撫でてくれる。癒されていく。まるでペットのような扱いだが、この行為は愛情だ。私が一番喜ぶことを知っているのだ。とても単純なのだから、頭を撫でてもらうだけで幸せになれるし嬉しくなるし気分も良くなる機嫌も良くなる。
「おはよう、お兄ちゃん」
「おはよう。本当にお前は暖かいねー、抱き締め心地最高」
お兄ちゃんの抱き締め心地も最高だ。
542 :名無しさん@ピンキー [sage] :2012/03/25(日) 18:36:40.86 ID:R1aQ8gUv (4/7)
最悪なことに、春休みが終わった。昨日から学校なのだ。お兄ちゃんは眠そうに目を擦って学校へと向かう。その後を私は歩く。離れたくなくて、ついお兄ちゃんの制服の袖を掴んで歩いている。
同じ学校の人々から見られている。学校では、私のブラコンは皆に知られている。それを恥ずかしいとは思わない。
しばらく歩いて、学校に到着。お兄ちゃんが私から離れていく。袖を掴んでいた手は伸ばされたままで悲しかった。
寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。私がどれだけ兄を必要としているかは、自分が一番分かる。これは病気なのだと、授業もろくに聞かずに俯き続ける。苦しい。
「じゃあ、二人組を作って練習してー」
教師が告げる。けれど、何のことかさっぱり分からない。今は英語なので大方会話練習だろう。呆けていると、クラスメイトになったばかりの誰かが声をかけてきた。名前は分からない。
「俺と組まない? 楓さん」
楓は私の名前である。けれど、いきなり名前を呼ばれて不愉快になる。
「ああ、ごめん。気分悪くした? でもさ、白木さんって呼んだら先輩と被るかなと思って」
「それなら、白木先輩って呼ぶだろうから関係ないと思う」
「まあまあ、細かいことは気にしないでさ」
そう言って、彼は私の頭に触れ、撫でた。慌てて、離れる。
「あ、ごめんごめん。てか、そんなに嫌がらないでよー」
「私は他の人と組むから」
そう言って、前から同じクラスだった人と組んだ。
543 :名無しさん@ピンキー [sage] :2012/03/25(日) 18:38:01.33 ID:R1aQ8gUv (5/7)
誰よりも早く帰宅して、私がしたことといえば、入浴である。髪を執拗に洗う。何度も何度も何度も洗う。入浴が終り、お兄ちゃんが使うタオルを使い体を丹念に拭く。
はあはあ、と息使いが荒くなっていることに気がつく。お兄ちゃんのタオルを使ったのは失敗だったかもしれないけれど、この気持ち悪さを拭うには仕方無かった。思わずお兄ちゃんのタオルにすら欲情してしまう。本格的に自分は駄目かも知れない。
服を着替え終えると、お兄ちゃんが帰宅した。それを出迎え、お兄ちゃんに抱きつく。お兄ちゃんは抱き返してくれる。
「お兄ちゃん、頭を撫でて欲しい。お願い、早く」
「ん? いいよ」
お兄ちゃんの手が頭に添えられる。これだけで幸せになれる。狂いそうになるくらいの快楽を感じる。
お兄ちゃんの手が動くたびに汚れが消えていく。
しばらく堪能し、お兄ちゃんは着替えた。着替シーンはこっそりと覗き堪能した。
いつもなら、お兄ちゃんがシエスタと称し、布団に潜ってから私も入れてもらうのだが、今日は押し倒すように私から布団についた。
「おっと、どうしたのかな? 楓らしくないね」
それを無視して、お兄ちゃんに貪り喰うように抱きつく。
「何か悩み事? 嫌なことでもあったのかな?」
「……ちょっとだけ、あった」
「言ってみなさいな」
今日、知らないクラスメイトに頭を撫でられ、それが堪らないほど不快だったことを話す。話し終え、もっとお兄ちゃんに撫でてもらうつもりだった。けれど、お兄ちゃんがそれを聞いてしたことは最悪だった。
「ごめんね。頭撫でられるの嫌だったんだね。注意するよ」
何を言っているのか分からなかった。
「ち、違うよ。お兄ちゃんに撫でら――」
「いいよ。大丈夫だからね。楓は昔から上手く言えないもんね」
言うだけ言ってお兄ちゃんは私に背を向け、寝てしまった。
544 :名無しさん@ピンキー [sage] :2012/03/25(日) 18:40:54.17 ID:R1aQ8gUv (6/7)
体から何かが抜けていくようだった。魂を抜かれたような消失感。
手を伸ばし、お兄ちゃんの背に抱きつく。お兄ちゃんは私を勘違いしている。いつもの温もりは感じられずに悲しさが募る。寂しいよ。
お兄ちゃんは勘違いしやすい。それは彼の優しさから来るものだとは分かっている。
お兄ちゃんからの愛を貰えなくなったのは全てあのクラスメイトの所為だ。
許せない。
今すぐお兄ちゃんを起こしたかったけれど、起こすのは気が引けた。
代わりに私が起き上がり、お兄ちゃんの正面へと回る。
優しい表情を見ながら、私は異常な衝動にかられる。
いつもならば、お兄ちゃんに抱き締められている安心感などから、満たされている感覚からこんなことにはならない。
お兄ちゃんの僅かに開く唇に視線がいく。目を離そうにも、僅かに開かれた唇がブラックホールのように私を引き寄せる。
徐々に近づき、お兄ちゃんのと息を感じる距離に行く。鼓動が早まる、早く早く早く早くと急かすように。
ああ、駄目だ。ああ、駄目だ。ああ、もう無理だ。
気がつけば、唇と唇とが重なっている。驚いて目を見開く。
正気が保てたのはその一瞬だけだった。
最初は唇を触れさせるだけだった。そして、徐々に唇をぶつける様に激しく。貪るように、啄木鳥を連想させるように何度もすぐに唇を合わせる。
短く唇を何度も味わう。最後には長く長く唇を合わせる。涎がお兄ちゃんに垂れ、やっと正気が戻る。
落ち着きを失っても、お兄ちゃんを起こさないようにしていたらしい自分が恥ずかしい。
でもキスはとても、
「よかった。ふふふふ」
思わず、笑みが零れる。しばらくして、起きたお兄ちゃんに土下座して、再び愛してもらえるようにした。我慢していた自分が恥ずかしい。何故、いままでこんな幸せなことをしなかったのかと、後悔した。