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原発避難区域 介護給付費が大幅増加
4月11日 5時28分

原発避難区域 介護給付費が大幅増加
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東京電力福島第一原子力発電所の事故で避難区域に指定されている福島県の自治体では、介護保険の昨年度の給付費は震災前に比べて平均で30%以上増加する見通しであることが、NHKのまとめで分かりました。

NHKは避難区域がある福島県内の11の自治体に、介護が必要な高齢者と介護費の推移を聞きました。
それによりますと介護が必要な高齢者は震災前の平成22年12月には全体で8544人だったのに対し、去年12月には1万752人と2200人余り、率にして26%増えました。
増加の割合は同じ時期の全国平均の2倍を超え、避難生活の長期化に伴って身体機能が低下する高齢者が増えたものとみられています。
また、介護保険の給付費の総額は平成22年度の125億円から昨年度は151億円まで26億円増加し、自治体ごとの平均でおよそ33%、大幅に増える見通しであることが分かりました。
市町村別でみると、浪江町では介護が必要な高齢者が389人増えて、介護給付費が33%増加したほか、189人増えた大熊町では36%、126人増えた双葉町では49%、それぞれ介護給付費が増えました。
原発事故の避難区域では、高齢者が支払う費用は現在は国からの特例補助金などでまかなわれていますが、国や市町村の負担は増えていて、元の町に戻る見通しが立たない自治体では今後も介護が必要な高齢者と財政負担が増え続けることが懸念されています。

「要介護」女性は

大熊町からおよそ100キロ離れた会津若松市の仮設住宅で避難生活をおくる末永ミツ子さん(80)は、震災前は毎朝、自転車で5分ほどの自分の畑で行う農作業を日課にしてきました。
時には自宅からおよそ7キロ離れた隣町の桜の名所に自転車で向かうこともありました。
しかし震災後、近くの仮設住宅に住む息子や孫以外に知り合いはおらず、慣れない土地のため外出することもほとんどなくなりました。
畑もなく、生きがいだった農業もできません。
家が狭いため掃除などの家事をする必要もなくなり、一日中、部屋の中で横になっているような生活が続いています。
こうした生活を続けている末永さんは、避難生活を始めてから次第に足腰が弱りはじめ、最近は少し歩いただけでひざや腰が痛くなり、部屋に戻ってしまうことも多いといいます。
今では外出するのに手押し車やつえが欠かせなくなりました。
震災から半年後に「要支援1」の認定を受け、先月には介護度が2段階進んだ「要介護1」になりました。
末永さんは現在、週に3回、デイサービスの施設に通っています。
末永さんは「朝起きてもやることがなくテレビを見てご飯を食べて寝てといった生活で、体力も落ちるし何も考えることがないから頭も衰えて物忘れもするようになりました。大熊町にいたころはまだまだ5年は畑仕事は大丈夫だなって思っていましたが、今の生活は楽しみも生きがいもありません」と話しています。

大熊町の実情は

全域が避難区域に指定され、今もすべての住民が全国各地の仮設住宅や借り上げ住宅などに避難している福島県大熊町では、介護が必要な高齢者が震災前に比べて55%増加しました。
特に震災前は要支援と要介護1の高齢者は合わせて121人でしたが272人と2倍以上に増え、これまで介護サービスを受けていなかった高齢者が新たにサービスを受け始めたケースが目立っています。
介護が必要な高齢者が増えた理由について大熊町健康介護課の猪狩良一課長は、「多くの高齢者が避難生活によって農作業や孫の世話などの日課が奪われ、友人もいない土地で狭い仮設住宅に閉じこもりがちになりどんどん体力が落ちていくケースが多い。このまま増加すれば介護施設が足りなくなるおそれもある」と話しています。
大熊町では今月から避難者が多い会津若松市やいわき市の仮設住宅などを巡回し、高齢者の体力低下を防ぐため体を動かしてもらう新たな教室を開き、介護予防に力を入れていくことにしています。

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