ヨウ素剤の事前配布 課題は住民伝達4月10日 20時44分
深刻な原発事故に備えて、国の原子力規制委員会は、甲状腺被ばくを防ぐためのヨウ素剤を、原発から半径5キロの住民に事前に配布することにしていますが、その条件として、医師が住民に保管や服用の方法を説明することや、副作用のおそれのある人を調査するといった、新たなルールをまとめました。
今後、原発の半径5キロの圏内に多くの住民を抱える自治体では、服用の指示が住民に確実に伝えられるかが大きな課題になります。
ヨウ素剤の効果
ヨウ素剤をあらかじめ服用しておけば、放射性ヨウ素が甲状腺に取り込まれるのを防ぐことができます。
効果は、24時間程度続くとされ、放射性ヨウ素が体内に入る24時間前に服用すると甲状腺への取り込みを90%以上抑えることができるとされています。
また、放射性ヨウ素が体内に入ってから8時間後に服用した場合でも、甲状腺への取り込みは40%抑えられるとされていますが、24時間後に服用した場合には、7%まで効果が落ちるとされています。
一方で、ヨウ素剤を服用すると、おう吐や皮膚の発疹、体質によっては急性のアレルギーなどの副作用が起きることがあり、医師の立ち会いで服用することが望ましいとされています。
過去には混乱も
福島第一原発の事故では、発生直後、住民にヨウ素剤の服用を指示するかどうかについて、国や福島県が明確な判断を示さなかったため、市町村の対応が分かれ混乱が生じました。
政府や国会の事故調査委員会の報告書などによりますと、原発事故が発生した2日後の3月13日、原子力安全委員会は、体に付着した放射性物質が指定した基準を超えた住民に対し、ヨウ素剤を服用させるべきとする助言をまとめました。
しかし、連絡の行き違いや確認ミスなどで、この助言は国の災害対策本部で生かされず、原子力安全委員会もそれ以上の対応を求めなかったため、国や福島県から服用の指示は出されませんでした。
こうしたことから、福島県浪江町は、避難所までヨウ素剤を運んだものの、住民に配布するかどうかの判断ができませんでした。
一方で、富岡町や三春町など4つの町では、国からの情報がないなか、独自の判断で住民に服用を求めるなど対応が分かれました。
事前配布の課題
原発から半径5キロ圏内では、避難指示が出た際に住民にヨウ素剤を服用してもらうことになります。
原子力規制庁によりますと、福島第一原発と第二原発を除いた全国の原発の半径5キロ圏内には平成17年の時点であわせて13万6000人あまりが住んでいます。
最も多いのは、茨城県にある東海第二原発で5万人余り、次いで多いのが静岡県の浜岡原発で2万5000人余りとなっています。
こうした人口の多い地域では、避難の情報とともにヨウ素剤の服用指示を確実に伝えられるかが大きな課題になっていて、各自治体が地域防災計画の中で態勢を整備することが求められることになります。
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