(英エコノミスト誌 2013年4月13日号)
日本の農業は、農地をまとめて区画面積を増やし、兼業農家を少なくすれば、競争力を獲得できる。
日本の北陸地方の石川県にあるバンバ・ムツオさんの水田は、いくつもの区画に分かれ、その間には他人の所有地が入り込んでいる。専業農家のバンバさんは、稲が育つ時期には毎日田んぼに水をやる。
ほかの農家は水をやらないと、バンバさんは不満げに言い、そういう兼業農家が「エアコンの効いた家の中にいる間に、コメは乾いてひび割れてしまう」と苦言を呈する。バンバさんがこれに腹を立てているのは、地元の農業協同組合(農協)が販売用の作物を集める時に、兼業農家のコメと自分のコメを混ぜてしまうからだ。
TPPに加盟すると、本当に日本の農業は崩壊するのか?〔AFPBB News〕
兼業農家が本業の空いた時間を利用してトラクターを動かしている風景は、日本の風物詩だ。兼業農家は年配の人が多く、勤めに出ていたり、家族から財政的援助を受けていたりする。いずれにしても、農業以外にも収入源があるわけだ。
そういう農家があまりにも多いために、農業部門の生産性は押し下げられる。日本の農業従事者150万人のうち、専業は42万人にすぎない。兼業農家は投資を渋り、耕作の仕方もぞんざいなことが多い。
強大な圧力団体JAを通じて影響力を振るう農家
しかし、農業従事者は、農協の全国組織(JA)を通じて、数の力で政治的影響力を行使する。自民党や農林水産省と強いつながりを持ち、東京をはじめ全国で24万人という驚くべき数の職員を抱えるJAは、恐らく日本で最も力のある圧力団体だろう。
JAは農産物に対する高い輸入関税――コメは777.7%、バターは360%、砂糖は328%だ――を維持するよう働きかけている。それゆえ、3月に安倍晋三首相が、自由貿易圏を目指すTPP(環太平洋経済連携協定)の加盟交渉に日本が参加する意向であると発表したことは、JAに衝撃を与えた。
自民党は反発を予想している。農家はTPP加盟の最大の障壁になるかもしれない。農林水産省も反対の立場を取り、TPPに加盟すれば、日本のコメの生産高は10分の1になり、全体で340万人分の雇用が失われるだろうと主張している。
安い外国産米の流入の容認は、TPP加盟にあたって最も物議を醸している部分だ。最近まで国会でJAの利益を代弁していた渡部恒三氏は、コメは日本の「精神的土台」だと言う。コメを育てるのに必要な地域住民の協力関係が、日本の文化とアイデンティティーを形作ってきた。
さらに、飛行機で種をまく米国型のアグリビジネスと対決したなら、日本の小規模農業は崩壊すると、渡部氏は述べる。
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