クローズアップ2013:降圧剤 京都府立医大の論文撤回騒動 製薬社員も名連ね

毎日新聞 2013年03月28日 東京朝刊

 松原元教授は「データ集計の間違いでしかない。論文の結論に影響を及ぼさない」と声明を出し、京都府立医大は今年1月、学内3教授による予備調査で「研究に不正はなかった」と日本循環器学会に報告した。

 この試験を巡っては1年ほど前から、「試験終了時の血圧値の平均値と(データのばらつきを表す)標準偏差のデータが、薬を飲んだ患者群とそうでない群で一致している。試験終了時に異なるのが自然なはず」「同じ薬を使った国内外の臨床試験の結果と合わない」などと、専門家から不自然さを指摘されてきた。

 毎日新聞は松原元教授に一連の経緯について再三取材を申し込んできた。しかし松原元教授は「大学に聞いてほしい」とし、面談での取材に応じていない。

 ◇研究責任者と密接な関係 個人的謝金も

 京都府立医大は、毎日新聞の情報公開請求に対し、松原元教授への奨学寄付金などに関する資料を開示した。

 それによると、大学に記録が残る08年1月以降、松原元教授の研究室に提供された民間からの奨学寄付金は、253件計4億2800万円。このうち、ノ社からは18件計1億440万円あり、金額は約4分の1を占めていた。

 また、12年度は、ノ社から松原元教授個人に講師謝金として2件40万円が支払われていた。

 ノ社は「奨学寄付金を出してはいるが、大学を通じてであり、試験を行う医師に直接ではない。この臨床試験を目的に提供したことはなく、ノバルティスファーマが松原元教授に試験の実施をもちかけたこともない」と説明する。

 2月のノ社の社長定例会見では、記者が松原元教授側への奨学寄付金提供の有無を問うた際、ノ社側は提供してきたことを認めたものの、金額は明らかにしなかった。三谷社長は「大学側の同意が得られれば、一緒に公表していきたい」とする一方、論文が撤回されて営業活動に臨床試験のデータが使えなくなったことには「非常に残念。今後、(顧客の)医師にも説明していきたい」と話していた。

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 ■ことば

 ◇バルサルタン

 ノバルティスファーマが商品名「ディオバン」として、00年に発売を開始した血圧を下げる薬。血管を収縮させ血圧を上げる血中成分の働きを阻害する効果がある。約100カ国で承認を受けている。

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 ◇松原元教授チームのバルサルタン臨床試験をめぐる動き

00年11月    ノバルティスファーマが降圧剤「バルサルタン」の国内販売を開始

04年       松原教授(当時)のチームが臨床試験を開始

09年 8月    「脳卒中や狭心症などのリスクも下げる効果」と欧州心臓病学会誌(電子版)に発表

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