訃報:三国連太郎さん 90歳=俳優
毎日新聞 2013年04月15日 東京夕刊
◇「飢餓海峡」「釣りバカ日誌」
「飢餓海峡」「復讐(ふくしゅう)するは我にあり」「釣りバカ日誌」シリーズなどで知られる俳優の三国連太郎(みくに・れんたろう、本名・佐藤政雄=さとう・まさお)さんが14日午前、亡くなった。90歳。
群馬県生まれ。1943年徴兵され忌避するがかなわず入隊。46年に復員後、上京し大船撮影所で木下恵介監督に目を付けられ51年「善魔」で主役デビュー。役名をそのまま芸名とした。日本人離れした容貌を生かした二枚目として出発したが、次第に複雑な人間心理を真実味をもって造形する演技を深めていく。
65年公開の「飢餓海峡」(内田吐夢監督)では、強盗殺人を犯した過去を隠して成功した事業家を鬼気迫る演技で演じ、人間の内にある善と悪を強烈にえぐった。松川事件を題材にした65年「にっぽん泥棒物語」(山本薩夫監督)では、事件を目撃し妨害にひるまず真実を暴く証言台に立つこそ泥を喜劇的に好演。
68年の「神々の深き欲望」、75年「金環蝕」、79年「復讐するは我にあり」など、エネルギーに満ちた迫真の演技で出演した作品を名作の域に高めた。毎日映画コンクールの男優主演賞を3度受賞している。
87年には、13年越しで取り組み原作、脚本、監督を手掛けた「親鸞 白い道」を完成させ、カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した。88年に始まった「釣りバカ日誌」では、釣り好きの建設会社の鈴木社長役で共演の西田敏行さんと名コンビぶりを発揮し、22作が作られる人気シリーズとなった。
93年に勲四等旭日小綬章、07年度毎日芸術賞特別賞。息子に俳優の佐藤浩市さん。