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クジラの学術ネットワーク
「くじらの博物館」進む友好館提携
世界的に貴重「腹びれイルカ」がもたらす幸運


 2007年はクジラの町 「太地」 の名が学術的な側面で世界へ発信される年になりそうだ。 「くじらの博物館」 が結ぶ世界の博物館との 「研究ネットーワーク」 と昨年暮れに発見された貴重な 「腹びれイルカ」。 2つの宝物が太地町にある。
(須川達也記者)

 昨年4月、 「日本伝統捕鯨地域サミット」 が太地町で開かれ、 その成果を引っさげて参加したIWC (国際捕鯨委員会) 会場では 「太地宣言」 が注目を集めた。 捕鯨再開を願う日本のリーダー的な存在は誰もが認めるところとなった。
 捕鯨再開への運動とともに、 クジラ研究の貴重な資料を誇る 「くじらの博物館」 では一昨年から世界中の博物館とのネットワーク作りに取り組み始めている。

■中国の水族館との交流でスタート
 三軒一高町長が進める外国の水族館や博物館と 「くじらの博物館」 の学術交流ネットワーク構想は2005年秋、 中国3館との友好館提携から始まった。 10月に北京市の北京海洋館、 大連市のサンアジア海洋世界、 同市の老虎灘 (ラオフータン) 海洋動物保護研究所の3館と提携書を交わし、 学術目的で中国へバンドウイルカを提供し、 日本国内で議論をかもした。
 経済成長著しい中国では水族館建設への意欲が高く、 さらにネットワークを結ぶ施設が増えそうだ。 昨年9月には広州市の広州海洋館から打診があり、 学術交流へ向けて互いの意志を確認する意向書を交わしている。

■世界一のニューベッドフォード博物館とも交流へ
 06年4月には西インド諸島にあるドミニカ共和国の水族館、 オーシャンワールドと意向書を交わし、 6月にはメキシコ市にある海洋レジャー施設、 シックスフラッグスメキシコと友好提携を結んだ。 また、 6月のIWC開催時に三軒町長らが世界一の規模を誇るアメリカ・ニューベッドフォード市の捕鯨博物館、 ボストン南西部のナンタケット島にある捕鯨博物館へも足を伸ばし、 将来の友好提携へ向けて視察を行っている。

■ヨーロッパへも広がるネットワーク
 現在まで中国3館、 メキシコ1館の4館が友好提携の書類を交わしているが、 今後もネットワークは広がりそうだ。 三軒町長は 「中国、 アジアへさらに学術交流の輪を広げたい。 ヨーロッパでもネットワークができる可能性もある。 楽しみだ」 と笑顔を見せる。

■世界の 「鯨学」 へ貢献するか 「腹びれイルカ」
 太地のくじらの博物館の名が世界へ広がる可能性の一つに昨年11月に発見された 「腹びれイルカ」 の存在が大きいとくじらの博物館の林克紀館長 (56) は語る。
 諸外国の博物館とのネットワーク構築への努力を重ねる太地町へ学術的に注目度が高いニュースが届いた。 昨年10月28日、 いさな組合が追い込んだバンドウイルカのうちの1頭に腹びれがあることが確認され、 名誉館長に就任したばかりの日本の鯨類研究家の第一人者、 大隅清治氏を驚かせた。 バンドウイルカは体長273センチの推定年齢10歳のメス。
  「まったくの幸運だった」 と林館長は顔をほころばす。 数頭追い込まれたうちの1頭で、 腹びれが確認される前からくじらの博物館へ割り当てられた1頭だった。 「運が悪ければ他の博物館に行ったかも知れない」 と胸をなでおろし、 「大隅名誉館長の就任がなければ発見はなかったかも知れない。 10月から着任した桜井敬人学芸員も大きな力になってくれる」。

■幸運の使者
 くじらの博物館2階の階段下に 「龍涎香 (りゅうぜんこう)」 の展示物がある。 マッコウクジラの腸の中にたまるイカのくちばしを大量に含んだ脂肪分の固まりだ。 これを材料に良質の香水ができる。 博物館のは総重量約12キロで100万円の値がつくという。 林館長が博物館10周年記念の年に前館長の雑賀氏とともに偶然に発見した。 「今考えるとあれも幸運だった。 見逃してしまったかもしれない」。 腹びれイルカの発見のとき、 龍涎香を思い出したという。
 クジラの町に今年も幸運が舞い込むか。


世界の水族館、博物館とネットワーク作りを進める「くじらの博物館」


世界的に注目を集めそうな腹びれイルカ


貴重な資料を誇る「クジラの博物館」
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