ヤンキースタジアムで握手を交わす長嶋茂雄氏(左)とヤンキースの松井秀喜外野手(当時)=2003年4月、ニューヨーク(共同)【拡大】
「ミスタープロ野球」と言われた長嶋茂雄氏と一緒に国民栄誉賞を受賞することになった松井秀喜氏の戸惑いが手に取るようだ。「長嶋監督の受賞は当然だと思うが、自分に関しては恐縮のひと言しかない」と、松井氏は取材に答えている。「ゴジラ」のいかついニックネームとは裏腹に、謙虚な性格が色濃く出ている談話であり、本音だろう。
4月1日に政府が長嶋、松井両氏のダブル受賞を発表したとき、長嶋氏の受賞にはまったく異論は出なかったが、松井氏に関しては多くの国民の半分が受賞を歓迎し、半分が疑問に思っていたと思う。そのことを自覚している松井氏の談話なのだが、こう聞かされると「松井氏は受賞に追い込まれたのでは」とつい邪推してしまう。
▽亀田の異常な行動
それから1週間後、大阪で行われたプロボクシングの試合で、WBA世界バンタム級の6度目のタイトル防衛を判定で成し遂げた亀田興毅選手がリング上でファンに土下座しているのをテレビで見た。亀田選手が負けていてもおかしくない微妙な判定に、世界王者がやむにやまれない気持ちになったのだろう。試合前に宣言したKO勝ちが実現できなかったことへの謝罪などではないと思った。まさか「負けていた」とは言えないし、自分ではどうしようもない亀田選手の心情が見えた気がした。松井氏の受賞とダブらせるつもりはないが、松井氏は「現時点で自分がいただいてもいいのか、という迷いもあるが、今後、数十年の時間をかけて、この賞をいただいても失礼ではなかったと証明できるよう努力する」とも語っているのだ。