坂本史郎の【朝メール】より:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 坂本史郎の【朝メール】より

ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

おはようございます。

晴れ空。風も空気中の浮遊物も収まっているようです。

20130416_6_07_53 20130416_6_51_43

===ほぼ毎朝エッセー===

昔話です。

e-Janでは2000年の創業当初はインドに開発を外注していました。
インドの会社に開発協力を委託して、現地に開発チームを設けて、
リエゾンとなるプロジェクトリーダーが日本に居ながらの体制です。

当時は第一次ITバブルだったので、日本ではプログラマーが不足、
インドに活路を求めたわけです。結果的にはこの体制では大失敗しました。
失敗の理由はいろいろあると思いますが、今日は二つピックアップします。

・外部委託は人月との戦い
・プログラムが見えないが故の品質

==

■外部委託は人月との戦い

言うまでもなく、時間と工数はかかればかかるほど費用がかかります。
それなので、委託する側はなるべく安くすませたい。
開発する側はなるべく人月を大きくしたい。関心ごとが違うのです。
根本的なところでそのせめぎ合いが存在します。

自社製品のような、継続的な改良が必要な分野において外部委託をすると、
それはどうしてもこのベクトルの違いに悩むことになります。
どんどん良くしたいけど、どんどんお金もかかるようになる。

自社製品を自社技術者が開発するのであれば、自分たちの仕事がやりやすく
なるように様々に工夫をしてくれます。一方、委託されるという開発の場合、
技術者たちにとってそこは一時的な職場という位置づけです。

ある開発会社の人は「納品して使われないのが一番うれしい」というような
ひどいことを言っていたくらいですから、このメンタリティーの違いは大きいです。

売り上げがでたらそこから開発会社にロイヤリティを支払うという、
レベニューシェア、いわば成功報酬型のやりかたもあります。
ところが、これも合意に至るのはなかなか難しいです。

新製品の開発で成功するのは、千三つ。夢をもって開発していても、
実際にそれが当たることは稀です。開発会社が損をするケースがほとんどです。

==

■見えないが故の品質管理の難しさ

機械や建造物であればその見た目から品質感が分かる感覚があります。
ところが、プログラムは動かさないと分からないのです。
動かしてテストをするとその品質がようやく分かる。

インドで別な会社を見学しに行ったときのことです。
そこに駐在していたアメリカ人が嘆いていました。

彼はアメリカでビジネスプランを作り、それを具現化するためにインドの
会社でプログラム開発すべく、現地に乗り込んで監修していたのです。

「これ見てみなよ…」と指差す方にはべったりと手あかが。

その会社は新築のビルに入ったばかり。ところが、新しく塗ってある壁には、
見事に茶色い手あとが。そして新しいはずの家具も傷ついている。

個人主義が強いインドの文化の影響も多いのでしょう。
言われたことをやるけど他の人のことは構わない。
結果的にはこういうことが平気で起きる。

それが、プログラムを良く見てみるとあちらこちらに潜んでいるのだと。
ため息交じりに言っていました。

こういったことを克服するには、かなり強力な品質管理システムが必要なのでしょう。
欧米大手IT会社がインドで成功しているのはそういった仕組みを持ち込んでいるから。

その体力やノウハウが無いベンチャーではうまくマネジメントできないでしょう。
あるいは自分がよほどな辣腕プログラマーであればなんとかするかも知れません。

見えないが故の品質管理の難しさを克服するには、モチベーションの高い自社
技術者が自分たちのために「創り込みをするのだ」という気概で仕事をしてくれる、
今のところはそれしか無い、というのが学んだことです。

==

何億円にもなる大きな授業料を払った失敗談でした。逆張りを頑張りすぎた例。
今は、品質が見えるような仕組みを自社で創り込んでいくという段階にあります。

Shiro Sakamoto

Special

- PR -
コメント

コメントを投稿する
メールアドレス(必須):
URL:
コメント:
トラックバック

http://app.blogs.itmedia.co.jp/t/trackback/77444/31410587

トラックバック・ポリシー


» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

坂本 史郎

坂本 史郎

e-Janネットワークス株式会社 代表取締役。
東レ、バージニア大学MBA、IT企業創業とユニークな経歴。コミュニケーションデバイスと組織の理想形を追い求める。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
最近のトラックバック
カレンダー
2013年4月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ