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「腹びれ」持つイルカ発見
研究プロジェクト立ち上げへ
先祖返りか
太地町で


 太地町の勇魚組合が10月28日、同町の灯明崎沖から追い込んだバンドウイルカの中に退化した後ろ脚のなごりともいえる「腹びれ」と見られる突起がある個体が見つかった。同町くじらの博物館の名誉館長、大隅清治氏が4日夜、同博物館で記者会見を開き「長く研究に関わってきたが、これだけはっきりした例は初めて。クジラの先祖返りと見られる。21世紀の学会の大ニュースだ」と興奮気味に話した。
 国際的にも注目を浴びそうで、大隅氏は「研究プロジェクトを立ち上げたい」と意欲を見せる。同博物館では慎重に飼育し、一般公開を目指す。

 大隅氏の説明では陸上を歩くほ乳類だったクジラは水中へすみかを変え、前脚が胸びれになり、後ろ脚は退化してわずかに骨盤の後を残すのみになった。発見されたバンドウイルカの腹びれは今から3000〜5500万年前の始新世にいたムカシクジラの時代を再現するものではないかという。腹びれのあるイルカは体長2メートル72センチのオス。5歳くらいの若い個体と同博物館では見ている。腹びれのような突起は約15センチで生殖器の両側にある。大隅氏はイルカが落ち着いたら腹びれをレントゲン撮影し、構造を詳細に調査する意向で「遺伝子チームを組織してどの遺伝子が突然変異したのか調べ、進化の歴史に役立てたい。繁殖させることが重要。イルカの行動学研究チームなども必要になってくる」と話した。
 大隅氏は日本の鯨類研究の第一人者で学術論文約200編を発表し「鯨とイルカの生態学」「クジラは昔陸を歩いていた」など多くの著者がある。10月から同博物館の名誉館長に就任している。


生殖器の脇に15センチほどの突起がある。レントゲン撮影して内部に骨があるか調査する

腹びれと見られる突起が発見されたバンドウイルカ

「長い研究の中で初めてみた。世界的な大ニュース」と記者会見で語る大隅清治氏=4日、太地町立くじらの博物館
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