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富野由悠季監督とその作品について語るブログ

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検証:小説版『ブレンパワード』第3巻は本当に富野由悠季が書いたもの?

2012/05/31 01:19|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:0
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 みなさん、『ブレンパワード』というアニメをご存知ですか? これは「ガンダム」などで著名な富野由悠季監督が1998年にWOWOWのスクランブルアニメのビジネスを開くべく、「Vガンダム」から4年ぶりのテレビアニメだったんです。「エヴァンゲリオン」や「もののけ姫」など殺伐な作品に答えべく、その今までの富野監督とかけ離れている作風にハートフルな内容で、多くの人が魅了されていて、今日まで至ったのです。

 しかし、多くの方はご存知ないかもしれませんけれど、アニメ『ブレンパワード』および富野由悠季監督のファンにとって、長年にずっとある疑問が付きまとっています。それが「小説版『ブレンパワード』第3巻は本当に富野由悠季が書いたもの?」という疑問です。
 
 というのも、この『ブレンパワード』の小説版が出版されたとき、ちょうどこの時期の富野監督は「小説からリタイアする」みたいな発言をしていたからです。それだけでなく、この小説はいくつか妙なところがあるのに加えて、ネットを中心にっ広まっていた噂が一人歩きしていた結果、こんな疑問が出てくるのです。

 今回はこの話題に関して、クレジット、証言、文章ならびに問題点の4方面から、『ブレンパワード』第3巻の執筆者は果たして富野監督かどうかを検証したいと思います。よろしくお願いします。



1、クレジット

 最初に。小説版『ブレンパワード』に載っている表記を見てみよう。

1.深海より発して 構成:富野由悠季 文:面出明美

2.カーテンの向こうで 構成:富野由悠季 文:面出明美

3.記憶への旅立ち 構成:富野由悠季 文:斧谷稔

 まず、全巻に渡っての構成が「富野由悠季」とクレジットされていますが、これはおそらくノベライゼーションとしてアニメの原作・総監督を尊重するための表記で、富野監督本人が小説の内容を構成したわけではない。そういう意味では、『ガンダムzz』の「原案」とかなり似てるのではないかと思っています。

 第1巻と第2巻の文章は、アニメ原作のメインライター、26話のうち最多の9話を担当した面出明美氏が書いたもので、この部分に関しては異論はないはずです。

 対して、第3巻の文章はなぜか「斧谷稔」と表記されています。ご存知のとおり、「斧谷稔」は富野由悠季監督がテレビアニメの脚本・演出(絵コンテ)を手がけるときに使っているペンネームです。事実、この斧谷稔クレジットが存在しているからこそ、富野執筆説およびその反論は浮かび上がるわけです。


 自らのペンネーム「斧谷稔」を使っているくらいですから、当然小説も富野が書いたものと思うほうが、なるほどごく自然なことかもしれません。しかし疑問がないわけではない。

 まず、①富野が小説に関して斧谷稔名義を使ったことはただの一度もありません。いやそれ以前、そもそも②アニメ『ブレンパワード』において富野は珍しく「富野由悠季」名義でシナリオを書いたわけです。このためか、代筆やら印税調整なにやらの説も出てくるわけです(確かに宇野常寛氏が善良な市民と名乗った時期の記事が初めて)。

 あくまで推測ですが、①に関しては、「構成:富野由悠季」で示した通り、この小説はいわゆるアニメのノベライズなので、本格的な小説ではないので、富野があえて一スタッフとして斧谷名義を使ったと考えられます。また②に関しては、「斧谷稔」表記はおそらくアニメのシナリオとあまり関係ないと思われます。なぜならば富野が書いたシナリオが第3巻にあたる部分の部分は、むしろ3巻のなかで一番少ない。

 どのみち、小説で斧谷稔名義を使ったのは特異ではありますが、それを根拠に簡単に富野だ、富野じゃないと断言することができません。つまり、斧谷稔表記で結論を下せない限り、ほかの証拠はどうしても必要するとします。



2、証言

 以上はクレジットを論じましたが、どんな論より証拠なので、この件に関して唯一のソースを紹介したいと思います。本は持っていませんので、適当にネットからその発言部分を節録します。

★★劇場版機動戦士Zガンダム‐星を継ぐ者‐に関する情報と噂 特別版★★
■ライトノベル完全読本(日経BPムック)に劇場版Z以後の富野由悠季監督の新作情報掲載
 ガンダム小説・巨匠対談!/富野由悠季×福井晴敏/P26~P37より抜粋

福井:才能という言葉が出ましたが、いわゆる普通の文芸の見方で、小説っぽい読みやすさで言うと、朝日ソノラマの「ガンダム」と「イデオン」が白眉だと思います。その後、ご病気されたときに「王の心」を書いたんですよね。それから「ブレンパワード」ですか。あれは最終巻は監督が書いたというか、手を入れたとの噂もありますけど……。

富野……書いたらしい

福井:これまでも誌的な文章でしたけど、「ブレンパワード」は小説という限界を超えて、完全に散文詩に近いものになっていると感じたんですよ。それは、何年かのストレスとか、言葉を発せられなかった時期の反動が、ああいう形になったのかと思ったのですが?

 と、このように富野本人の発言から察するに、富野本人が書いたという話の信憑性が80%くらいあります。しかし、あくまで「書いたらしい」で。所詮100%確定じゃないことですし、そのままだとこの記事が終わりになりますので、他の部分からも続けて検証したいと思います。



3、文章

 証言の後に、いよいよ肝心の文章についての検証です。

 まず、この小説版『ブレンパワード』の特徴としては、登場人物のセリフはアニメのシナリオ(というか台本)から起こして、ほんの一部に修正を加えたものとなっています。このスタイルは、第1巻から第3巻を通して、最後まで貫くものです。それゆえ、この小説は小説として創作されたものではなく、公式の紹介文に書かれた通り、単にアニメの小説化つまり「ノベライゼーション」と言われるわけです。ほかの富野作品の小説(富野本人が書いていないものを含めて)を考えれば、実に特殊です。

 また、文章に関しては、まず第1、2巻の部分に限って言いますと、実にいかにもアニメ脚本家が書いた文章という気配がします。つまり、話がセリフ中心に展開されて、セリフとセリフの間に地の文で説明や情景の補足がなされています。そして、この基本スタイルは第3巻も踏襲していおり、実にノベライズとしてごく真っ当な形式になっています。

 しかし、それでも、第3巻の文章はやはり第1、2巻のと一味違う部分があります。両者を比較してみれば、セリフの部分は台本からの起こしのため、違いはほとんど見かけませんけれど、地の文に関しては目に見える差異が出てきます。以下は、それらを順次に語ります。


 まずは、情景や状況描写の文章。第1、2巻のこれの部分に関しては、実に読者を満足させるほどの技量がありませんでした。場面の描写、それから場面と場面のつなぎはかろうじて及第点なものの、動きが激しい場面、特にアクションに関しては、明らかに至ってない部分もしばしば。これに対し、第3巻はそれらの場面を読者に想像させられるほどの文章を持っています。アクション一つにしても、それほど動的に描いているわけではありませんが、上手く短い文章で的確に場面を掴んでいて、いかにも慣れているふうに感じられます。

 また、説明文に関して、第1、2巻は正統的にアニメの展開もしくはアニメが描写しそこなった部分(有名な「ごめん。覚えていない」とかね)をキャラなどで説明するのに対して、第3巻の説明はキャラクターの視点をも越えて、もっと俯瞰的に説明している気配があります。それから、説明文のなかに、説明なのに疑問形で読者に返すというところなんかも、第1、2巻では見かけず、第3巻の文章が持っている特徴です。

 さらに、第1、2巻は補足があっても基本的にアニメ本編に忠実するものだったのに対して、第3巻にはちょくちょくアニメ本編から離れている部分も見かけて、両者の「文」だけでなく、「質」も異なることを物語っています。


 なので、あくまで第1、2巻を基準にする見方ですが、第3巻の執筆者は前の2巻と異なる可能性が高く、その文章(特に地の文)が持っている特徴は読む限り、富野由悠季監督のそれとかなり似ている部分もあると思われます。この部分は直接証拠じゃないので断言できませんが、少なくとも私の見方では富野監督の文章にかなり近いのではないかと思っています。



4、問題点

 以上を読めば、むしろ富野が書いたものでは無いほうがおかしいぐらいに、揺るぎない直接証拠や状況証拠が揃っているわけですが、富野が書いたかどうかについて疑問を持っている意見は、主として以下の2点があります。

 実際に読めば分かると思いますが、この小説(特に第3巻)は①心理描写がほぼ無く、全編はほぼセリフと地の文のみで構成されています。対して、富野小説は特に心理描写に重きを置くところがあります。また、②登場人物のセリフも普通で、一般のセリフまわしになっています。言い換えると、富野小説の登場人物が言うであろうセリフ回しはほぼ見かけません。

 これらは第3巻が斧谷クレジットであるにも関わらず、「富野っぽくない」と言われる理由です。


 しかし、この2点については、以下の理由が考えられます。

 ①に関して、文章を検証する部分でも語りましたが、この小説のセリフはアニメ台本からの起こしなので、普通の富野が書いたセリフと異なるのは当たり前です。しかも、第3巻ということで、あえて前の第1、2巻のスタイルに合わせる形にするのも十二分考えられます。

 また②に関しても、セリフは以上の理由で富野らしくないでいますが、前述のとおり、地の文をよく読めば、富野特有の文章が散りばめています。例として一つだけ挙げます。

「諦めが悪いのは、この艦に乗るみんなが、そうみたいですねえ」
 というモハムドに、
「はい」
 と、アイリーンは誇らしげに応える。だからといって、何をすべきかは思いつきはしないのだが、わかった。という安心感だけはあったのだ。
 何がわかったのか?
 人類の全滅なんて、そんなバカな、とだ……。

               ブレンパワード③記憶への旅立ち 第二十六章飛翔 p211より

 1箇所だけで分かりにくいかもしれませんが、いわゆる富野節に似てません? このような文章は、第3巻にもいっぱい出てきますので、富野らしくない、というようなことは実際に無いです。ちにみにこの箇所はアニメの第26話の8分23秒~27秒くらいの部分にあたるので、試しに比べてみるのも面白いかもしれません。

 以上からして、それらの問題点も実のところ解けない疑問ではないと分かってくれるはずです。



結論

 以上はクレジット、証言、文章ならびに問題点の4方面からの検証で、その結果は今ここで、長年『ブレンパワード』および富野由悠季監督のファンの間でずっと疑問だった「小説版『ブレンパワード』第3巻はホントに富野由悠季が書いたものなのか」に対して、小説『ブレンパワード③記憶への旅立ち』は富野由悠季が書いたものにほぼ間違っていないという結論を下したい。

 今回の記事や結論に関して、もし何かご意見ご感想がありましたら、ぜひぜひこちらに教えてください。ありがとうございます。

6月1日追記
この話題に関して、面出明美さんご本人の返答をいただきました。詳しくは小説版『ブレンパワード』第3巻の富野作者説の検証記事についての追記をご参照ください。










 ちなみに、以上の検証を読めば、上で挙げた対談のなか福井氏が発した言葉は、ただいかにも賢そうに話していて、実際は本当の状況をまったく無視していたものだと分かってくれるはずです。その言葉が確かに間違っていませんけれど、しかしこの小説版『ブレンパワード』にめぐる状況あるいは文脈を解読するにあたっては、まったく価値がないものだと、自分は考えています。

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