原油の生産量を増やす手段として二酸化炭素(CO2)が注目を集めている。油田に送り込むCO2の圧力で原油の回収率を高め、温暖化ガスの削減にもつなげようとの試みだ。本格導入を計画するアラブ首長国連邦(UAE)では外国石油会社の売り込みが過熱し、この技術の有無が油田権益の獲得や更新を左右する条件となりつつある。
UAEのアブダビ首長国で巨大油田の権益更新手続きが進んでいる。アブダビ政府は米エクソンモービルや、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルなどが権益を持つアブダビ陸上油田操業会社(ADCO)について、2014年の権益期限到来後はそのまま継続を認めるのではなく、新たな企業を交えた入札で企業を選び直す方針を決めた。
その最初の関門となる応札候補企業の事前審査で、各社が問われたのが、CO2を使う原油増産技術の経験だ。
油田は年月を経るに従い原油を押し出す力を失い生産量が落ちる。油田の圧力を保ち、生産量の減少をくい止めるために、現状では水や天然ガスを送り込む。これに対し、近年注目を集めているのがCO2を使う方法だ。
アブダビは急速な経済成長に伴い、国内の発電用や産業用の天然ガス需要が増大している。アブダビ政府は原油生産を増やすと同時に、油田圧入に使う天然ガスの使用量を減らすCO2技術に着目した。
事前審査には、今は権益を持っていない日本の国際石油開発帝石も応札候補企業として招かれた。というのも、同社はADCOとは別の海上油田の権益を持ち、ここで石油天然ガス・金属鉱物資源機構と長年、CO2の圧入技術を研究してきた実績があるからだ。
00年から05年にかけてアブダビ沖合の上部ザクム油田を対象に、10年から2年間は下部ザクム油田を対象に共同研究を実施した。コアと呼ぶ油田の地層構造を一部切り取って日本に持ち帰り、CO2を送り込むと、どの程度回収率が向上するかを調べた。
その結果、「水を使う方法よりも高い回収率が見込めることがわかった」(資源機構の高橋悟EOR課長)。成果はアブダビ側に提出済み。その評価をもとに実際にCO2を送り込む試験に進むかどうかを決める。
中東の湾岸産油国でCO2を使った原油増産は限られた例しかない。こうした中で、日本連合の経験はアブダビの油田構造を知る点でメジャー(国際石油資本)に先行し、アブダビ政府も一目置いている。
ロイヤル・ダッチ・シェル、エクソンモービル、関西電力、三菱重工業、国際石油開発帝石
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