焦点:原発再稼働へ規制委が新基準、過酷事故対策は「大穴」と批判も
[東京 10日 ロイター] 全国50基の原発のうち再稼働できるものとそうでないものを選別する新しい規制基準案を原子力規制委員会が10日、了承した。
7月に新基準が施行されると古い原発は再開が難しくなり、原子炉建屋などの直下に活断層があることを否定できなければ廃炉に追い込まれる一方で、基準を満たしたプラントは再稼働への展望が開けてくる。
原子力規制委は「世界最高レベルの安全を確保する」(田中俊一委員長)と意気込むが、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原発の国会事故調査委員会の委員を務めた有識者からは、過酷事故対策への備えは「大穴」との批判が聞かれる。昨年9月の規制委発足から7カ月間という作業期間の短さも影響し、国民にくすぶる「原発への不信と不安」を払しょくする内容との評価を得るかどうかは未知数だ。
<対策不十分と国会事故調委員>
「日本の原発の深層防護は現時点で大変不十分だ。世界最高水準の原子力安全対策が整っているとは言えない」──。国会事故調の委員を務めた石橋克彦・神戸大名誉教授は今月、衆議院の原子力問題調査特別委員会で新規制基準についてこう断言した。深層防護とは、多段階で原発防護を実現する規制体系で、国際原子力機関(IAEA)は、第4段階で過酷事故対策を、第5段階で放射性物質が外部環境に放出された際の対策を求めている。
石橋氏は衆院特別委で、「PWR(加圧水型軽水炉)へのフィルター付きベント設置を5年間も猶予する方針だが、深層防護第4層(段階)に大穴があく」と新基準の方針を批判した。「5年間の猶予」とは、設置を求めるものの再稼働時点では必須要件とはしない施設が対象で、新基準では「特定安全施設」と呼ぶ。
緊急時に原子炉格納容器の圧力を下げるために蒸気を外に放出する際に放射性物質を取り除くフィルターベントは、新規制基準から法的に必須となった過酷事故対策で求められる装置の一つ。新基準では、福島原発と同型のBWR(沸騰水型軽水炉)では再稼働時点で要求する一方で、PWRには構造の違いを理由に猶予が認められた。緊急時に原子炉から離れた場所で制御する「第2制御室」も特定安全施設となった。原発に厳しい立場を取る地震学者として著名な石橋氏は、新基準における第2制御室の扱いについても衆院特別委で批判した。
<規制策定、7カ月の突貫作業> 続く...
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