「それをやったら「ブラック企業」」

甘やかして、世界で勝てるのか

ファーストリテイリング・柳井正会長が若手教育について語る

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2013年4月15日(月)

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 日本人は、若い人に限らず、「ナンバー2でいい」と思いがちですよね。ですが「ナンバー2でいい」と思っている人は、ナンバー2にすらなれません。

 今の若い世代も、同じように「一生サラリーマンでいい」と思っているのかもしれません。ですが、それではダメなんです。

 日本人が海外の人と一緒に仕事するようになって最悪なのは、日本人が使われる側になってしまうことだと思っています。そうなってはいけないんです。

 僕が残念に思うのは、アジアが急成長をしているのに、未だに日本国内では昔のアジアのイメージを抱いている人が多いことです。今やアジアのどこの国に行っても、成長に対してすごい意欲を持っている。第2、第3の中国がどんどん出てきているんです。

 さらに今後はTPPやFTAによってアジア全域が自由貿易圏になっていく。今こそ日本の若者は、リーダーシップとオープンマインドを備えて、グローバルリーダーになるべきでしょう。

トップは基準を下げてはならない

柳井会長の若い世代に求めることは理解できました。ですが一方で、最近は多くの企業が「若者は厳しくするとすぐに辞めるから」と、教育方針を変えています。柳井会長が若手との接し方や教育方針を変えるつもりはありますか。

柳井会長:もちろん現場の社員は対応していますよ。新卒社員をサポートする体制も整えつつあります。

 ですが、僕はそれでも厳しく育てないといけないと思っていますから、変えるつもりはありません。それは、トップが基準を下げたらダメだと思っているからです。

 世界は強豪ばかりです。スペインのZARAやスウェーデンのH&M、米GAP。異業種で言えば、アディダスやナイキ、LVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)とも競争していかなくてはならない。我々の基準が彼らに勝てない限り、海外での競争に勝てるわけがない。

 日本は我々のホームなので、弱い部分でもそれなりに評価されます。ですが、海外では本当に強いところ以外は全く評価されないんですね。強くないと生き残れない。そこに、日本だけで通用するスタンダードを持って行って勝負するのは、あまりに甘すぎるのではないでしょうか。

 今、さまざまな国に進出する企業が増えています。出る国々で成功するかどうかは、その企業のDNAを持ち、真の意味で創業者マインドを持った経営者がいるかどうかなんです。上手くいっているところとそうでないところの差は、経営者の違いです。

 だからこそ若手社員にも、チャレンジ精神を持って挑戦し、数千万円や数億円という年収を稼げるようになってもらいたい。本来であれば、そういうものを目指さないといけない。「僕は今のままでいいです」ではダメなんです。そんな人材はいりません。

しかし、若者全体が安定を重視する傾向にある中で、柳井会長が求めるような若い人材が日本にいるのでしょうか。

柳井会長:日本には1億3000万人も人口があるわけですから、大丈夫でしょう。それも我々は、中途でも新卒でもいいと言っている。中には、我々の考えに賛同する人もいると思いますね。

最後に、若い世代を経営者として厳しく育てることは、日本経済にとってもメリットがあるのでしょうか。

柳井会長:そもそも今の日本の平均年収は決して高くはありません。およそ400万円くらいでしょうか。ですが今後、為替が変われば200万円や300万円になる可能性もある。そういう危機的な状況に、今の若い世代はあるわけです。

 「あなたは本当に今の延長線上でいいんですか」ということですよ。

 僕は、それではダメだと思います。もっと年収がもらえるように自分から努力をしないといけないと思います。日本経済が本当の意味でグローバル化し、世界で勝つためにも、世界で戦える人材が必要だと思っています。

(明日はワタミの桑原豊社長が語ります)

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日野 なおみ(ひの・なおみ)

日経ビジネス記者。

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