現在、5月3日を機に、JCが主催する「国民参加型憲法タウンミーティング」と銘打ったイベントが各地で計画されつつありますので、その経過や背景などについてコメントします。
2008年3月4日、「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘・元首相)の総会が開かれた。この議員同盟は1955年に岸信介らが立ち上げた「自主憲法期成議員同盟」を2007年3月に改組し、中曽根氏が会長について活動を活発化させたもの。この議員同盟は当時、安倍前首相が「自分の任期中に改憲する」などと発言したことに触発され、改憲を推進するための中曽根氏ら改憲派の拠点となってきました。
この議員同盟総会では、従来から国会の憲法調査会での改憲の動きの中心となってきた「憲法調査推進議員連盟」の会長を務める中山太郎氏が、この総会で同盟の会長代理に就任したこととあわせ、野党民主党の鳩山由紀夫幹事長(顧問)、前原誠司前代表(副会長)なども、新たに役員に加わったことが注目されました。
愛知和男・議員同盟幹事長は活動方針の説明の中で「われわれと正反対の勢力、『九条の会』と称する勢力が、全国に細かく組織作りができておりまして、それに対抗していくにはよほどこちらも地方に拠点を作っていかねばなりません。そこが今後の活動の大きな焦点となる」と強調し、「各党支部や青年会議所などに頼んで拠点になってもらうことも一つかと思う」と述べました(08年4月25日発表の九条の会事務局見解「憲法9条を守る運動に対する不当な規制・干渉に抗議する」を参照)。
この議員同盟の総会にJC(日本青年会議所)から早山常任理事と、説田憲法改正運動実践委員会委員長がオブザーバーとして出席しました。
この議員同盟総会では「護憲派の運動(例えば九条の会)が盛んになっているので、ぜひ当議員同盟が中心になって、これに対抗する運動を強力に展開してゆくべきである。地方での活動を強化すべきである。経済界との連携をはかるべきである」(総会議事録)等が確認されました。
そして翌日、JCは2008年度の会頭小田與之彦氏のメッセージ「新憲法制定議員同盟総会開催に対して」(2008年3月5日)
http://www08.jaycee.or.jp/2008/modules/pico02/index.php?content_id=13を発表しました。
小田氏はその中で、
「その場で、中山太郎会長代理から『JCからも国会に憲法審査会の早期立ち上げに向けた請願書をいただいており、また、JCのような政治家ではない若い世代の皆さまとも連携し、憲法改正について考えていかなければならない』との発言をいただきました」と報告し、
「昨年の国民投票法成立と、2010年からの施行により憲法改正が法的に可能になりました。これを受け憲法のあり方に対する幅広く活発な議論を行う目的で、本年連携推進運動のひとつとして、地区・ブロック協議会及び関心があるLOM(註:各地会員会議所)との『国民参加型憲法タウンミーティング』の全国的な開催を予定している我々日本JCにとって、この動向は望ましい進展であるといえます」
「また市民意識の変革を通じて社会の変革を目指し多様な運動に取り組むJCが、これに対し果たすべき役割は、市民が主権者としての主体性を持ち、日本という国 と『日本人として何を大切にするのかという価値観の集合体』である日本国憲法のあり方を考え、議論を行う機会を提供することで、市民一人ひとりが国家観を 確立出来るようにすることだと信じています。日本JCも2005年以来、憲法草案JC版の作成、改定を行い世間に憲法のあり方を問い続けてきました。今年は、昨年の国民投票法の成立を受けて、より具体的な議論を幅広く行うべくタウンミーティングなどの計画を進めています。これにより、憲法は国民生活に深く根ざしたものであり、国や社会のあり方に対し深く関連することを市民一人ひとりが自覚し、国づくりに積極的に参画することの重要性を広く喧伝してまいりたいと思います。そのために、全国711の地域で、市民と地域社会の開発に献身的に取り組んでいる4万人のメンバー一人ひとりの深い理解と参画が必要とされています」
とのべ、JCが「九条の会」に対抗するねらいをもった新憲法制定議員同盟の地方拠点作りに呼応して全国でタウンミーティングなどをすすめていく方向を打ち出しております。
2008年度に青年会議所が行った憲法改正運動の全体像は、日本青年会議所2008年度憲法改正運動実践委員会の以下のサイトで確認できます。
http://www08.jaycee.or.jp/2008/constitution/
JCによる「国民参加型憲法タウンミーティング」はこうした開催目的に沿って行われていると考えられます。JCの中には憲法9条を大切に思っている方も少なからずおられると思います。私たちはJCが改憲運動の下請け機関化することなく、多くの平和を願う市民と共に9条を守り、生かす立場に立つことを願ってやみません。(九条の会事務局 高田健)