(cache) 食品中の放射性物質の新しい基準値について教えてください。 - 専門家が答える 暮らしの放射線Q&A

食品中の放射性物質の新しい基準値について教えてください。

茨城県在住 30代 会社員 男性 の方からいただいたご質問
政府広報オンラインの食品中の放射性物質の新しい基準値は、http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201204/3.html によれば、年齢区分別の限度値で13歳~18歳の男子の限度値(ベクレル、キログラムあたり)で120ですが、「1日100ベクレルの放射性セシウムを毎日365日食べ続けても安全」の基準のもとに、1日100ベクレルの放射性セシウムを13歳から18歳まで5年間毎日食べ続けた場合、5年目10年目に体内に蓄積される放射性セシウムの総量は何ベクレルになると想定されますか?その場合の5年目の体内の限度値は120(ベクレル、キログラムあたり)ですが、体重60キログラムなら総量で7200ベクレル以内ですが、ICRPのモデルでは1日10ベクレルを毎日摂取し続けたら、約600日で1400ベクレル、10倍の量を毎日摂取して単純に10倍なら1万4000ベクレルで限度値を超えますが、1日100ベクレルを安全基準とするなら生涯食べ続けた場合の体内蓄積量を示されなければ理解できないので、考え方、計算の方法を教えてください。
 

お尋ねの要点は、セシウムを含んだ食べ物を毎日食べた場合、5年後、10年後、および生涯にどれだけの蓄積量となるかと言う質問と受け取って、回答します。
 はじめに、およそ口に入れるものでどのような物でも、毎日摂取した場合に時間とともにどんどん増え、排出されることもなく死ぬまで蓄積していくかという問題ですが、それはあり得ないと言うことです。生物には、代謝機能があり、必ず入った物は出て行きます。新しく入ってきたものは、古いものと置き換わります。その交換が速いのか遅いのか、入る量と出る量のバランスはどのようになっているのかと言うことです。
 ある物を食べ続けると、どこかの時点で入る量と出る量がバランスする状態ができ、体内の量は一定値となり、その時の量を平衡量といいます。放射性セシウムを摂取した場合、その物理学的な減衰による半減期と代謝という生物学的な減少による半減期を考慮した半減期を実効半減期と言いますが、その実効半減期と同じ時間だけ経った時では、放射性セシウムの体内量は平衡量の50%に達していて、半減期の7倍の時間では平衡量の99%以上に達しており、更に10倍の時間では平衡量になっています。つまり、実効半減期が60日ならば、10倍の600日では平衡状態になっていると考えます。平衡状態というのは、毎日同じ量が体内に入ってくるならば、同じ量が出て行く状態ですから、一定の値(平衡量とか飽和量といいます)となります。
 毎日一定量を摂取している場合の平衡量は、
  平衡量=(1日の摂取量:単位はBq/日)×(実効半減期:単位は日)÷ 0.693
で計算できます。たとえば、毎日、放射性セシウムを100 Bq摂取した場合、30歳の実効半減期は70日ですから、平衡量は100 Bq/日 ×70 日 ÷0.693 = 10,100 Bq となります。この状態になるのは、摂取し始めてからおよそ7半減期の時間後ですから、490日後、すなわち約1年4ヶ月後です。これ以降は、毎日の摂取量が変わらなければ、この平衡量が持続されることになります。言うまでもないことですが、摂取がなくなれば、70日の半減期で体内から出て、どんどん減っていくことになります。
  なお、ご質問中に、「5年目の体内の限度値は120(ベクレル、キログラムあたり)ですが、体重60キログラムなら総量で7200ベクレル以内」と書いておられますが、飲食物中の放射能に関してこのように決められた「限度値」はありません。食品の規制は、食材に含まれる「放射性セシウムの濃度(一般食品では1kg当り100 Bq)」だけであり、それは食品の摂取量(飲料水も含めて)を勘案して「1年間で1 mSvを超えないように決めた」ということしかありません。

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